24歳の頃、職場の一つ歳上の女性に恋をしていました。彼女は30代の男性とお付合いしていましたから、片想いでした。私は世間知らずで、独りよがりで、ちょっと気恥ずかしいくらいにロマンチストで。『ノルウェイの森』のハツミさんが好きでした。
ある日やけに感情が高ぶってしまって、遅番だった彼女の帰りを、マンションのある千葉県内の某駅で待ち伏せしたことがありました。改札に立つ私を見つけた彼女は一瞬目を丸くしましたが、首を静かに横に振りながら、晩ご飯を食べましょう、と言いました。
同僚としての私のことを普段から聞いていたという彼女の母親は突然の来客をとても歓迎してくれ、美味しい手料理が次々に食卓に並びました。いくらか酒も入り、3人でおしゃべりに興じているうちに、終電の時間が近くなっていました。
せっかくだから泊まっていきなさいよ、と母親が言いました。仲の良かった隣の家族が長期の転勤で部屋を使っておらず、時々空気を入れ替えて欲しいと鍵を預かっているから。
翌朝、二人で駅前のコーヒーショップに入ってモーニングを食べました。またいらっしゃいよ、と彼女は言いまし た。