雇用問題と日本経済 | 今、私が考えていること

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毎日の出来事を、新聞やネット上の記事からピックアップして、私なりの意見などを書き綴ります。

「定年」という言葉は日本ではごく普通に使われていますが、外国では限定的なようです。例えばアメリカには定年がありません。理由は雇用者は年齢を理由に差別することを禁止しているからです。したがって従業員と個別に相談してリタイアの年齢を決めています。イギリスでも定年はありません。むしろ誰もがある程度お金を貯めたらさっさと会社を辞めて、郊外に牧場でも買って優雅な老後を過ごしたいと思っているからだと聞いたことがあります。様々ですね。

 

私は昨年65歳定年で会社を退職しました。体は健康なのでもう少し働きたいと申し出たのですが、65歳定年制なので、という理由で断られました。これがアメリカなら働かせてもらえたのでしょうね。日本の企業の場合、この定年制をとっている理由は会社側の事情にあるのです。戦後の高度成長期では地方の農村からどんどん若者が都会にやってきて会社員になりたいと就職を希望しました。この傾向は最近まで続いています。マスコミはよく「就職戦線」という言葉を使いますが、まさに国民が生きるための糧を勝ち取る戦いです。こんな傾向が続いている限り企業の雇用は安泰です。

したがって年老いた従業員にはさっさと会社を去ってもらって、安い賃金でこき使える若者を採用するのです。

 

ところがこの事情が変わりつつあります。その背景にあるのは「少子化」です。日本ではもうずいぶん前から少子化対策が必要だと政府も言っていながら、歴代の少子化対策担当大臣は何もしてこなかったので一向に改善していません。なぜ何もしなかったのかと言うと、多額の政治資金援助をしてくれる財界からの圧力があるからです。休日を増やしたり、残業を減らしたりして労働時間を削減されると、サービス残業の効果が失われてしまうからです。しかし数年前からこの労働環境が深刻化して若者の自殺がふえたことから、政府(安倍政権)はついに選挙対策の必要に駆られて「働き方改革」推進を掲げました。

 

このあたりから若者たちの意識が変わり始め、ブラック企業を避けるようになり、転職も盛んになりました。20代から30代の社員が次々と会社を辞めて転職していきます。中にはサラリーマンに見切りをつけて農業に転じたり、また流行りのYouTuberになったりと、職業が多様化しています。

興味深いのは、国家公務員上級職の高級官僚を目指していた東大生などのいわゆるエリート学生らが、官僚への道を選ばなくなってきたこと。こうして徐々に、しかし確実にサラリーマン志向は薄れてきています。そうなると企業は雇用に苦労します。上司に叱られて、いじめられるのに耐えながら働くのは嫌だ。そりゃそうでしょう。その上何年働いても賃金が増えない。最近の企業では残業規制をしていますが、残業代も「みなし残業」という制度にすり替えられています。これは全社員一律の残業代を払うという制度です。残業しなくてももらえるのですが、いっぱい残業してもその分はもらえないのです。

 

こうなると従業員の必要人数が確保できなくなり、「人手不足」が深刻化します。すでに飲食店、運送業、バス・タクシー運転手、建設業界、さらには金融業界などでも人手不足です。ご存じですか?

最近銀行の支店は11:30から12:30の間は店を一時的に閉めているところがあります。それは支店の行員が減っていて昼食時に交代勤務ができないからです。この先、ネットバンキングが普及したり、PayPayなどのeマネーの利用が進めば、銀行の支店は必要無くなるかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

ともかく企業の経営者は従業員を大事に扱わなくてはなりません。賃金の水準はもちろんですが、魅力ある仕事と職場環境を常に心がける姿勢が無いと誰も就職して来ません。そして定年制度というものは廃止して、年齢が高くても意欲のある従業員には働いてもらうという姿勢を示すことで、従業員のロイヤルティは上がり、労働の質が向上すると私は思います。

 

海外の工場で製品を作り、そのまま海外の市場で販売して利益を得る企業は、国内の従業員をないがしろにしがちです。現在の「強いアメリカ経済」は内需を高める努力をしてきたことの賜物です。いつまでも欧米や中国に依存する企業経営ではなく、日本国内にしっかりとした経営基盤を作り上げる努力をしてほしい。そのためには老若男女を総動員するべきです。