つれづれログ -26ページ目

つれづれログ

色々な事を徒然なるままに書いていこうと思います

ランナー (幻冬舎文庫)/あさの あつこ
¥520
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長距離走者として将来を嘱望された高校一年生の碧李は、
家庭の事情から陸上部を退部しようとする。
だがそれは、一度レースで負けただけで、
走ることが恐怖となってしまった自分への言い訳にすぎなかった。
逃げたままでは前に進めない。
碧李は再びスタートラインを目指そうとする―。
少年の焦燥と躍動する姿を描いた、青春小説の新たなる傑作。

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あらすじにある家庭の事情とは、母親の妹(正確にはいとこ)への虐待。
母親は妹を愛しているものの、別れた夫の面影を感じてしまい
発作的に手を出してしまっていた。

というやや重めのテーマと、長距離走という競技(というよりも走ること自体)
との向き合いが物語の核となっている。

顧問の先生とマネージャー、親友の久遠、小児科のクマ先生など
脇を固める人物はとても好感が持てた。

顧問に想いを寄せる美少女マネージャー…、青春だね。
でも教師と生徒という立場上、想いに答える事が出来ない事くらいは
分かってくれ(それくらいは承知の上かもだけど)。
先生を責めてくれるな!って感じで読んでいたw

全治1年の腰のケガをしてしまい、もう競技が無理という久遠。
描かれてなかったけど、彼は部を辞める事はしなかったと思う。
というよりは辞めてほしくない。
やっていたハードル以外の種目をやるか、マネージャー職か…。
なにより途中で辞めてしまうというのが、後で一番応える事だから。

母と妹の関係については、明るい兆候が出てきた。
主人公も周りの人々のサポートで、再び走る事に正面から向き合う事が
出来た。
まさに俺たちの戦いはこれからだ!という所で物語は終わっている。

キレイに終わっている気もするけど、どこか物足りない気も…。
主人公がスタートラインに立つまでの物語としては、これ以上の話は
蛇足になるかもしれないけど、陸上経験者としては復活後の試合も
気になるんだよなぁ…。
MOMENT (集英社文庫)/本多 孝好
¥560
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死ぬ前にひとつ願いが叶うとしたら…。
病院でバイトをする大学生の「僕」。
ある末期患者の願いを叶えた事から、彼の元には患者たちの最後の願いが
寄せられるようになる。
恋心、家族への愛、死に対する恐怖、そして癒えることのない深い悲しみ。
願いに込められた命の真実に彼の心は揺れ動く。
ひとは人生の終わりに誰を想い、何を願うのか。
そこにある小さいけれど確かな希望―。
静かに胸を打つ物語。

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あらすじを読むとイイ話系の物語かなと思えるんだけど、実際読んでみると
意外にドロドロしていて、ある意味リアルなお話。

物語は全4章で構成されていて、それぞれの患者の最後の願いを主人公が
叶えるべく奮起する。

最後の章の患者である有馬と主人公のやり取りはなかなか良かった。

有馬の最後の願いは家族に遺産を残すため早く死ぬ事。
色々あってそれを阻止する場面。

有馬は死を望む人には、その望み通りに死なせてやるべきと言う。
そしてそれを止める権利は主人公には無いと。

主人公はそれに対して、生きていれば周りの人間の自分に対する好意、
悪意、善意、害意が生まれ、そんな感情はその人が生きていたことにも
責任の一端がある。

自分勝手な事情で死にたいなら関わったすべての人の同意を
取り付けるべき…と無茶苦茶な理屈(主人公も自覚してるしw)。

確かに無茶苦茶だけど、有馬に死んで欲しくないという主人公の想いが
伝わってくるやり取りだった。

そして死ぬ瞬間、人は何を考えるのか?という問いに死ぬ時になれば
嫌でもわかると言う。

まぁ、そうなんだろうけどw
僕がその時を迎える時、何を考えるかはやはり分からない事ではあるけど、
少しでも後悔する思いが少なくなるように生きていきたい。
メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット (角川文庫)/伊藤 計劃
¥780
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暗号名ソリッド・スネーク。
悪魔の核兵器「メタルギア」を幾度となく破壊し、世界を破滅から救ってきた
伝説の男の肉体は急速な老化に蝕まれていた。
戦争もまた、ナノマシンとネットワークで管理・制御され、利潤追求の
経済行為に変化した。
中東、南米、東欧―見知らぬ戦場に老いたスネークは赴く。
「全世界的な戦争状況」の実現という悪夢に囚われた宿命の
兄弟リキッド・スネークを葬るため、そして自らの呪われた血を断つために。

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同名のPS3用ソフト「MGS4」のノベライズ本。

僕にとってMGSシリーズは、人のプレイを観たことがある程度。
そんなシリーズ未経験の人にも、主人公ソリッドスネークの過去の戦いや、
世界の戦争の歴史が分かるような作りになっている。

物語はスネークの親友のオタコンが語る形で進んでいく。

スネークはクローン人間として生まれ、その遺伝子は寿命が短く
設定されているため、本作では急激な老化状態。
余命があとわずかだという…。
そんなハンディを背負いながら、自分の宿命と闘っていく。

老化による苦しみが頻繁に描かれていて、さらに戦いの中で傷ついて
いくスネークの描写がかなり痛々しい。

そんな風になりながらも、戦うスネーク…。
カッコいいんだけど、悲壮感が強い。
オタコン目線が中心だから余計なのかなぁ。

最終局面でのスネークとオタコンの友情。
そしてリキッドとの決着。
更には闘いの後のそれぞれの人生。

シリーズの集大成だけあってキレイにまとまっている。
ハッピーエンドとは言えないが、読んだ後の気分は良かった。
多少の肩透かし感はあったけれども、それがなければスネークが
不憫すぎたから全然OK。


作者の伊藤計劃さんは去年、肺ガンで亡くなっているそうで…。
老いて病んでいくスネークの苦悩は伊藤さんの闘病生活のそれと
重なっている所もあったのかもなぁ。