●2000年代(2000~2009) 10年間鑑賞映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

2000年代(20002009) 10年間鑑賞映画 ベスト10

 

先日2010年代ベスト10をやりましたので、

今回は2000年代10年間のベスト10を。

 

1 フラガール

20061位。展開の仕方が上手く、なだらかに最後の盛り上がりにもっていくというよりは、負の要素(親子断絶・隠された身上・親友の別れ・チームの乱れ・肉親の死・先生との別れ・事業の危機など)とそれを解決するブラスの要素を交互に配し、山と谷を上手に作り上げています。ともするとあざとくなってしまいがちなところのギリギリの線で、うまく演出し、後半からは、ジーンとするシーンが次から次へと用意されています。奇を衒ったものではないので、すんなりそれを受け入れられたのかもしれません。そして松雪泰子、蒼井優、徳永えり…女優陣がとにかく素晴らしかったです。

フラガール 

 

2 インファナル・アフェア

20031位。傑作。とにかく先を全く予想させない息詰まる心理戦に、スクリーンに見入られてしまいました。それぞれの立場が常に動いている練られたストーリー、役にぴったりはまるキャスティング、2度もびっくりするクライマックスのエレベーターのシーン、そのどれもが優れています。確かに現実離れしているのかもしれないですが、ストーリー自体に強引なところはなく、くたびれたようなトニー・レオン演じる潜入警官と、清潔感のあるアンディ・ラウ演じる実はマフィアのスパイという二人の対比が、時々交わりながらも刻々と状況の変わる中で緊張感ある攻防を見せてくれました。続編2作も傑作。

 インファナル・アフェア

 

3 愛のむきだし

20091位。この長さを一気に見せる監督の力、脚本、飽きさせない構成と演出、それに見事に応えた3人の俳優、映像、そのすべてが見事に組み合わさって、傑作が出来上がりました。序盤については、多少カットできるかなと長さを感じる部分もないではないのですが、3人が一箇所に終結してからの怒涛の展開は、息をつく時間もないほどの勢いをもって、観ている私にグインと圧力をかけてきました。エロに同性愛、暴力、いかがわしい宗教と、ともすると嫌悪感や拒絶感を抱かせるような要素が満載で、これでもかこれでもかと提示してくるのですが、それらをすべて大きく包んでしまうような愛の存在の中で見事に調和して、なんともいえない魅力を産み出してくれます。こっぱずかしく、くすぐったい気持ちで画面を見られなくなるシーンがあるかと思えば、あまりもの痛々しさに正視できなくなるシーンが入れ替わりに訪れ、とにかくとても目まぐるしいのですが、その目まぐるしさにものすごい大きな力を感じたのです。満島ひかり、安藤サクラを世に送り出したという意味でも大きな作品。

愛のむきだし 

 

4 世界の中心で、愛をさけぶ

20041位。これでもかというくらい泣かせにかかる、正攻法の純愛映画。1986年という時代背景が、世代の重なる自分にとってはノスタルジーも合わさり、余計に切ない気持ちにさせられました。佐野元春や渡辺美里、ウォークマン、ザ・ベストテンなど、音楽や小道具もそのあたりをくすぐり、その世代である行定ならではの演出も心憎い。さらに森山が大沢に似ていて、こうした時間軸の違う同一人物を演じるときの難題である、誰と誰が演じるかという点もクリアしているのも良いです。そして平井堅のエンディングテーマ。いかにも作りすぎ、出来すぎのストーリーにも関わらず、べたべたのラブ・ストーリーをべたべたに徹して完成させた好作品でした。評論家の評価は高くなくても大衆には支持される、そんな作品だからこその評価でもあります。

世界の中心で愛をさけぶ 

 

5 ミスティック・リバー

20042位。暗いどんよりとした気分になってしまうドラマですが、映画としては見応えのある作品になっています。ミステリーの形をとりながらも、家族の愛・友情がどのような形で壊れ、または絆を深めて行くのか、様々な形でじっくり見せてくれます。何が正しくて何が誤りか、善が必ずしも幸せではないというところが、どんよりとしたものの原因があるのだろうが、なんともやるせない結末です。キャスティングにも注目で、普通ならば刑事がショーン・ペン、被害者の父親がティム・ロビンス、容疑者がケヴィン・ベーコンといった感じになるのでしょうが、そこを逆手にとっているところが、またイーストウッドらしいといえるのかも、当時はそんな風に思いました。

 ミスティックリバー

 

6 サマータイムマシン・ブルース

20051位。とにかく楽しいです。タイムマシーンで行ったりきたりするわけですが、ほとんどが昨日・今日を行ったりきたり。それも壊れたクーラーのリモコンを壊れる前に戻したいということから、過去を変えないために辻褄を合わせることを目的に変化し、その間に謎だった出来事の数々-河童の銅像の謎・消えたシャンプーの謎など、くだらないことばかりなのですが-が解けていくという内容。あちこちに張り巡らせた伏線がそれぞれに結ばれていきながらも、現在が変わらないように辻褄が合っていく様は、パズルを埋め合わせているような知的なゲームみたいで面白い。なんかよく考えるとこんがらがったりしてくるのですが、登場人物たちが納得してるならいいやという気になるのです。さらに、好きな女の子の子供の苗字が判明し、複雑な思いとなる主人公、そして夏休みの人気の少ないキャンパス、長い間変わらない古い町並みと、どこかノスタルジックな匂いも感じさせてくれて、充分満足。

サマータイムマシンブルース 

 

7  ALWAYS 三丁目の夕日

20052位。説明やうんちくは要らない、純粋に映画の世界に入り込めて、今の時代では忘れ去られつつある人と人の気持ちの繋がり、情の通い愛を充分に感じることができる作品です。けっして裕福な生活をしているわけではなく、文化的生活にはまだ遠い次代でも、日々の生活の中に楽しみを見つけ、精一杯楽しく暮らそうとしている人々に共感を覚えずにいられない。昭和30年代という時代はもちろん生まれていないわけで、あとから見聞きしたものしか知らないわけですが、それでも充分にノスタルジーを感じさせてくれます。気は短いけれど情に厚いお父さん、どんなときも家族を優しく見守るお母さん、悪戯だけれど元気で明るい子供たち、そしてそんな子供たちを叱るときは叱り、困ったときは助ける近所の人たち、さらにはうだつが上がらないけれど純粋な小説家、父親の借金のために恋愛も我慢して働くダンサー崩れのおかみ、などそれぞれに気持ちを入れ込んでしまうのです。そして最後も「金」より「情」を選んだ子供、実に暖かい気持ちにさせてくれる良い映画でした。キャスティング・演技・演出・美術・脚本すべてがうまく調和していました。

ALWAYS三丁目の夕日 

 

8 ゾディアック

20071位。この作品は謎解きの面白さと、それに関わる人々の苦悩をクローズアップすることで、一線を画しています。それでいて、犯行のシーンや狙われる恐怖を見せるシーンでは、巧みに緊張感を演出し、スリリングな場面もきちんと押さえています。それも、最近多くあるような、生々しい瞬間をこれでもかというように見せることで目を背けさせるというような方法ではなく、その瞬間までジリジリと恐怖が忍び寄るような、「早く済ましてくれー」と言いたくなるような、そんなスリルを上手に作り出しているのです。ですから、結果的になにごともなく終わった場面においても、ドキドキ感がたまらないのです。ただし、それらの場面は映画全体においてはそれほど多くを占めるわけではありません。犯人探し、証拠探しの部分に多くの時間が割かれていますので、集中力が切れてしまったりすると、単調で退屈に感じられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それがかえって知的な雰囲気を生み出し、ただ必要以上の大げさな演出でドタバタしている近頃のサイコ映画に辟易している身にとっては、新鮮な感じさえ受けたのです。

 ゾディアック

 

9 ウォーターボーイズ

20011位。楽しくて感動的な青春映画の快作。ダメ部員の情けなさぶりで笑いを引っ張っておいて,クライマックスでは見事なシンクロの演技。音楽も踊りも楽しくて,みんなが楽しそう。5人のキャラクターが抜群。同性愛の相手の勘違いや、アフロヘアが燃えるシーン、水族館での案内、テレビで紹介されるシーンなど笑い所は充分。竹中や眞鍋の存在は、ちょっと嘘っぽくさせてしまっているところはあるものの、受験・部活という普通の高校生らしいものがたくさん出てきて,懐かしい感じさえ覚えてしまいます。最後は,一つのことに夢中になって結果を出すということの素晴らしさを再認識させられ、すがすがしい気分に。平山綾も表情が良い。5人のキャスティングが成功した大きな要素でもありました。

 ウォーターボーイズ

 

10 この素晴らしき世界

第二次世界大戦時の迫害されるユダヤ人との交流を描いた映画は、当然後味の悪い作品も多いのですが、この作品は清清しい「良かったなぁ」という気持ちで映画館を出られます。戦争批判よりも、逞しくお互いに助け合いながら生き延びていく人々の強さと優しさを描くことに主眼を置いているためであるでしょう。嘘も方便、まさにその言葉どおりで、結局皆が助けられ助けて過酷な時代を乗り切るのです。ユダヤ人がやっかいだったはずが、戦局が代わると、ユダヤ人がいたおかげで助けられるという皮肉。強姦までしようとした男に助けられ、そしたて助ける皮肉。しかもそれもこれも皆生きぬくために結束してしたこと。素晴らしい人間賛歌です。そしてなんといってもマリエを演じるアンナ・シェシェコヴァ-のチャーミングなこと。美人で優しく夫を愛する妻を実に魅力的に演じていました。

この素晴らしき世界