●離婚映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

離婚映画 ベスト10

 

離婚調停に臨む夫婦の争い、結婚から離婚に至る夫婦の経緯等々

離婚をめぐるあれこれを描いた映画の特集。

 

1 別離

完成度の高さに感服しました。とにかくスリリングで一時も目が離せない心理ドラマが展開され、最初から引き込まれっぱなし。会話を聞いているだけで観ている方までイライラとフラストレーションがたまっていくリアルさは、前作以上に磨きがかかっています。一方でミステリー映画としてもきちんと考えられて作られ、いくつかの嘘や隠し事が複雑に絡ませながら、徐々に真実を明らかにしていく手法も見事ですし、伏線もさりげなく貼られていたりするのですよね。さらにさらに、離婚に直面した親子関係、認知症の介護といった、国を問わず多くの人々が抱えている問題もきちんと浮き彫りにしていくあざとさ。もうお見事としかいいようがありません。いやー、凄い映画監督です。

別離 

 

2 ストーリー・オブ・ラブ

ブルース・ウィリスとミシェル・ファイファーが演じる夫婦、離婚を前にして、夫婦と家族の関係をリアルに描いています。ところどころ笑いも散りばめられ、コメディの要素も多分に含んでいるので、重くならずに観られます。互いに納得して出した結論は後味も悪くなく、そんなところで救われた気もしました。

ストーリーオブラブ 

 

3 モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由 

一組の夫婦の出会いから崩壊を回想形式で追った心理ドラマです。その時その時の二人の関係性そして心理状態によって、会話も表情も変わっていく二人。自由を好み、結婚してもそこに安住せずに、自分の思うままに動き回ることで、妻を結果的に振り回してしまう夫。感情の起伏が激しく、その都度怒ったり笑ったり泣いたりしながらも、結局はどこかで夫を信じようと思い込む妻。はたから見てこの二人が長続きするはずもなく、案の定別れてしまうのですが、そこで完全に切れるのではなく、子供もいたこともあり、その後も続く不思議な関係性。リハビリ施設での様子を差し込むことで、二人の関係に疲れた主人公が次第に自分らしさを取り戻していく様子を、過去の経緯と並行して見せることで、いかに二人の関係が彼女にとって重たいものになっていたかを表してもいます。最後に息子の成長度を聞く二人の別れ際のあっさり感が、ようやく出会いの前の何もない関係に戻れたことを示し、重しがやっととれたのだと理解しました。

 

 

4 クレイマー、クレイマー

この手のテーマを描いた映画の走りのような作品です。慣れない子育てに四苦八苦するダスティン・ホフマンも悪くはないですが、キリッとした感じで強い意志を感じるメリル・ストリープの演技と存在感が際立ちます。ただし、話の方は手放しで感動する気にはなれないのは、どうもこの脚本が男性の目線から見た、男性に肩を持ったものに感じるからです。慣れない子育ての苦労も哀愁を誘い、それがゆえに職を失い、一方女は自立の道を歩んで行くのと対比すると、ますますみじめに。しかし最後は子供の愛を勝ち取り、勝気な妻は涙を流して「負けを認める」。確かに男から見ると気持ちの良い終わり方ではあっても、これが女性の目からするとどうなのだろうかという思いは感じました。

 

 

5 ウホッホ探検隊

1986年当時の家族の世相を表したような作品なのでしょう。核家族、ダブルインカム…そして夫の不貞に対し妻が我慢せずに離婚を選択する時代。結局振り回された取り返しがつかなくなるのは男の方という皮肉。

 

 

6 ローズ家の戦争

離婚戦争がエスカレートして、互いに狂気の沙汰に突入していく様が、ブラック的で次にどんな展開になるのか、なかなか面白く見られました。常識はずれだけれど、ないわけではないという加減が絶妙に描かれていたように思います。

ローズ家の戦争 

 

7 マリッジ・ストーリー

既に離婚が決定した二人。しかし離婚調停の場ではそんなにことが簡単に運ぶわけでもなく、お互いに少しでも有利な条件を引き出そうと、弁護士ともども必死になるわけで、その繊細なやりとりがリアルに描かれています。一度は愛し合って子供までもうけたふたりですが、こじれてしまった関係は、本人たちにしかわからないものもあるようです。二人で部屋の中で静かに会話を始めるシーン、次第に互いに感情が高ぶって声が大きくなり、ついには男が大声で罵ってしまい、ふと冷静に戻って自己嫌悪に陥るシーン。実に生々しいやりとりです。それでもこの作品の救いは、一人息子がどちらにつくでもなく、両親の状況を受け入れながらも、自然体で過ごしていること。離婚にハッピーエンドはないでしょうが、それでもいわゆる「円満離婚」が読み取れるラストで、後味の悪さを残さずに終わったことは良かったです。

 

 

8 お引越し

両親の離婚劇を通して成長していく一人の少女の成長を、温かく、ユーモラスに、そしてどこかシニカルな視点で描いています。なんとか元の仲に戻そうとする健気な姿と、そうはいっても現実を受け入れないという複雑な思いの中で揺れる子供の心を、田畑智子が好演しています。ただ個人的にはやや苦手意識のある相米監督ということで、相米らしい作品だけに、もうひとつ入り込めなかったのが残念です。

 

 

9 心みだれて

メリル・ストリ-プとジャック・ニコルソン演じる夫婦の結婚から離婚までを、妻の視点から追っている作品です。ありがちな夫婦の話を、個性的な二人の俳優がさりげなく演じていました。話しとしてとりたててどうという作品ではないかというところもあるのですが、それがリアリティとして伝わってきます。

心みだれて 

 

10 ふたりの5つの別れ路 

フランソワ・オゾンだけに一筋縄ではいかないであろうことは想像できましたが、やはり真正面からは語ってくれません。離婚調停にサインしたカップルを第一のシーンに、次第に時間を遡り、5つ目の出会いの場面で終わります。時間を戻っていく構成の映画は、ここ数年時折見られる手法ではありますが、この作品では特に5つのシーンとシーンの間の過程を見せることはしません。過程は問題ではないのです。「線」で見せない代わりに、離婚という結果に至った原因となるほんの小さな綻びを3つのシーンで「点」として見せることに主眼を置いています。その小さな積み重ねが、やがて離婚と言う最悪の結論に結びついていったということを語ろうとしているのです。ですから、出会ってからそれまでの恋人と別れどう結婚までに至ったか、出産から子供がいる生活にどう夫婦が関わっていったか、小さな綻びがどこでどのような形で爆発していったのか、そのような点と点を結ぶ線をほとんど無視している、そうした部分にオゾン監督のただものならぬ部分を感じるわけではあります。ただし映画としてみたとき、あまりにも想像する材料が少なすぎてフラストレーションがたまってくるような映画であることもいえます。その意味で思った以上にとっつきにくい作品でした。