先週末、日経平均株価は30,808.35円をつけ、33年ぶりの最高値更新となりました。あのバブル期の最高値を更新するというのは驚きです。しかしその割にニュースは慎重な扱いです。折からのG7広島サミットの話題を最優先せよとする国の圧力があるのかどうかは知りませんが、やはり日本人の株式アレルギーは依然として強いのかもしれません。この程度のニュースでは大衆は慎重で動じない。
私は株式投資は素人ですから、テクニカルなことはよくわかりませんが、金融経済の観点からこの状況を見ると、やはり不可思議な点がいくつかあります。まず一番気になるのは、なぜこんなに急激に株価が上昇したのか理由が見つからないことです。国内の景気は確かに新型コロナウィルスの制約が解けて再び活発化してきていますが、今のところは外人観光客向けの観光収入ぐらいなもの。メーカーの生産活動が活発になっているのかというと、そんな兆候はまだ見られません。
もう一つ、過去のバブル経済では日本中が景気に沸いて、個人消費はうなぎのぼりでした。今回は個人消費がまだ伸びていません。激しい物価高で消費者が節約しているというのも一因でしょう。私は「経済」というのはあくまで「暮らしの経済」のことであり、国民の生活が向上する状態を好景気と考えます。その物差しではかると、現状はまだ好景気ではありません。
この状況を作り出しているのが外国人投資家であること。実はここが要注意です。日本の株式市場への投資はかなり以前から外国人投資家が主役です。その傾向は変わっていません。彼らは自国で稼いだ有り余る資金の一部を使って、日本の株式市場で小遣い稼ぎをしています。安くて手ごろなのと、ちょっと大きな投資を仕掛けただけでその会社の株が大きく動くからです。ですから前日にNYダウやNASDAQが上昇して終わると、翌日の日経平均は上がります。もちろん下がれば日経平均も下がります。つまり連動しているのです。アメリカの小銭入れみたいな金融市場です。そうなると、日経平均、つまり日本の株価は外国人投資家の動きを見てないといけない。これはもう「投資」ではなく「投機」または「マネーゲーム」と言うしかない。事実、今回は著名な投資家であるバフェット氏が日本の商社株などの日本株に投資すると公言したことも大きく影響しています。
日本の大企業は実際には空前の好決算で、かなりの利益を上げています。その莫大な利益の一部を使えば従業員の賃金を2倍にすることだってできます。しかし今の企業経営ではそういうことはしません。株主への利益還元が最優先です。だからこの状況があと何年続いても国民の所得はそれほど上がらないと思います。
しかし現実に所得水準を諸外国と比較すると、2倍以上の格差がついています。だから外国人観光客は日本に来たがります。物価が安いと感じるからです。昨日のニュースを見ていたら、外人観光客は日本に来て買い物に一人平均21万円使うそうです。ちなみに私は今週大阪に行く予定があり

、先日ホテルの予約をして驚いたのが、ホテルの宿泊料金が以前の2倍以上に跳ね上がっていて、しかもどこも満室で予約が困難だったこと。例えば大阪駅周辺のホテルだと、以前ならシングル1泊は1万円前後でもありましたが、現在は2万円以上が相場です。ツインだと軽く3万円から4万円はしています。でも外国人観光客は涼しい顔をして連泊しています。かれらの旅費費用は約150万円だと言っていました。
これはもう私たちの金銭感覚を相当に超越した水準です。
つまり、われわれ日本人は本来なら今の賃金の2倍の金額の賃金をもらえて当然なのに、その半額しかもらえていないのが実状です。だから企業は儲かるわけです。それで株価は市場最高値更新。
こんな経済運営をしている日本はいまに国民が海外に逃げていくのではないでしょうか。そのほうがいい生活が出来るかもしれない。