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つれづれログ

色々な事を徒然なるままに書いていこうと思います

文庫版 豆腐小僧双六道中ふりだし (角川文庫)/京極 夏彦
¥940
Amazon.co.jp

江戸郊外のとある廃屋に、いつのまにやら棲みついていた1匹の妖怪、
豆腐小僧。
豆腐を載せた盆を持ち、ただ立ちつくすだけの妖怪である自分は、
豆腐を落と したとき、ただの小僧になるのか、
はたまた消えてしまうのか―。
思い悩んだ小僧は、自らの存在理由を求めて旅に出る!
軽快な講談調で、小僧が出会う鳴屋や死に神、鬼火との会話の中から
現れてくる妖怪論。
妖怪とは、いったい何なのか?
妖怪入門としても必読の痛快作。

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知人から好きだと言った京極夏彦。
アニメ版「巷説百物語」は昔観たことがあったけど、小説を読むのは
初めて。
半信半疑だったけど、ものは試し。
妖怪入門としても必読!と書かれていた事もあり、本作をセレクト。
今年のGWに映画化もされるとの事で。
とにかく読んでみた。

まずページ数が凄い!
本作は700P超え!
厚い!
最近仕事が忙しくてちょっとずつしか読めなかったから、読み終えるのに
かなりの日数を費やした…。
他の作品もかなりのボリュームを誇るそうで…。
作者のパワー、凄いな。

物語の主人公は豆腐小僧という妖怪。
特殊な能力なんて持たなし、性格的にも人畜無害な豆腐を持った
小僧という存在。

物語は彼が初めての旅を経て、自分の存在理由を考え、さらには
妖怪とは一体なんなのかという事をテーマとしている。

妖怪というとオカルトチックで非科学的なイメージがあったけれども、
この作品を読む事で妖怪はいるけどいない、いないけどいるものだと
いう考えに行き着くし、そういうメッセージが発信されている。

ある意味で文化的な存在、それが妖怪。
物理的に存在するかどうかは関係なく、人間が感知する事で
彼らはそこにいる。

登場する妖怪達のキャラクターが良い。
豆腐小僧の良い意味でのバカっぷりや、物知りな達磨先生、
色っぽい化け猫、タヌキやキツネ、他色々な個性的な
妖怪達が登場する。

妖怪というとやっぱり「ゲゲゲの鬼太郎」のイメージだけど、
色々な物の象徴である妖怪という存在は改めて面白い物だと
思った。

中には恐ろしい設定の妖怪もいるけれども、それは自然の持つ
物凄い力であったり、人の心の闇の深さであったりする訳で。

そう考えると妖怪という存在って、深い物だと思える。
子供向けであるようでいて、彼らには色々な意味が
込められているから。

江戸末期が舞台ではあるけれども、その時代に囚われていない
語り方も面白い。
現代の物事と絡めた話である事で、親近感がわくし読みやすい。


他の京極夏彦作品も読んでみようかな。
僕と彼女とギャルゲーな戦い (メディアワークス文庫)/西村 悠
¥599
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小説家を目指すも夢破れ、就活では60社を受け連敗中。
そんな失意の底に沈む嶋谷一(通称イチ)の前に現れたのは、
高校時代に憧れていた美しき先輩。
彼女は昔と変わらぬ笑みを浮かべ、戸惑うイチにこう告げるのであった。
「私に、付き合ってほしいの」。
ギャルゲーのような展開で騒がしくなったイチの夏休み。
しかしイチが引きずり込まれたのは、まさにギャルゲー作りの
現場そのものだった!?
ちょっとショッパイ青春グラフティ。
書き下ろし。

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現役のゲームシナリオライターがゲーム制作の現場を描いた物語。
と、あとがきにあった。

という事で、リアルな現場の姿が描かれてる本作。
僕の仕事も同業種では無いものの、ソフトウェア開発という面から見ると
親戚みたいな業界なので、興味深い内容だった。


舞台となっているのは社員わずか6名という小さなゲーム制作会社。
その会社の社運をかけたギャルゲー制作に、高校時代の憧れの先輩に
スカウトされた大学生の主人公が、シナリオライターとして
取り組むというお話。

ギャルゲーか…。
遠い昔の話だけど、「ときメモ」借りてプレイしたっけ。
一回目でバットエンドで、それっきりだった気がするけどw
何気に難易度高かったし。
後はギャルゲーじゃないけど、「パワプロ」のサクセスモードとかも
それっぽいジャンル。


ゲーム制作の現場は相当ハードだと聞いた事があるけれども、
本作を読むと、実際そうなんだろうなという印象。
厳しい納期、担当者の失踪、徹夜続きでの作業などなど。

そんなハードな業界であるにも関わらず、そこで働き続ける事が
できるのは、彼らが情熱を持ち続けているから。
給与とか待遇とかって言うまでもなく重要な要素なんだけど、
決してそれだけでは無いんだよなぁ。
普段、仕事に対して冷めたことばかり言っていても、情熱を秘めている
人って少なくないと思う。

対象的に仕事=収入源という割り切った考え方で、家族と過ごす時間を
大切にしたり、趣味に没頭するのもそれはそれで全然アリだと思う。
それだって豊かな人生だ。
それに過労死に象徴されるように、日本人は働き過ぎの傾向あるし。
当然ながら価値観は人それぞれ。

僕はと言うと、一日というか人生の大半を仕事をして過ごす訳だから、
それを楽しみたいし、やり甲斐を感じていたいと思っている。
だから多少ハードで、給料が安くても好きな事を仕事に出来ている
今って、何気に幸せなんじゃ無いだろうか。
仕事を通じて、成長出来ている面もあるし。

普段は息をするように仕事しているから、全く考えないけど。
まぁ、もうちょっと楽で、高給になる事は大歓迎w


社会人と学生の意識の違いというのも大きなテーマの一つ。
毎年4月になると、「学生気分」という単語が聞こえてくるけれども、
会社に属すると同時に、お金と時間について意識させられる。

限り有るお金と時間の中で、いかにお客さんが満足するレベルの
仕事が出来るか?という事。

作中でも学生である主人公は、この社会の壁にぶち当たる。
ゲーム制作って創造的な仕事だし、品質と時間的、金銭的コストの
バランスは物凄く難しい問題だと思う。
そこから端を発した問題だったけれども、この物語では、社会で
働くからにはコストを無視した仕事は出来ないし、妥協せざるを
えない現実を描いている。

ここに現場における作者のジレンマが表現されているように感じた。
僕達の仕事でも、納期を守るためだったり、コストが抑えるため
理想を捨てて、代替策を検討する事はよく有るのでかなり
共感できた。
もっと時間や予算があれば良い物が作れるのに…。
そんな想いを抱いて仕事をしている人、少なくないだろう。

だからこそ、次はもっと理想的な仕事が出来るように努力する。
それが会社や業界全体の発展に繋がっていくんだろう。


ゲーム業界に興味のある人、これから社会に羽ばたく人、
仕事への情熱を忘れかけている人にオススメの一冊。
白銀ジャック (実業之日本社文庫)/東野 圭吾
¥680
Amazon.co.jp
「我々は、いつ、どこからでも爆破できる」。
年の瀬のスキー場に脅迫状が届いた。
警察に通報できない状況を嘲笑うかのように繰り返される、
山中でのトリッキーな身代金奪取。
雪上を乗っ取った犯人の動機は金目当てか、それとも復讐か。
すべての鍵は、一年前に血に染まった禁断のゲレンデにあり。
今、犯人との命を賭けたレースが始まる。
圧倒的な疾走感で読者を翻弄する、痛快サスペンス。

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この間、テレビで初めて観た「容疑者Xの献身」。
評判通り面白かったなぁ。

堤真一の演技、素晴らしかった。
福山は若干影が薄かった気がするけど、彼はワイルドな
龍馬より、知的なガリレオの方が断然似合ってるな。
男から見てもカッコいいのはさすがだ。


さて、本作はそんな探偵ガリレオシリーズの原作者、
東野圭吾さんの作品。

ゲレンデに爆弾がセットされている事で、その場でウインタースポーツを
楽しむ全ての人が人質という状況。

犯人は複数回に分けて身代金を要求し、その度に爆弾の設置場所が
少しずつ明かされていく。

事件自体に斬新感。
季節にもマッチしているネタだし。

ウインタースポーツには縁が無いけれども、ルール違反の
利用者や犯人を追跡する際のスキーやスノボの描写はスピード感や
スリルが満点でちょっと体験してみたくなるレベル。

もっとも登場する人達のほとんどがかなりの上級者なので、
僕みたいな不器用な人間がやったらグダグダが予想される…。

こいつ犯人なんじゃね?というミスリードもあり、まんまとダマされた…。
読んだ後で思い返せば、結構あからさまなミスリードだったけど。

犯人はかなり意外な人達。
でも彼らが犯人である事についてはかなりの説得力が。
意外なんだけど、説得力があるというのは作者の力量だよなぁ。
物語の要所に伏線があるから、あからさまな後付け感も無いし。

事件の背景には、いくつかの大人の事情があった訳だけれども、
スッキリと決着が付くので良い読了感。

汚い大人達の存在は腹ただしいものがあるけど、捨てる神あれば
拾う神あり。
利用者に対して、誠実かつ思いやりのある仕事をしていた主人公達は
無事にスキー場の危機を乗り越える事ができた。

しかも主人公は遅咲きながらも幸せも手に入れたし。
仕事に真摯に打ち込む姿勢がカッコ良かったから、これも
意外でありながらも説得力のある展開だった。

僕もお客さんを思いやった仕事をするように日々心がけたい。