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つれづれログ

色々な事を徒然なるままに書いていこうと思います

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)/湊 かなえ
¥650
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「愛美は死にました。しかし事故ではありません。
このクラスの生徒に殺されたのです」
我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの
告白から、この物語は始まる。
語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、
次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。
衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、
第6回本屋大賞受賞のベストセラーが遂に文庫化!
“特別収録”中島哲也監督インタビュー『「告白」 映画化によせて』。

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映画化(6月5日公開)で話題になっていたので、気になって読んでみた。

読み始めたのは平日の深夜。
先の展開が気になって読み続け、気が付くと朝方(笑)。
その日の仕事、辛かったなぁ…(自業自得もいいところ)。


上記のあらすじ通り、一つの事件とその後について、複数の人視点で
追いかけていく形の構成。

各章で初めて明かされる事実(独白なだけに真実かどうかは不明…)や、
別の視点で見た時にハッとさせられる要素も多く面白い。

一つの事象について、それに関わる人の数だけ事実が存在すると
いうことなんだろう。


読み進めるにつれて、事件の犯人である少年Aについては
救いようのない人物だという印象が強くなっていった。

シンプルに言えば愛情不足のマザコン少年の暴走だったわけだけれども、
不幸だったのは彼が頭脳優秀な人間だった事。

だから最後の衝撃的なラストを読んだ後、先生の立場で復讐を果たす
為にはアレしかなかったのかもなぁと妙な納得感。


「人間の倫理観は単なる学習効果でしかない」という事について。
寂しい考え方な気もするけど、それはそれで人間らしいなと。

その理論で言えばどんなにひどい人間でも更生できるという事に
なりそうだけど、それが難しいと感じるのは変わろうともしない人が
いるからだろう。
少年Aとか。


これがどんな映画になったのか、かなり興味アリ。

小説の映画化やドラマ化って、がっかりする事も多いだけに、
映像化の担い手がどんな気持ちで作品作りをしているかを知れた
特別収録のインタビューも良かった。

やっぱり媒体が違う事で表現は変えざるを得ないんだろうなぁ。
でもなるべく忠実にして欲しいなぁ。
気に入った作品なので、そんな気持ちが強いです。
六百六十円の事情 (メディアワークス文庫)/入間 人間
¥641
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男と女。彼氏と彼女。親と子供。先生と生徒。爺ちゃんと婆ちゃん。
世の中には、いろんな人たちがいる。
そこには、「ダメ人間」と「しっかり人間」なんての も。
それぞれ“事情”を持つ彼らが描く恋愛&人生模様は、ありふれているけど、
でも当人たちにとっては大切な出来事ばかりだ。
そんな彼らがある 日、ひとつの“糸”で結ばれる。
とある掲示板に書き込まれた「カツ丼作れますか?」という一言をきっかけに。
日常系青春群像ストーリー。

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群集な物語は結構好きなジャンル。
この作品は660円の「カツ丼」で繋がる老若男女のお話。

話は6章で構成されていて、序盤の4章は男女1組ずつが主な登場人物。
続く5章、6章でそれぞれの人達が強く結びついていく。

自分が何がしたいのか分からないニートのギアッチョ。
将来がないのではないのかという不安を持つ河崎。
家庭に不満を持ち、家出を企てる小学生、ドミノ。
彼女と共にニート生活を送る各務原雅明。
そして彼らを結びつける上記あらすじの書き込み主、「私」。

彼らはそれぞれちょっとした悩みを抱えながら生活していて、
その中でもがきながらも、人との関わりあいの中でちょっとずつ成長、
前進していく。

そんな何気ないストーリー。
他の章の人物がそれとなく登場するのがなかなか面白くて、
ある意味自分がその町に住んでいて、彼らが実在するのではないかと
いう感覚。

さらりと読める1冊です。
時生 (講談社文庫)/東野 圭吾
¥790
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不治の病を患う息子に最期のときが訪れつつあるとき、宮本拓実は
妻に二十年以上前に出会った少年との想い出を語りはじめる。
どうしようもない若者だった拓実は、「トキオ」と名乗る少年と共に、
謎を残して消えた恋人・千鶴の行方を追った―。
過去、現在、未来が交錯するベストセラー作家の集大成作品。

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う~ん、ここ最近読んだ本の中では一番の作品かも。
さすが東野圭吾さん!

時生は上記あらすじにあるように、主人公が過去に出会った
少年の名前。
であると共に、息子の名前でもある。

実は息子の時生は死の間際、魂を過去へと遡らせて若かりし頃の
主人公の元へと辿り着いていたのだった。
というタイムスリップ物。

上記の展開は比較的物語の序盤の出来事であり、読者に
トキオ=時生であることも、容易に分かる様に描写されている。
もっともトキオは主人公には親類という説明をしているけれども。

にもかかわらず、そういったジャンルの作品である事を感じさせない
背表紙と帯だったのが憎らしいw(勘の良い方は分かるんだろうけど)

タイムスリップ物はかなり好きなんだけど、この作品も
タイムスリップ物のお約束をきちんとおさえている。
ギャンブルで大儲けとか人の生死、大事故の予言など。

更に東野圭吾作品らしいミステリーの要素や、家族愛の要素も
混ざり、とても満足のいくシナリオ。

主人公の呆れる程のバカさ(良い意味でも悪い意味でも)加減や、
トキオの優等生かつ好青年ぶり。

(過去の)主人公の個性が強すぎて序盤はあまり好きに
なれなかったが、トキオと関わっていくにつれて変化していくのは
とてもイイ感じ。

個性あふれる裏の世界や大阪の住民達も良かった。

特に裏の世界にいきるイシハラ。
発言だけをとっていくとなかなかナイスガイにも思えるんだけど、
裏の世界はそんなに甘くない展開。
恐るべし、裏社会…。

主人公と実の母親との和解のシーン、グッと来た。
そして主人公と妻との出会いの仕掛け、見事な筋書きだった。

しめ方も綺麗で後読感もスッキリ爽快!
おススメの一冊。