●朝鮮の南北分断を描く映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

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まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

朝鮮の南北分断を描く映画 ベスト10

 

南北朝鮮の分断という朝鮮半島ならではの

特異な事情の上成立する韓国映画の特集です。

 

1 シルミド

北朝鮮による大統領官邸襲撃未遂の報復としての金日成暗殺のミッションのもとに訓練を受ける男たちの悲劇を力強く描く作品。2時間を越す長さを全く気にさせることなく、最後まで引きつけるパワーがありました。事実を元にしているということで、南北に分断された朝鮮半島ならではの状況と、歴史と上層部の気まぐれに翻弄される特殊部隊に所属する元囚人と、それを訓練する兵士たちの熱い気持ちがぶつかり合う火花がそうさせているのでしょうか。一見善人がいざというときには自分第一になったり、逆に訓練に厳しい上官がいざというときに人間的な部分を見せたりと、閉鎖された空間にいる同じ立場の人間でも、十人十色の様々な人間性を持ち合わせていることも描かれています。とにかく主演のソル・ギョングの表情で見せる演技が素晴らしかったです。

 

 

2 国際市場で逢いましょう

これは韓国人々にとっては琴線に触れる物語であることは間違いないのでしょう。朝鮮戦争による南北分断、海外での出稼ぎ、ベトナム戦争…と国が発展する家庭での近代の歴史的出来事と、そこで生きてきた家族のドラマとが重なり、なんともいえないノスタルジーを感じるであろうことは想像に難しくありません。韓国版「三丁目の夕日」というのもうなずけます。日本人にとっての東京オリンピックや東京タワー開通、高度成長などの出来事が、韓国人にとってはそういった出来事になるのでしょう。朝鮮半島特有の事情も重要な要素となって、テレビを通しての兄妹の再会は、演技と分かっていても感動ものでした。

 

 

3 JSA

南北朝鮮の国境を挟んだ両国の兵士の友情物語も、やはり両国の対立状態のゆえに、ハッピーには終わりません。緊張感が常に存在し続ける韓国ならではの映画といえるでしょう。国の争いとは別に、人間一人一人のレベルでは何一つ憎み合うべき理由がないという哀しさ。友情物語を最初に描き、後半で謎を少しずつ明らかにしていく構成も工夫されていました。

 JSA

 

4 レッド・ファミリー

南北朝鮮の問題を韓国的目線で扱いながらも、コメディ的な味付けがされている作品になっています。韓国映画なので当然北の工作員たちが韓国の家族に感化されてくるという内容になるので、そのあたりは予定調和。へまをし、さらに南の一家に近づいていく会話を盗聴されていた彼らは、命を奪われても仕方のない状況になるわけで、そのあたりの悲哀も南から見た北の人たちの厳しさとして描かれるのも当然の成り行きといったところでしょう。北側の人々が失敗を許されてハッピーエンド、というわけにはいかないのでしょうね、南側としては。

 

 

5  The NET 網に囚われた男

なんとも皮肉な結末に声が出ませんでした。スパイ容疑としてでっち上げてまで逮捕しようとする係員、それよりも亡命させようと画策する上司、そんな勝手な彼らに対し、なんとか家族のもとに帰してあげたいと願う若い警護担当の職員。辛い拷問もしつこい説得にも、絶対に家族のもとに帰るのだという強い意思を持って、最後には北への帰還を手に入れた主人公でしたが、敵側よりも身内側にさらなる敵がいることを想像もできなかったのでしょう。生活の術である漁を禁じられると、間もなく耐えられなくなり、死を覚悟したうえでの玉砕ともいえる出漁へ。結局家族を残して死んでしまうのです。家族とともに生きるために戻ったはずの祖国で、家族とともにどころか、自らも生きることができなくなってしまったという皮肉。結果だけ見ると、亡命していた方が永らえて幸せだったのではないかと思えてきます。辛口で毒たっぷりのキム・ギドクが南北朝鮮問題を鋭く風刺したような作品でした。

 

 

6 シークレット・ミッション

朝鮮半島特有の問題をテーマにしたまさに韓国にしか作れない作品でしょう。前半は南の人々の生活に溶け込んだ、交流ドラマが中心に展開していくが、自決の命令が下ってからは急展開。結局は北からも捨てられ、南からは異端視扱いで行く場所のない3人の末路は悲しいものでした。

 

 

7 シュリ

韓国映画ブームに火をつけた作品です。作品自体はノーマルなアクション映画ではあるのですが、南北問題という韓国特有の現実的な問題が絡んでくるので、作り物の物語よりも、もしかしたらあり得るかもしれないというリアリティを含んだドラマとして訴えかけるものがあります。

 シュリ

 

8 義兄弟 SECRET REUNION

韓国が抱える問題を利用したスパイものの作品群にまた一作加わったというところですね。韓国にしか作ることのできないテーマですので、いつもながらこの国の特殊事情を考えてしまいます。作品としては、ちょっと作り過ぎかなという気もしないではありませんが、対照的な二人の俳優の個性で、それなりに面白く観ることはできました。冷静になって考えると、こんなことありかよと思ってしまいますが、そこは韓国映画。いつもの力技で抑え込まれたという印象です。

義兄弟 

 

9 工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男

実在のスパイを描いているということで、背景の出来事も実際の南北朝鮮史となっているため、驚きの出来事がリアルに感じられる作品です。当然、相手にいつばれるかというスリリングな展開がみられるのですが、加えて南北と別れていても、人の心は通じ合うものだという、南のスパイの主人公と、北の対外経済院会の所長との交流のドラマも盛り込まれ、作品的にはボリューム感のあるものになっています。金正日を演じるのがそっくりさんで、その金正日との接見シーンでは、かなりの緊張感。なんとか切り抜けると、観ている側もほっとした気持ちになります。朝鮮半島ならではの特有の緊張感のある政治事情の中、それぞれ国家を背負って活動する二人の心情は理解できますし、行動と思想が必ずしも一致しているわけではないことも、その任務を苦しくしているようで、時折切なささえ感じてしまうほど。見ごたえのある作品でした。

 

 

10 プンサンケ

朝鮮半島独特の政治状況は、映画の中で様々なドラマを生み出してきましたが、今作もそんな中の一つ。南北の国境を行き来して物や人を運ぶ謎の男、その姿だけで観ている者を惹きつけるには十分。冒頭の二度の国境越えシーンを観ただけでワクワクしたのですが、しかしそのあとは尻すぼみ。国境の行き来はなくなり、韓国国内を舞台にしたごくごく普通の工作員ものになってしまいました。さらにはメロドラマ風の要素まで入り込み、それぞれの目的がよく分からなくなってしまったような感じもあり、朝鮮半島ならではの緊張感とは別の緊張感が支配することに。もう少し硬派のポリティカル・サスペンス、或いは南北の間で孤立する主人公の哀愁を描いた人間ドラマ、そんなものを期待していると、ちょっと裏切られる思いでした。

 

 

番外 ハナ~奇跡の46日間~

南北分断ゆえのドラマではありますが、ちょっと色合いが違って、卓球界での実話を描いた作品です。こんな南北の統一がスポーツの一競技に置いて行われていたことを知り、改めてそこから進むどころか後退している現在の挑戦事情を嘆かずにはいられない気持ちになりました。女子団体で優勝という素晴らしい結果を残しているだけに、なおさらです。ベタで正攻法な演出ですが、素直に感動できる作品になっています。