●食卓を囲む映画 ベスト10  | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

食卓を囲む映画 ベスト10+5 

 

1 青葉家のテーブル

夏休み美術予備校に通うために急遽やってきた、かつての親友の娘。新しい出会いや経験を通して、将来に向けて自分は何をするのだ、決めなければならないという呪縛から解き放たれていく様子は、等身大の高校生を素直に描いていて好感が持てました。目的があってそのために絞って取り組むのもひとつ、自分に何があるのか模索しながらいろいろ試してみるのも一つ、人生の進み方もまたいろいろでいいんだよというのを教えてくれるような作品で、その高校生を演じた栗林藍希が好演していました。一方で、彼女がやってきたことをきっかけに、絶縁していた親友と向かい合い、過去の軋轢による呪縛からようやく解放された西田尚美演じるシングルマザーを見ると、人生で何かを始めるのに遅すぎることはないんだよと、夢をあきらめてとまっている人たちに対して、何か背中を押してくれるような効能もあるような、そんな作品として、最後は爽やかな気持ちになれました。

 

2 恋人たちの食卓

料理人の父親と三人の娘達の恋愛と仕事を、優しく描いている台湾映画です。なんといっても食卓に次から次へと並ぶ料理の数々が壮観で、観ているとお腹がへってくるようです。娘それぞれのキャラクター、そして父親の結婚への伏線の描き方に注目です。

恋人たちの食卓

 

3 おとなの事情 スマホをのぞいたら

リメイク作品ですが、日本語で聞くと、よりすんなりとニュアンスも含めて頭に入ってくるところがあり、まずは楽しむことができました。やはり一番のポイントは、田口浩正と東山紀之のスマホの交換で、衝撃の動画がすべての始まりだったように思います。交換したはいいけれど、男性からの愛のメールという思わぬ展開に、それは俺じゃないと言いたくても言えない田口浩正のジレンマに陥った表情が爆笑もの。そこからはとんでもない展開に、内輪同士の不倫があったり、浮気相手の妊娠があったりと、普通なら会食を続けられる状況ではないような出来事が次々に判明してくのですが、なぜか会食が続いていくところがまた不思議。結局収まるところに収まりそうな感じで終わっていくので、ある意味のんきな集団ともいえるかも。意味深なコンビーフの映像で、どんな集まりなのかが最後に明かされるところなんかは、工夫なのでしょうね。

 

4 バベットの晩餐会

味わい深い作品です。若い時にほんのひと時お互いに思い合った男女二組、そしてその女性の方は姉妹というわけなのですが、結局は結ばれることもなかったその縁が繋がって、晩年の盛大な料理による晩餐会へと結びついていくという、人生や運命の不思議を感じさせてくれます。そしてなんといっても食卓を飾る料理や最上級のワインやシャンパンの数々。ただひとり料理の素晴らしさを語る将軍と、周りの老人たちの反応の違いがどこかユーモラスでもあり、ほのかなわびしさを感じさせる描写でもあったりします。最後に明かされるバベットの秘密と彼女の意気にまたほろりとさせられます。

 

5 幸福な食卓

瑞々しい青春映画であり、家族崩壊と再生を描いたホームドラマでもあります。タイトルからイメージしたものとは違い、意外にも中心は、北乃演じる主人公と勝地演じるボーイフレンドとのやりとり。ですからちょっと恋愛映画的な要素が強く出ているように感じました。中学から高校までの数年間、出会いからラストの悲劇までを追うわけですが、打算も計算も世間体も一切なく、自然に仲良くなって純粋に惹かれあい、お互い「切磋琢磨」しあう関係は、この年代ならではのものかもしれません。なんとなく忘れていたものを思い出したような感覚を覚えました。タイトルの「食卓」に代表されるこの一家は、家族4人、それぞれが自分のことで精一杯でバラバラになっている状態。「父さんが自殺したときは…」などと食卓で語られることに違和感を持たざるを得ません。しかしながらもしかすると、こういう家族の状況は珍しくないことなのでしょう。ネタバレになりますが、最後のお母さんが4つのお皿を並べるシーンが、この一家の将来が良い方向へ向かっていることを示してくれ、まだ修正がきく状態であったことは救いでした。

幸福な食卓

 

6 最初の晩餐

それぞれ子持ち同士で一緒に暮らしだした二つの家族。その父親の葬儀で再び集まった家族。母親が作る料理の数々は、家族にとって想い出の品ばかり。一緒に五人が暮らしていた頃を回想しつつ、家族とは何なのか、改めて問い出す姉弟。そこに家を一人出ていったきり連絡のなかった血のつながらない兄がやってきます。そこで語られる母親と父親の出会いの秘密。確かにこの母親は、周りの家族の気持ちよりもまず自分の感情をとめることができずに行動してしまったということでは勝手ですし、血の繋がらない娘が怒るのも実に理解できます。簡単にいえば不倫の末に夫に自殺を図らせ、息子につらい思いをさせた、考えてみればひどい母親、ひどい妻です。もったいぶって最後に明かした秘密がこれということに、やや拍子抜けしたことと、敢えて長い年月の経過した通夜の夜に事実を血の繋がらない娘息子に打ち明けたという部分で疑問は残りましたが、葬儀場ではなく自宅で行われる通夜と葬儀に、昔ながらの地縁血縁のつながりを重んじた田舎の風土のようなものも感じたりして興味深くも観られました。

 

7 夏時間の庭

けっして面白い作品ではないです。大きなトラブルが発生するでもなく、母親の遺産の処理に当たる3人の兄妹たちが、小さな問題を話し合いながら処理していくという、言ってみればどこの家族にも一度は起こりそうな良くある出来事の積み重ねですから。しかし、それだけに一つ一つのシーンや会話にリアリティがあふれ、ものすごく自然に話が進んでいくのです。遺産処理の問題に、親子の問題などが絡み、映画の中の出来事が身近に感じられるのです。さらには売りに出す家の周りの景色が、緑や水に囲まれて涼しげな雰囲気なので、とっても心地よいのです。思い出がいっぱいで売りに出したくない長男の気持ちもよく分かるのですよね。家族で築いてきた価値のあるものや思い出への感傷的なこだわり、一方で現実的な自分の人生を進むために必要なものと不必要なもの、そしてその間を揺れる大人たちを尻目に今を楽しく生きることに夢中な若者たち、そんな価値観の緩やかなぶつかりあいが、フランスの街や田舎の風景の中で現実的に感じられる、優しくも切ない作品。なかなか良かったです。

 

8 家族ゲーム

家庭での食卓を囲むシーンがたいへんな話題となった森田芳光監督の問題作です。家庭教師役の松田優作の代表作になっていますが、個性的な役柄を実に味わいのある演技と存在感を見せてくれています。当時の世相や社会問題を反映し、おかしみを持たせながらも、いろいろと考えさせられる作品となっていました。

家族ゲーム

 

9 8月の家族たち

聞けば聞くほど不快になっていくこの家族の会話。お互いに自分を省みることをしないで、相手を責めたり罵ったり詰ったり…。そしてやがて明らかになっていく隠し事…。演技派個性派俳優たちによる壮絶な演技合戦は実に濃厚でした。血が繋がっているからこその一筋縄ではいかないお互いへの募る思い、隠していた思いがぶつかり合い、それはそれはもうただ映画を観ているだけの観客からしても、早くその場から逃げ出したい思いであふれそうになりました。みんな結局は似た者同士、血の繋がりは隠せませんね、という感じです。強いて言えばクリス・クーパーだけがまともなのですが、考えてみれば女性陣と血の繋がりがないわけで、当然と言えば当然なのでしょうね。観ていてけっして楽しい気持ちになったり、感動したりするような類の作品ではなく、むしろ気持ちは良くないし、怒りや苛立ちを覚えるような映画です。でもそれだからこそ興味を持ってしまうこともあるわけで、結局のところ人は他人の不幸が大好きということになるのでしょうか。深いこと考えずに演技だけを楽しましょう。

8月の家族たち

 

10 マダムのおかしな晩餐会

メイドさんと絵のコンサルタントとはかない恋物語がメインで、それをよく思わない雇い主のマダムの自分勝手な言動を茶化して笑う、そんなコメディです。邦題の「晩餐会」は話のきっかけであり序章にすぎず、ちょっとピンとこない感じではあります。このマダム、別の男にプレゼントをもらったりしながら密会しているくせに、夫とも別に仲が悪いわけではなく、自由に生きている感じです。夫も夫もフランス語の若い先生とよろしくやっていますが、実は金銭の危機を隠しているという状況。その中で娘のいるメイドさんが恋におち、マダムの目を盗んでドレスを借りたりと、まるで少女に戻ったかのように、うきうき。相手の男も、夫の連れ子に嘘を吹き込まれて、いいところの出だと思い込んでいるだけに、事態は複雑に。しかし最後はマダムの意地の悪い告げ口で二人は破局に。ちょっと悲しい結末です。

 

11 紀子の食卓

時々見られる「家庭崩壊」を描いた作品の中でも、特に個性的な映画になっています。家出して「出張レンタル家族」の一員として、それぞれの依頼者によって役を演じ、時間制限つきで「家族ごっこ」をはじめた主人公紀子と妹。これ自体かなり非現実的な設定ではあるのですが、そこには現代に潜む家族問題が強烈に風刺されています。正直なところ、あまりにも個性の強い演出のため、作り手の言いたいことすべてを理解できたかというと「否」ではあると思いますが、それでも必死に娘の消息を探すうちに姉妹の父親の必死さに、強く惹きつける力を感じました。妻にも死なれ、娘にも本物の父親と認めてもらえない寂しさに、男親の悲哀のようなものがあふれてきます。色んな捉え方のできる映画でもあると思いますが、見終わってなんともいえない不思議な気分に襲われる、独特の家族ドラマでした。

 

12 おとなの事情

ちょっとしたきっかけで言い出したゲーム感覚の携帯の見せ合い聞かせ合いが、予想通りとんでもない事態を招き、みんなが隠したい事情がそれぞれに明るみになっていきます。男性陣はみんなそれぞれ隠し事を抱えている中、しぶしぶ始めたゲームが案の定修羅場となっていくわけで、そうでなければ映画になるわけがないのです。最初は他人ごとと思っていても、次第に自分に降りかかってくる疑惑。どの夫婦もこんなんだったら、結婚なんてするものじゃないと思ってしまいますよね。

 

13 クーパー家の晩餐会

ある家族のクリスマスの1日を描いています。それぞれが問題を抱えたものが、アクシデントをきっかけに明るみになり、そしてそれが解決へと繋がっていくというホームドラマで、賑やかな食卓での表面を装うとする思いと、内に隠された事実が交錯して、複雑な様相をしめしています。不倫を隠すための偽婚約者、離婚間近を隠すための一家団欒、失業を隠すための嘘…もっともそれらが都合よく一瞬で解決へと向かうから不思議。といいますが、映画なので仕方ないのですが、ちょっと都合良すぎ。特にジョン・グッドマンとダイアン・キートンの夫婦仲は、つい数時間前まではどうやっても修復できそうにもなかったものが、あっという間に心変わり。妻側がどう心境に変化があったのか、観ていて唐突さは否めませんでした。構図は面白いけれど、いろいろあり過ぎて、自然な収拾とはいかなかったのが惜しい気はしました。

 

14 再会の食卓

独り身に戻り昔の妻を連れて帰りたい昔の夫の気持ち、それは理解できます。理解ある夫の体裁を保つために表面的には妻の気持ちを尊重することを決めながらも、酔っぱらってついつい本音を吐き出してしまった現夫の態度、それも分かります。ただし、妻のずっと黙して語らず何を考えているか分からない態度、その部分がどうもうまく伝わってきませんでした。長年連れ添った今の夫、そして子供や孫たち、慣れ親しんだ土地、そういったものへの執着や愛着からくる迷いというものがあまり感じられず、結局最後の決断の決め手がこれでは、ちょっと寂しいです。この奥さんには、もっともっと苦しんで迷っているところを見せて欲しかったし、そして決断の決め手も別の要因であってほしかった。そういう部分で物足りなさを感じました。

 

15 極道めし

それぞれが想い出の食事を語り合っている場面が延々と続き、ずいぶん退屈してしまったが、3年後のエピソードでちょっとせつない気持ちにさせられてしまいました。食べ物の好みも思い出も人それぞれ。ここに出てくる食事はそのほとんどが庶民の食事、それも金をかけた贅沢なものではなく、なんとか用意できたものを工夫して作ったもの。しかしそれだけに心が伝わってくるということもあるのですよね。個人的には特製オムライスにやられてしまいました。作品的には名前よりもキャラクターを優先した配役、ロケをせずに敢えてチープなセットを使った背景と、この映画に対する姿勢が興味深かったです。もちろん予算の問題もあるでしょうけれども。

極道めし