第78回 代表曲と売れた曲は一致するのか
斉藤由貴
デビュー時から女優と歌手の両方で脚光を浴び、他のアイドルとはやや一線を画した位置で活躍してきた印象があります。アイドルの年齢を過ぎた後は、実にいろいろなことがあり、たびたびスキャンダルにも会いながらも、さほどダメージを受けることなく、今も女優として歌手として活躍を続けているのは、なかなかの強かさ。今回は歌手斉藤由貴の売上実績と、印象との乖離があるのかないのかを探って見ます。
【女優業と並行しながら確実にヒットを量産】 1985年
「卒業」「白い炎」「初戀」「情熱」
歌手デビューの前からCMやドラマに出演し、名前と顔をある程度売っておいてからのデビュー曲「卒業」は、同時期に同じタイトルの作品が複数競合したことも話題になり、いきなりヒットとなりました。また主演した「スケバン刑事」がまた話題になり、主題歌となった2ndシングル「白い炎」、文芸作品っぽい雰囲気のある「初戀」、主演映画「雪の断章」の主題歌「情熱」と着実にヒットを飛ばし、まさに順風満帆のデビュー年となりました。
【引き続き順調にキャリアを重ねる】 1986年
「悲しみよこんにちは」「土曜日のタマネギ」「青空のかけら」「MAY」
2年目に突入しましたが、キャリアは順調そのもの。アニメめぞん一刻の主題歌「悲しみよこんにちは」は2度目の玉置浩二とのタッグで売上を伸ばし、CMソング「青空のかけら」で念願の初の1位。またまた主演映画の主題歌「MAY」とヒットを重ね、一方でNHKの連続テレビ小説「はね駒」も話題になり、年末には紅白歌合戦に初出場した上に、司会まで務めるという、いうことなしの1年ではなかったでしょうか。
【ペースを落としての歌手活動へ】 1987~1988年
「砂の城」「さよなら」「ORACIÓN」「Christmas Night」
それまでハイペースでシングルをリリースしてきましたが、「砂の城」のあとはペースを落としていきます。1987年は2曲、1988年は企画物が2作で、通常シングルはなく、アイドル歌手としての活動を今後どうしていくのか、女優業だけに絞っていくのか、そんな雰囲気も漂い始めていました。
【歌手としてもうひと花】 1989年
「夢の中へ」「Ave Maria」
そんな中で突如井上陽水のカバー曲として発売した「夢の中へ」がヒット。結果的にこれが歌手斉藤由貴として最後の一花になりました。フォークの名曲を当時はやりのユーロビート風にアレンジ、特徴的なダンスで歌う姿は、かなり印象に残っています。
【脱アイドル】 1992~1994年
「いつか」「なぜ」
しかしその後も歌手として作品をリリースするペースはどんどん落ちていき、もはやそこに興味はないという感じにも映り、実際に久しぶりに発売した「いつか」「なぜ」もほとんど売れませんでした。この後長い間歌手としての活動はほとんど表にでなくなり、女優業に完全シフトしていきました。ただ近年、テレビなどでも往年のヒット曲を歌うことも増えてきていて、何か吹っ切れたようなものを感じられるようになりました。
■売上枚数 ベスト5
1 夢の中へ 40.8万枚
2 悲しみよこんにちは 28.9万枚
3 卒業 26.4万枚
4 白い炎 19.9万枚
5 情熱 17.8万枚
最後の一花でヒットさせた「夢の中へ」が1番売れていて、以下10万枚以上離れて「悲しみよこんにちは」、「卒業」と続きます。
■最高順位
1位 … 青空のかけら
2位 … MAY、砂の城、夢の中へ
唯一の1位獲得曲が「青空のかけら」というのは、意外に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。2位も3曲獲得していますが、こちらも印象通りというわけでは必ずしもないようなラインアップになっています。
■代表曲
1 卒業
2 悲しみよこんにちは
3 夢の中へ
卒業曲の定番となっている「卒業」はもはやスタンダードといっていいほど、下の世代にも浸透しているでしょう。文句なしの代表曲1番手です。アニメのテーマソングとして紅白で歌った「悲しみよこんにちは」も、時々紹介されることがありますね。そして一番売れた「夢の中へ」といった感じでしょうか。
■好きな曲 ベスト5
1 悲しみよこんにちは
2 MAY
3 初戀
4 白い炎
5 砂の城
ペースを落とすまでの約2年間に出したシングルはどれもアイドル歌謡としてレベルが高く、名曲揃いだと思っています。その中でも「悲しみよこんにちは」と「MAY」は大好きな曲で、私の中では甲乙つけがたいのですよね。ただ80年代アイドル特集なんかでとりあげられるのは、だいたい「卒業」でたまに「悲しみよこんにちは」なので、たまには「MAY」なんかをとりあげてくれたらどうですか?
売上1位がカバー曲の「夢の中へ」、唯一の1位獲得曲が「青空のかけら」ということで、「卒業」が売上3位、「悲しみよこんにちは」が売上2位と、それなりに実績はあげてはいますが、1位じゃないのですよね。
結論:1番売れた曲も、唯一の1位獲得曲も、1番の代表曲ではない













