先日亡くなった谷村新司さんのことは、その後もいろいろと思い出とともに振り返ることが多くて、つくづく惜しい人を亡くしたと思っています。深夜ラジオ「セイヤング」の「天才秀才バカ」は、高校生の頃に友達とよく話題にしては、「イッヒヒヒ」と密やかに笑い転げていました。「チンペイとバンバンは本当は歌手なのに、なんでこんなおもろい話ができるのやろ」そういうのが当時の若者には一種のあこがれでもありました。
それから何年かして大学生の時、クルマのラジオから突如聞こえてきた「冬の稲妻」。あの出だしのエレキギターの音色がまるで天から突き刺さった稲妻のような鋭い衝撃を受けます。ラジオで聴いていたチンペイさんとは全く違って、アリスの曲は骨太で、男臭くて、ハートを揺さぶられますよね。
冬の稲妻を聴いた私は、今度は音楽家としての谷村新司を尊敬するようになり、アリスの武道館ライブも買いました。アリスの曲はロック調のものも、バラード調のものも、歌詞をよく読むと悲しい心をテーマにした演歌です。演歌なので心の底から湧き上がる魂に似た燃えるものがあります。これこそが「歌」なのです。
21世紀になり、時代は令和の世代です。あのアリスのような歌を唄う歌手は居ません。長く続いたジャニーズの時代が、全てをジャニーズ調に塗り替えていたからなのでしょう。しかしそれも、図らずも終わりを告げようとしています。
歌はそれを聴きたいと求める人々の心情を掴まなくてはヒットにならない。この次に、早くそういう歌手が登場してくることを待望しています。
