- カラフル (文春文庫)/森 絵都
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生前の罪により、輪廻のサイクルから外されたぼくの魂。
だが天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。
自殺を図った少年、真の体にホームステイ し、
自分の罪を思い出さなければならないのだ。
真として過ごすうち、ぼくは人の欠点や美点が見えてくるように
なるのだが…。
不朽の名作ついに登場。
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本好きの知人に紹介されて読んでみた。
面白かった!
アニメ映画も公開された本作品。
映画の監督である原恵一氏はクレヨンしんちゃんの映画「オトナ帝国」、
「戦国大合戦」というどちらも泣かされてしまった作品の監督さんでも
あるので映画版も是非観てみたい。
アニメの声優に有名俳優やタレントを起用するのはあまり好きでは
無いけど…。
上のあらすじを補足すると、「ぼく」がホームステイ(=憑依?)する事に
なった真は冴えない中学3年生。
美術のセンスを持っている反面、対人スキルに乏しく、クラスからは
浮いてるし友達もいない、いわゆる非リア充。
そんな明るいとは言えない学生生活の中、好きな娘が中年男性と
援交している現場と母親の不倫現場を目撃してしまったのが
自殺のきっかけ。
そこに試練として宿る事となった主人公の魂。
そうして「ぼく」の真としての生活が始まる…といったお話。
以下、いつもの事だけどネタバレ注意報!!
結果的に「ぼく」=「真」だった。
その事は、可能性として考えていた人も少なくないはず。
それが物語の核心として扱われているけれども、その事実自体は
大して重要な要素とも思えない所も本作品の魅力でも
あるように思う。
「ぼく」は真である記憶を失った事で、以前よりクラスに馴染めたし
友達も出来た。
両親や兄との絆も深める事が出来た。
なぜか?
端的には人ごとだったから。
人ごとだと思うことで肩の力が抜けたのもあるし、客観的に状況を
観ることが出来た。
「自分」という概念に必要以上に固執しない事も、人間関係の好転に
繋がった。
反面人ごとである事から、進学について安易な選択をしようとしたし、
高価なスニーカーを貯金を崩して買ったりした訳だけれども。
自分を客観視する。
自分を冷静に見つめ直す。
この事の重要性は良く言われている事だ。
まぁ、そう簡単に出来ることでは無いけれども…。
でもそれが出来たとき、物事が上手くいくという事は十分に
考えられる事だ。
真みたいに。
もちろん自分という物をしっかり持つ事も大切だ。
自分らしさや自分の世界。
真が自分の世界を持っていて、美しい絵が描けたように、
素敵な事でもある。
要はバランスなんだろう。
それが難しいんだけど(汗)
自分らしさに固執する事で孤立するのは不幸だし、
自分を殺して生きるのもまた不幸だ。
時には自分を客観視、時には自分らしさを追求して生きていきたい。