安東桂吾氏と太田善也氏の新しい演劇ユニット「クラゲズ」。
その第一回公演に「劇団一の会」の坂口候一主宰が客演した。
『もう少しだけましな理由。』の舞台は、四畳半一間、その真ん中にある丸いちゃぶ台、そしてこれまた小さな庭。
極端に社会と隔絶した個人的な空間である。
そこで繰りひろげられる、現実と虚構、認知と偽記憶が交錯する複数の個人の物語。
性的欲動と攻撃欲動。
出生後5年間に起きた経験。
それは、フロイトの精神分析理論をベースにしているかのような心理的混沌、スペクトラムの世界だ。
真実を探求する先にあるのはカタルシスではなかった。
ある種の活力を獲得したのは、生きることから予定調和的に隔離された死者だけかもしれない。
そんな物語。
出演者の「フツーの大人感」が不気味だ。坂口さんはど真ん中で怪演。作・演出の太田善也氏が演じる謎の占い師は、コミカル且つ重みがあり秀逸だった。
2017年11月22日、練馬区江古田のワンズスタジオにて。
(2017年11月26日)