●2021年鑑賞映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

2021年鑑賞映画 ベスト10

 

恒例の一年間に鑑賞した映画のベスト10です。

 

1 猿楽町で会いましょう

映画としては面白くて、最初から最後まで時間を気にすることがないまま一気に見入ってしまいました。ただそれにしてもこの彼女ユカさん、悪意が全くないのに結果として男を振り回して疲れさせてしまう、とっても厄介な女の子なんですよね。可愛くて人懐っこい仮面をかぶっているので騙されてしまうのですが、自分の寂しさを埋めるために、或いは住むところを確保するために、時には仕事を得るために、男たちと関係を持ってしまうのです。同棲する相手がいても、自分がつらくなるときだけ感情的になって、突然押しかけたり、電話で呼び戻したり、元カレを招き入れたりと、被害者面しているようで、実はとんでもない自己中心的な行動ばかりをとっているという、冷静になればとんでもない女。ただそこに悪気や自覚はないので、それが余計に厄介なのです。でもそれが人間的にも感じて、憎めないキャラクターとなっているのもまた事実。これがリアルなのかリアルではないのかはよくわかりませんが、有名俳優がまったく出ていないにもかかわらず、いやそれだからこそそれぞれキャラクターが立ったいて、現代の若者の恋愛模様の一面を観せてくれているようで、結構気に入ってしまいました。

 

2 アイダよ、何処へ?

第二次世界大戦でのユダヤ人虐殺を扱った映画は数あれど、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争での虐殺を扱った作品は稀有であり、その意味で1990年代においてこういった残忍なことが行われていたという事実だけでも、驚きをもってこの作品を観ることになりました。とにかくこの作品はハードです。紛争の中で、罪のない民間人が大量に殺害され、女性や子供たちが男の家族をみんな失ったという歴史にはただただ絶句するばかり。本作はたまたま国連の通訳を務めていた女性が主人公で、なんとか家族だけでも救おうと、あの手この手で協力を募ろうとするのですが、結果的にはいずれもうまくいかず、自分を残して家族を失うことになります。観ていると、自分の立場を利用して、自分の家族だけを助けようと奔走する姿は、利己的で傲慢にもみえるのですが、命がかかっているわけで、究極の状況ではきれいごとばかり言ってられないというのは、その通りでしょう。とにかく辛い辛い映画でした。

 

3 シリアにて

とにかく緊張感が半端ではなく、戦地で暮らすリアルを、平和にのほほんと暮らす我々にも感じさせてくれる映画です。舞台はほぼアパートの一室。一度外に出るシーンがありますが、基本的にはアパートに潜んで暮らす2家族と、そこへの来訪者を描くだけです。その時間の中でも、若い妻の夫が撃たれるところを目撃したり、押し入ってきた男に犯されたり、危機的状況が続き、さらには命がけで他の同居者を守った後に、自分の夫が撃たれたことを聞き、同居者同士で険悪なムードにもなっていきます。戦地に住む人々は日々この緊張感が日常茶飯事なのですから、その精神的な苦しみは我々の想像に及ぶものではないでしょう。戦闘シーンはなくても、戦争のリアルを伝えてくれるそんな作品でした。

 

4 彼女が好きなものは

同性愛であることを抱える若い男子が、どういう気持ちで日々を暮らし、人と接しているのか、そんな苦悩がひしひしと伝わってきます。他人事であるうちは、別にいいじゃないと思っていても、いざ自分と関係するところで目にすると、理性ではわかっていても、素直に受け止められない事実。そんな気持ちの矛盾点もしっかりついてきていて、なかなか考えさせられね、単なる青春同性愛映画では終わらない作品になっていました。好きになった男の子がゲイだった…そんなショッキングな経験をしながらも、人間としての彼を受け入れていく山田杏奈演じるヒロインがとにかく素敵で、観ている側もついつい惚れてしまいそうでした。

 

5 街の上で

現代の若者たちの生態を描くのが実に上手な今泉監督。この作品も、冒頭の別れがいきなりきたあとしばらくは、特に大きな出来事があるわけでもなく、主人公の冴えない日常を、出会った人々との会話を何気なくつないでいくだけの自然な構成が、妙に心地よかったです。それによってこれがリアルな若者の実態なんだという不思議な説得力のある空気を作り出すのですよね。そして作品中で登場する4人の女性たちのキャスティングと描き方がまた見事です。常に登場してくる人物ではないので、久しぶりにそのキャラクターが登場したときに、一目で思い出すことができるというのは、映画のキャスティングには重要なことだと思います。時折なんとなく似ているタイプの演者がいると、混乱したりすることも珍しくはないのですが、4人だれも外見的にもキャラクター的にもタイプが異なって、しかも魅力的に映っているのですよね。顔と名前の知れた女優さんだったら、それは容易なのですが、その名前に頼らない、キャラクター重視の配役が、見事にはまっていました。セリフのやりとりもまた面白くて、例えば映画監督役の女性が飲み会の席で突然きつい性格が露呈されてびくっとしたり、深夜の女性の部屋で男女二人で長々と繰り広げられる恋バナのシーンだったり、なかなか何気ない感じなのですが、面白いのですよね。圧巻は5人の男女が鉢合わせするシーン。昨日出会ったばかりの女性との関係を、元カノには正直になんでもないと伝えたいし、その女性が嫌がる元カレに対しては、彼氏を装ってあげたいしと、その混乱ぶりは笑いどころでしたね。とにかくいろんな面でツボを押さえた作品になっていて、最初から最後まで楽しむことができました。

 

6 オールド 

M・ナイト・シャマラン監督が久々にその才能を見せつけることができた作品ではなかったでしょうか。突っ込みたいところはたくさんあるにせよ、娯楽映画としては最初から最後まで、十分に楽しむことができました。年を取るスピードが異常に速いビーチに集められた人々、余命の少ない年配者や犬から死んでいき、その恐怖から殺人まで行われる始末。脱走しようとするとまた死んでしまい、八方ふさがりの中で誰が最後まで生き残るのか、ビーチから抜け出すことはできるのか、一種のサバイバル合戦の中で、それぞれが抱えている健康や家庭の問題も露わになっていき、目が離せません。シャマラン作品では時にオチが弱いこともあるのですが、今作はしっかり種明かしとなるオチもきちんとあって、鑑賞後の満足感も良し。細かいところを言うと、逃げようとしたときの気絶状態とか、種の分からないところもあったり、突っ込みたいところもあったりはしましたが、まあいいでしょう。お約束の監督自身の登場もあって、面白く観られました。

 

7 ブータン 山の教室

いい映画です。僻地に若い教師が赴任するという映画はこれまでも何本かあり、どの作品も地元の子供たちとの交流の中で、教師自身も成長していくという流れになっていますが、この作品もその流れを汲んだものです。いかにも今どきの若者といった感じの主人公が、純粋で素直、とにかく勉強することに飢えている子供たちに、なんとか少しでも勉強しやすい環境を作ってあげたいと考えるようになるのも自然な流れです。しかも大人たちも、先生という存在に対して大きな敬意を抱いていて、教師をやめようと考えていた彼でさえ、先生としての自覚も芽生えてくるのも必然であります。とにかく大人も子供も含めて、他人に敬意を払うブータンの山奥の人々の純粋な心に触れると、心を動かされるものはありますね。最後、再びこの地に戻って、親しくなった女性と一緒になってくれればいいなと思ったりもしましたが、それでも主人公に大きな影響を与えたことは、ラストのオーストラリアでのシーンで赴任中に教わった歌を歌い出すところをみれば明らかでしょう。ブータン映画自体ほぼ初めてでしたが、ありきたりですが、心を洗われる思いでした。

 

8 カオス ウォーキング

色々な映画をつぎはぎしたような印象ではありますが、環境の悪くなった地球から新たな居住星として移り住んだ開拓感が表れていて、なかなか面白かったです。そしてなんといっても偵察船から落下してやってきたヒロインを演じたデイジー・リドリーの凛々しいこと!キリッとした表情がよくて、見とれてしまうシーンも多々。やや幼い感じのトム・ホランド演じる主人公との対比もあり、マッツ・ミケルセン演じる実はとんでもなく悪い首長と併せて、キャラクターも楽しめました。30数年後の近未来でありながら、遥か未来のような感じと、逆の太古感とが同居して、とにかく楽しかったです。まあ、私ぐらいでしょうけどね、こんな変な映画面白がるのも。

 

9 子供はわかってあげない

ほのぼのとした雰囲気で可愛らしい青春コメディとして好感の持てるものになっています。女の子も男の子もその家族たちもみんなどこかおっとりとした感じで、せかせかと生きていない感じがいいのでしょうか。そもそも男の子の実家が書道家という設定ですから、必然的にゆったりとした感じになってくるのかもしれません。幼い時に離れたままの父親を他の家族に内緒で探すという、描き方によっては重くなるテーマを、さらりとユーモアを交えて展開させているところが素敵です。そしてそれがばれてからの母親の対応も素敵。とにかくこの作品では、他人をけなしたり、責めたりということがなく、みんなが互いを互いに受け入れている感じが微笑ましいです。そして最後には二人の恋の方向性も見えてきてめでたしめでたし。上白石萌歌の真っ黒に日焼けした水泳部らしい顔色がなんといっても良かったです。

 

10 最後の決闘裁判

実話プラス「羅生門」ということですが、常に緊迫感があふれ、ボリュームも満点で見ごたえのある作品になっていました。盟友マット・デイモンとベン・アフレックが対立的な役柄でそれぞれ熱演しているというのも見どころです。決闘裁判に至るまでの出来事を、三者それぞれからの角度で描いていて、それぞれ同じ場面を描きながらも、主観によって微妙にニュアンスが変わってくるところが非常に面白かったです。特にアダム・ドライバーがマット・デイモンの妻を襲うシーン、襲われたことを妻が夫に訴えるシーン、まったく同じ場面なのですが、男側からすると自分は悪くない、女側からすると完全に被害者だという感じが出ていて、このあたりの演出は興味深かったです。最後の決闘シーンは一番緊張した場面、もし勝敗が逆になっていたら、どんな悲惨な結果になったかと思うと、この結果には正直ほっとしました。