水橋研二 出演映画 ベスト10
1 月光の囁き
水橋研二が剣道部の高校生を演じた主演作品はかなりの問題作。最初は普通の青春純愛ものかと思いきや、次第に主人公の変態性が明らかになり、そこからはSM映画へと転じていきます。彼氏を犬扱いし、彼氏は彼氏で嫌がらせにもすべて従い、きわめつけは別の男との場面を押入れで聞かせる、サドな女子高生が衝撃的です。演じたつぐみさん、魅力的な女優さんだったのですけれどね…
2 カナリア
谷村美月が素晴らしい。塩田監督は十代の女の子の描き方が上手で、女優の魅力の引き出し方が素晴らしい。この作品ではキリッとした表情の合間にみせる少女らしい可愛い笑顔が印象的でした。作品のほうも誰もが知っている事件の裏側を描き出すのですが、2時間以上の作品を飽きさせることなく力強く観客を引っ張っていきます。ロードムービーの形態をとっていますが、過去を交錯させ家族のあり方、特に親子関係のあり方を問題点として提起する一方、思春期初期におけるボーイミーツガール的な甘酸っぱさをほのめかせ、途中レズカップルなどという異質なものを挿入することで不思議なインパクトを与えています。そして万引きや援助交際といったものについては簡単に実行させない大人の視点も忘れていません。久しぶりに塩田らしい一作を観られました。水橋研二はカルト教信者の一人として出演。
3 吉祥寺の朝比奈くん
二人の作り出すほんわかとした雰囲気についつい引き込まれてしまうような、可愛らしくも優しい映画です。特に星野真里が秀逸の演技で、ゆったりとした話し方の中に見せる様々な表情がすごくリアルで、これなら、いくら子持ちの人妻だと言っても、朝日奈くんがどんどん惹かれていくのも納得なのです。のんびりとしたテンポで進んだ淡い恋の物語が、最後になって大きく展開するのですが、それでも最後は二人のキャラクターが生きた前向きな結末となり、ハッピーエンドでなくても、後味が爽やかで良かったです。
4 恋する日曜日
瑞々しいさわやかな青春映画です。メインキャストはほぼ無名のキャストで臨み、それが奏功しました。誰にでもあるような初恋の思い出、校舎に忍び込んだ思い出、そんなノスタルジーを誘い、感傷的になってきます。差し込まれたサイドストーリーがまた素敵ですし、明暗をうまく使った映像が効果的。水橋研二は指輪をやりとりするカップルの男を演じています。
5 紙風船
オムニバスとしては好きな作品。いずれも面白くなりそうなところで終わってしまうのは残念ですが、まだ続きを広げられそうな作品。個人的には特に1番目「あの星はいつ現はれるか」が好き。水橋研二は2番目の「命を弄ぶ男ふたり」で高校教師を演じています。
6 くりぃむレモン
水橋研二主演。山下敦弘監督としては、前2作とはやや趣の違った内容の題材での作品となったのですが、独特の間の使い方はここでも顕在。ともするとえげつなくなりそうな題材を、ソフトに包み込むように、青春恋愛映画として完成させていました。普通の兄妹ながら血の通わない二人の間に流れる微妙な空気をうまく表現している前半から、箍がはずれたように互いをむさぼりあう後半へのつなぎ方がなかなか巧いです。
7 つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語
そんな奔放で不安定な女を愛し続けた主人公、周りから見ればかっこ悪いけれど、彼なりの愛情の示し方と、そして最後に見せたちょっとした復讐に、少しだけ理解してあげたくなるような、そんな不思議な物語です。不思議だと思われるのは、それぞれのパートの作りかたにもあって、それぞれ直接に艶と関わりのあった男性を中心に据えるのではなく、その男性を介して間接的に繋がる女たちを軸に持ってきたこと。この独特の見せ方が、この作品の肝なのでしょう。けっして共感しやすい作品ではないですし、物語として起承転結がはっきりしている映画でもありません。ただフィクションであるにせよ、こんな生き方もあるんだなぁと、興味深く観ることはできました。行定監督は、大衆向けを意識して作っているなという時と、そうでなく好きなようにご自分の作っているなと感じる場合がありますが、今作は明らかに後者。そんな部分でも、感じ方は観る人によって特に分かれてきそうにも感じました。夫を自殺で亡くした未亡人の息子役で水橋研二は出演。
8 油断大敵
役所広司演じる刑事と柄本明演じる泥棒の不思議な腐れ縁は、芸達者の二人の掛け合いが見事で、飽きさせません。一方で妻を亡くした刑事と一人娘との関係がもうひとつの軸となっていて、幼い時に娘のためにあきらめた新しい恋のエピソードを見た後に、成長した娘が家を出て海外へ旅立つところを見ると、父親の気持ちが痛いほどに伝わってきて、せつない気持ちにもなりました。水橋研二は刑事役。
9 クリスマス・クリスマス
「ファンタジー保存協会」なる怪しい組織をメインに、中盤まではゆるゆるのコメディかと思いきや、次第に病気の少年を救うハートフルな物語へ展開し行き、最後は心温まるファンタジックな作品になっていました。設定としてはばかばかしくても、中身は意外に人情もので、ホロリとさせてくれました。倦怠期を迎えた同棲カップルが主人公なのですが、その女性側を演じる伊藤歩がとにかくチャーミング。少女役から大人の役へと移行する中で、いろいろ模索が続いている彼女ですが、今作では等身大の役柄で、とっても可愛らしく演じています。サンタクロースの姿には、思わずキュンとなってしまいました。
10 亀は意外と速く泳ぐ
笑いどころも多いのですが、全体としてはかなり荒削りな印象を持ちました。最初からこれでもか、これでもかと笑わせようとするあざとさに、最初は引き気味だったのですが、次第にそれにも慣れてきます。キャスティングからして、いかにもというキャストが要所を抑え、主役の上野樹里をサポート。中でも要潤が意外な一面を見せてくれています。瞬間瞬間に発せられるギャグは可笑しいものが沢山あり、結構楽しいのですが、肝心の本線のストーリーが尻すぼみ。わけのわからないスパイとして、何が起こるかも分からずに準備を進めるはめになる主人公スズメですが、結局最後まですっきりしないまま、「あれっ？」という間に終わってしまいました。劇中に展開される数々の出来事がとっちらかったままで終わるので後味が悪いです。水橋研二は警官役。