先日テレビで見た「ボブディラン」の話がとても印象的でした。
1965年7月25日、それまでフォークソングの新リーダーと称えられてきたボブディランはその日、生ギターではなくエレキギターを持ってステージに上がり、「Like A Rolling Stone」を熱唱した。物凄い音量の演奏の中でボブディランは叫び、歌った。その瞬間こそ、ボブディランがフォークを捨ててロックに転向した瞬間だった。
彼は「もう人々のために歌を書きたくない。スポークスマンにはなりたくない」と言い、もはや社会を変えるためとか、反戦のためとか、世界平和のためと言ったテーマで歌うことは止めると宣言したのだ。
1962年のデビュー以来、「風に吹かれて」など、生ギターで静かに歌う彼の印象とはまるで違う歌手に変身した。これにはきっかけがあった。ビートルズの音楽に出会い、ジョンレノンと対談したことだ。ビートルズがボブディランに音楽の目指す新しい方向を示唆した。
ボブディランは言う。「自分の人生は自分で責任を持ちなさい」「自分一人でやるんだ」「歌で世界は救えない。歌が人を変えるとは思えない」
その後、アメリカの詩人アレン・ギングズバーグのポエトリー・リーディングに傾倒していく。人前で詩を朗読する。詩は読むものではなく声を出して唱えるものだ。ボブディランは詩を書いてそれを歌うことこそ自分の使命だと悟った。それはロックだ。
あれから約40年後、ボブディランはノーベル文学賞を受賞しました。歌は文学なのか? と首をかしげる人も多かったですが、彼の歌の歌詞とその曲のリズムは、ひとつの主張を持っています。
古くはギリシア時代の詩人ホメロスの吟遊詩人の活動からの流れにある。自分一人で歌う。その視点で「Like A Rolling Stone」を聞くと彼の言っていることがわかります。

