タイトルが「~の夏」映画 ベスト10
1 月光の夏
古いピアノをきっかけに回想される特攻隊の青年たちのエピソード。その特攻隊の青年たちにもそれぞれの思いがあり、命じられるままに行ったまま帰らなかった達も、故障で引き返してきたところ臆病だと責め続けられるものも、生きるも地獄死ぬも地獄の、隠された思いが明らかにされるのです。単なる反戦映画でも戦争回顧映画でもなく、その時代に生きた人々の、抗えない時代の産んだ苦しみがひしひしと伝わってきました。その時代を胸に秘めたまま死んでいくのか、次の世代に伝えていくのか、そういう意味では仲代達矢演じる元特攻隊員の決断は非常に重いものがあったと思います。
2 花蓮の夏
同性愛を含む複雑な三角関係は、青春時代特有の憂鬱感と重なって、繊細でせつない恋愛映画になっています。全編から伝わってくるナイーブな主人公たちの痛みがヒシヒシと伝わり、特に最後の場面は見ていてやるせないぐらい。惜しむらくはヒロインがブサであること。もう少し感情移入できるルックスの女優さんだったら、もっと痛みを感じられたかもしれません。
3 菊次郎の夏
前半母親に会うまでのシーンは展開がのろく、ややたれてしまいましたが、その後の旅人たちとのふれあいの中で、夏休みの数日間の大人と少年の心が近づいていき、そして別れの時を迎えるせつなさが良かったです。
4 姑獲鳥の夏
原作は一切知らないので映画単独での感想になるが、思ったよりオカルトチックな要素がなく、昔からある雰囲気の探偵ミステリーとしてまずは楽しめる作品になっていました。最後に説明を一気にしてしまうところは、どうやって解明したの?という謎はどうしてもこういう構成になると出てくるのですが、深いこと考えずに観れば、謎解きもそれなりに楽しめます。
5 写真甲子園 0.5秒の夏
恋愛ごとなしでのストレートな青春映画ですが、とりあげた部活動は写真部。あまりまだ内容を知られていない写真甲子園を舞台に、3日間の大会を通して、生徒たちが成長していく様子を丁寧に描き、好感度の高い作品になっています。メインの展開として2校を軸に、さまざまなトラブルに逢いながらも、自分を見つめ直し、友情を深めるのは、王道ではありますが、やはり青春映画に期待するものはこれでしょうといったところでしょう。勝者と敗者、ほろ苦い結末もまた青春。
6 異人たちとの夏
オカルト的な要素も含みながらも、亡くなった両親との再会を幻想的に描いた大林得意のファンタジー映画になっています。鶴太郎と秋吉の温かい両親がノスタルジーを誘い、一方で名取演じる謎の女のおどろおどろしさが対照的。ただそれぞれのエピソードの関連性というものがいまひとつピンとこず、まとまり感がやや不足しているようには思いました。
7 最愛の夏
17歳の少女の一夏、その周りで起きた様々な出来事によって、彼女が成長して行く様が暖かい視線で描かれている台湾映画です。
8 プロヴァンス物語 マルセルの夏
1800年代の終盤から1900年代初頭の南フランスを舞台にしたノスタルジックでのんびりしたムードの作品です。さまざまな出来後の中で、少年から大人へと、成長していく過程を優しく見守りたくなるような気持ちになりました。
9 茄子 アンダルシアの夏
中篇で自転車レースのスタートからゴールまでを追った異色のアニメ。観客もやはり大人が中心。全体として爽やかな印象が残る作品に仕上がっている。特に深い心理描写があるわけではないですが、単調にならないように家族の結婚式シーンも織り交ぜて、興味深い映画でした。
10 旅するジーンズと16歳の夏
4人の少女のひと夏の成長を描くストーリーです。それぞれが別々の場所で異なった夏休みを過ごす中で、傷つき、或いは新しいものを手に入れ、より友情を深めていくという爽やかな映画です。まずまず話もまとまっていますし、大切なものは何か、いろいろ考えさせてもくれます。誰もが経験してきたような青春時代の思い出を、少女たちの成長と合わせて眩しく描き出している甘酸っぱく描いていて、好きなタイプの映画ではあります。風景が鮮やかで、キラキラと光り輝く思い出といった味付けにぴったり。ただし、4人の描き方を均等にした分、やや内面の描き方の浅くなってしまった部分があり、さらに違和感さえ覚えることもあり、全体的に表面をなぞっているだけのような印象も残りました。