●冤罪裁判映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

冤罪裁判映画 ベスト10

 

1 それでもボクはやってない

主人公が実際に痴漢をやったかやらなかったかは明確にされませんが、裁判としては痴漢冤罪を主ちよぅしています。観終わっての第一印象はとても丁寧な作品だということ。想像以上に、リアリティにこだわって作り上げられ、しかもまったく裁判について知らない素人にまで手順や仕組みを分かりやすく説明してくれています。ドライ且つクールに法廷シーンを中心にしながら裁判を順に追っていき、さらに必要以上に感情を煽るような演出を排除することで、現在の日本の裁判制度の矛盾や問題点を客観的に指摘するような作品として、完成度は高いです。その数々の矛盾や問題に対して、どうするべきだという解決策、或いはどう思うかという作り手側の思いなども直接的に示すこともありません。しかしそれだけに、より現実的に身近な問題として、観ている者に響いてきます。とにかく、裁判とそれを取り巻く状況に対する問題意識を多くの人に知って欲しいという周防監督の思いは、充分に伝わってきました。2時間半という長い上映時間なのですが、決してドラマティックに展開するでもないこの題材を、まったくその長さを感じさせないで展開させていく手腕はさすがです。

それでもボクはやってない

 

2 BOX袴田事件 命とは

大きく訴える気持ちを込められて作られた映画は非常に重いです。当然ながらこの作品によって、現実に未だ続いている問題に対して世論を喚起しようという思いは強いでしょうし、実際に出来上がった作品についてもその力は十分にあるものになっていると思います。新聞やテレビなどで見たり聞いたりしたことのある「袴田事件」という名前、しかし実際にその内容をどこまで知っていたかというと、再審請求が問題になっているところまでは知っていても、細かい経緯まではあまり知らなかったというのが実際のところ。その部分でも、少なくとも事件のあらましを説明し、死刑囚側からの主張をできるだけ多くの人に周知させるという部分では、大きな意義のあった作品になりました。ただ気をつけなければならないのは、あくまでも片側からの立場で作られた作品であるということ。この映画の内容が誇張されているとか、大げさだとかいうつもりは全くないですが、気になったのは、登場人物のすべてが明確に敵味方に分けられて描かれていたこと。映画として観やすくするためには非常に分かりやすい手法ですし、多くの娯楽映画では意識的に用いられている図式ではあるのですが、実話ベースの映画化作品として観たとき、どこか穿った気持ちになってしまうのも否めないところ。それが事実に近いとしてでもです。その意味で、作り方として気になるところは多少残りましたが、いずれにせよこの作品が、次のステップに進むきっかけになることを願う気持ちには変わりありません。是非多くの人に観ていただきたい作品です。

 

3 私は確信する

実際の事件をベースに作られた作品です。無罪を得た一審に続いての二審を描いています。事件自体なんとも不思議で、被害者の遺体が見つかったわけではなく、生死さえも不確かなままで、世論は被告を殺人事件の犯人だという方向で責める始末。疑わしきは罰せずの原則を言われながらも、愛人の誘導もあって、検察側もおかしな方向へ巻き込まれていく感じが、観ていてなんとも不思議でした。ですから、この判決自体はなんの不思議もなく、むしろ当然の結果としか思えません。しかしそれなのに、雰囲気は有罪の方へ有罪の方へ向かっている感じで、それがとにかく異様ではありました。結果、正義はかろうじて守られたのですが、真相はわからずじまいでもやもやが残る結末でしたが、これが現実なんですね。

 

4 潔白

陰謀によって殺人事件の犯人に仕立て上げられた認知症の母親を弁護するエリートの娘。ほとんどが敵だらけという状況の中で、一つ一つ疑惑をクリアしていく法廷闘争は、派手ではないですが見ごたえがありましたし、主人公は頼もしく感じられます。さらには娘を娘と理解できない母親との間の過去のいきさつもからめ、単なる法廷ミステリーではない、親子のドラマとしても韓国らしい熱い作品になっていました。

 

5 リーガル・マインド~裏切りの法廷~ 

冤罪による無罪放免を勝ち取った後、その嘘がわかり再度有罪に導くという二転型法廷ドラマに、女性弁護士の抱える子供との問題を盛り込んだ、実直な作品です。仕事と家庭の間で悩み苦しみそれでも戦っていく主人公をベッキンセイルが好演。また彼女を支えるニック・ノルティが陰でいい味を出しています。

リーガルマインド裏切りの法廷

 

6 バファロー大隊 

西部劇としては珍しい法廷劇。黒人兵が殺人犯として捉えられるものの、必死の弁護と新たな事実の判明で、真犯人を暴き出すまでを描いた作品ですが、論理的に積み重ねた謎解きものというよりも、犯人は最後に急転直下、会話の中で犯人に感情的なさせて自白を引き出すという手法。ちょっと変わった西部劇として興味深く観られました。

 

7 華麗なるリベンジ

韓国映画らしい力技の法廷復讐劇が描かれています。罪を着せられた検事が5年後に詐欺で収監された男と組んで、見事に自らの罪を晴らし、最後はスカッと快活な気分で観終えることができます。まあどいつもこいつも金や地位に目がなく、警察内部はどうしようもない者ばかりというのがいかにもという印象はありますが、これも韓国映画では定番です。最後は突然飛び道具の新証拠が出てきてずるいとは思いますが、娯楽作としては楽しく観られるものになっていました。

 

8 声をかくす人 

どの国でもどの時代でも権力によるこうした横暴は存在するもので、そしてこうしたことを積み重ねて法が整備され、近代国家が形成されていくのですね。同じ大統領暗殺でも、謎の多いケネディの犯人の話は今までにも映画で取り上げられることがちょくちょくあったのですが、リンカーン暗殺犯の背景については、そういえばあまり知らなかったです。無実の罪、冤罪…。人一人の命より国家のメンツを守ること優先されていたわけですが、考えてみれば戦争こそがその最たるもの。戦争で多くの命を犠牲にして得た勝利に比べれば…ということでしょうか。しかし権力のメンツのための横暴は今なお、その大小に関わらず今なお存在するわけで、そういう意味ではこうした映画も、また作り続けていく意義は決して小さくないでしょう。

 

9 北京のふたり

異国を舞台にしてリチャード・ギアが危機からどう脱出するか、それが見所といえば見所。それが意外に正攻法のサスペンスになっていて、緊張感を持って最後まで見られることが出来た。頑固な中国の裁判長に押し切られそうになり、やきもきさせられるのだが、ラストであっというまの急展開。やや最後はめまぐるし過ぎて、関係の把握がしにくかったのが残念なところ。

 

10 私は告白する

殺人者の告白を知りながら神父という職業上それを明かせず、自らが容疑者として裁きを受けることになってしまった主人公の葛藤を描くヒッチコック映画です。真犯人を知りながらそれを明かせず、窮地にはまっていくモンゴメリー・クリフト演じる主人公の苦しさがじわじわと伝わってきて、観ているほうもやきもきしてくる演出はさすがヒッチコック。ヒッチコック作品の中では、あまり仕掛けに凝らない正攻法な作品だと思いますが、それでも終盤は法廷の場にシーンが移り、いつ真相を証明するような証拠や証言が出るか、或いは主人公が意を決して明かすか、はたまた真犯人が耐え切れず名乗り出るか、ドラマを盛り上げてくれます。陪審員が話し合うシーンなども、いかにも主人公に不利な判決が出そうな雰囲気を見せ、最後までやきもきを持続させてくれ、そしてラストは法廷から出たところから結末へと動いていくわけです。奇を衒わない重厚なスリラーとして、たまにはこんなヒッチコックもいいかもしれません。