第77回 代表曲と売れた曲は一致するのか
郷ひろみ
秀樹の次は当然郷ひろみです。未だ現役バリバリで活躍していて、その若さには驚かされるばかり。多少の浮き沈みはありながらも、1970年代から50年間も最前線で歌手として活躍し続けるエネルギーは、いったいどこからくるのでしょうか。そんなひろみ氏の売上の推移と印象として残る曲の相関をみていきます。
【デビュー曲からいきなりヒット】 1972年
「男の子女の子」「小さな体験」「天使の詩」
甘いルックスと声でいきなり世の女性たちを虜にし、デビュー曲「男の子女の子」がいきなりのトップ10入りと、西城秀樹や野口五郎でさえも苦労したデビュー曲でいきなりのヒット。さらに次の「小さな体験」は順位も売上枚数
伸ばし、実に順調なスタートとなりました。
【アイドル全快 ジャニーズ所属期】 1973~1974年
「愛への出発(スタート)」「裸のビーナス」「魅力のマーチ」「モナリザの秘密」
「花とみつばち」「君は特別」「よろしく哀愁」「わるい誘惑」
さらに人気は加速度を上げて上昇し、4曲続けてオリコン2位を達成し、そして1974年の「よろしく哀愁」では初の1位を獲得、売上もキャリア最高の50万枚越えを果たしたのでした。とにかく出せば売れるの状況で、トップアイドルとしての地位を早くも確立させました。楽曲的には”甘さ”を前面に打ち出したものが多い印象です。
【バーニング移籍も人気は安定】 1975~1976年
「花のように鳥のように」「誘われてフラメンコ」「逢えるかもしれない」
「バイ・バイ・ベイビー」「恋の弱味」「20才の微熱」「あなたがいたから僕がいた」他
そんな人気絶頂期の1975年に、ジャニーズ事務所からバーニングへ移籍しましたが、それで人気が衰えることはなく、コンスタントに20万枚前後の売上を残し、爆発的ヒットには恵まれなかったものの、キャリアの中でも安定感のある時期だったといえるでしょう。
【作品のふり幅を広げる中コミカル路線に注目】 1977~1978年
「真夜中のヒーロー」「悲しきメモリー」「洪水の前」「帰郷/お化けのロック」
「禁猟区」「バイブレーション」「林檎殺人事件」「ハリウッド・スキャンダル」他
やや停滞感も感じていたのかもしれませんが、この頃から作品にも幅が広がっていきます。特にこの時期に売れたのは、樹木希林とデュエットという形で出した「お化けのロック」(「帰郷」のカップリングですが、こちらの方が人気を呼びました)と「林檎殺人事件」が、ドラマで使われたこともあり、この期間のシングルとしては突出した成績を残しました。これらはコミカルな歌詞と振り付けは郷ひろみの新しい一面を見出すことになりましたが、一方で「禁猟区」「バイブレーション」などではギラギラ感を、はたまた「ハリウッド・スキャンダル」は今までにない大人の恋愛をと、とにかく作品のふり幅を広げていこうとする戦略が感じられる時期でした。
【セクシーギラギラ路線】 1979~1980年
「ナイヨ・ナイヨ・ナイト」「いつも心に太陽を」「マイレディー」「セクシー・ユー」
「タブー」「How manyいい顔」「若さのカタルシス」
勝手に〈セクシーギラギラ路線〉と名付けましたが、初期の甘さを打ち出した楽曲から、大人のセクシーさを前面に出した楽曲が増えてきたのがこの時期でしょう。歌詞にもきわどいワードを使ったり、色気むんむんのセクシーな女性を登場させたりと、「ナイヨ・ナイヨ・ナイト」「セクシー・ユー」「タブー」「How Many いい顔」と、このあたりは子供には結構刺激的だった覚えがあります。チャート順位的にはさほど目立った動きはなかったですが、30万枚程度の売上を残す曲もあったりと、概ね順調だったといってよいでしょう。
【方向性が不安定に】 1981~1982年
「未完成」「お嫁サンバ」「もういちど思春期」「哀愁ヒーロー」
「純情」「女であれ、男であれ」
楽曲的には何処を目指しているのか、やや見えにくくなった印象を受けたのがこの頃。際物ソングとスレスレの線にある「お嫁サンバ」がいい方に転んでヒットしましたが、それ以外はトップ10入りを逃しており、今後どっちの方向に行くのか、試行錯誤感が感じられました。
【脱アイドル、カバー路線から大人の曲に挑戦】 1982~1983年
「哀愁のカサブランカ」「哀しみの黒い瞳」「美貌の都」「ロマンス」
「素敵にシンデレラ・コンプレックス」「ほっといてくれ」
「シャトレ・アモーナ・ホテル」
脱アイドルのために挑戦したのが海外のカバー曲で「哀愁のカサブランカ」がまず久しぶりの大ヒットとなり、そこに活路を見出したのか「哀しみの黒い瞳」「ロマンス」とカバー曲が続きます。この時期はテレビのランキング番組や賞レースにも不参加の姿勢をとり、かなり尖がっていた印象がありました。
【原点回帰】 1984年
「2億4千万の瞳」「ヤクシニー」「どこまでもアバンチュール」
やや背伸びが感じられた時期を過ぎ、ここで原点に帰ったようなキャッチーでインパクトのあるフレーズの「2億4千万の瞳」で勝負をかけたところこれが大当たり。久しぶりに20万枚を超えるヒットとなり、まさに郷ひろみらしさとは何かを再確認した1曲になりました。
【長期低迷期】 1985~1992年
「愛のエンプティーペイジ」「サファイア・ブルー」「千年の孤独」他
アイドル期が終わり、大人のシンガーへと移行する過程で、1985年以降売上が伸びない低迷期を過ごすことになります。トップ100圏外ということもちょくちょく発生し、まったくヒットがなく、郷ひろみに求めるものと、郷ひろみ自身がやりたいことと、かなりギャップが生じていたように思います。
【大人の恋のバラードで見事復活】 1993~1996年
「僕がどんなに君を好きか、君は知らない」「言えないよ」
「逢いたくてしかたない」「泣けばいい」「どんなに君がはなれていたって」
そんな中ラブバラードに活路を見出すことに成功し、順位こそトップ10までには入りませんでしたが、じわじわとロングヒットとなった「言えないよ」「逢いたくてしかたない」が30万枚、40万枚級のヒットとなり、見事に復活を果たしたのでした。
【再び低迷期へ】 1996~1999年
「く・せ・に・な・る」「Don’t leave you alone」「ゆっくり恋しよう」 他
そのバラード路線もいつまでも続くわけではなく、再び低迷期に入りました。
【郷ひろみに徹してまたまた復活】 1999~2000年
「GOLDFINGER'99」「Hallelujah,Burning Love」「なかったコトにして」
「True Love Stoty 〈and松田聖子〉」
そして行き着いたのがギラギラ感満載の「GOLDFINGER'99」で、やはり郷ひろみはこの路線と吹っ切れたのでしょうか、郷ひろみはこうなんだというのを見つけた感がありました。これが46万枚の大ヒットと、ここでも復活を果たすのです。同じ路線の「なかったコトにして」ではなんと16年ぶりのトップ10入りを果たすと、かつての噂の相手松田聖子とのデュエットまでヒットさせてしまい、健在ぶりを示したのでした。
【生涯現役!】 2001年~
「Boom Boom Boom」「男願 Groove!」「ウォンチュー!!!」他
2001年以降は大ヒットはありませんが、コンスタントに新曲を発表し、未だに現役感いっぱいで活躍中。恐るべき郷ひろみ、といったところです。
■売上枚数 ベスト5
1 よろしく哀愁 50.6万枚
2 哀愁のカサブランカ 50.1万枚
3 GOLDFINGER'99 46.0万枚
4 逢いたくてしかたない 43.5万枚
5 愛への出発(スタート) 43.0万枚
発売年度を見ると、1974年、1982年、1999年、1995年、1973年と見事に飛び飛びで、しかも27年間に渡っていることになります。シンガーソングライターではなくアイドル出身のシンガーとしては異例のことで、国民的まさに歌手といっていいのではないでしょうか。
■最高順位
1位 … よろしく哀愁
2位 … 愛への出発、裸のビーナス、魅力のマーチ、モナリザの秘密、
花のように鳥のように、誘われてフラメンコ、あなたがいたから僕がいた、
帰郷/お化けのロック、哀愁のカサブランカ
意外なことに1位は1曲しか獲得していません。対して2位が9曲もあるのですから、その都度強力な別の1曲に阻まれてきたということになります。また2位曲をみてみても、あの曲がない、この曲もないといった感覚にもなり、それも含めてイメージとは乖離があるような気はします。
■代表曲
1 2億4千万の瞳
2 男の子女の子
よろしく哀愁
お嫁サンバ
5 GOLDFINGER'99
哀愁のカサブランカ
言えないよ
イメージ的にはこんな感じでしょう。いつの間にか♪ジャパァーン のフレーズが郷ひろみの代名詞的な雰囲気になってしまい、発売当時には想定もしなかった「2億4千万の瞳」が、最も知られた郷ひろみの曲になってしまったように思います。ただ長期にわたり大ヒットを出してきたのだ、それぞれの時代の代表曲があり、曲を上げていくと結構な数になってしまいそうです。
■好きな曲 ベスト5
1 マイレディー
2 よろしく哀愁
3 How Manyいい顔
4 セクシー・ユー
5 ハリウッド・スキャンダル
私の好みとしては1980年前後の作品が多くなっています。
♪ジャパァーン ジャパァーン
♪1、2、サンバ 2、2サンバ お嫁お嫁お嫁サンバ
♪ 君たち女の子僕たち男の子
♪アーチーチー アーチー
等々郷ひろみについては、フレーズが印象的曲が代表曲として残っている印象ですが、「2億4千万~」とか「お嫁~」とかの売上はそこそこ程度で収まっています。一方2位を獲得した曲の中には、まったく口ずさめないようなみのみあったりと、結構印象と実績の間にはムラがあるようで
結論:必ずしも売れた曲=代表曲というわけではない


































