●2010年代 10年間鑑賞映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

2010年代映画 10年間ベスト10

 

さて2010年代が終わったということで、

この10年間のランキングを作ってみました。

時間が経って思い返していることもあり、

それぞれの年に作成したランキングとは

多少順番が変わってくることもあるかもしれませんが、

今の時点でということでの順位付けとなります。

 

1 八日目の蝉

20111位。親子の繋がりとはいったい何なのだろうか、そんなことを改めて考えさせられる作品でした。血の繋がりがあっても母親らしいことを何もしてあげられない女、自分の産んだ子供でなくてもそれ以上に深い愛情を全力で注いだ女、そしてそんな二人の母親の想いを売れながらいざ自分が母親として何をしてあげられるのか分からない女。しかしその背景にある不幸な出来事がより構図を複雑化しているわけで、いったい誰が加害者で誰が被害者なのか、それぞれの胸の内を思うとせつなくてとてもやりきれなくなりました。映画として、観ている者の心を揺さぶる力の強さを感じました。良い出来だったと思います。キャストについても、華がありながらもきちんと演技のできる俳優を配してあり、そのあたりにも作り手の姿勢を感じ取ることが出来ました。中でも小池栄子が素晴らしく、ここ数年の評価は伊達ではないこときちんと証明したのではないでしょうか。

 八日目の蝉

 

2 この世界の片隅に

20161位。戦争前に営まれていた庶民の普通の日常から、次第に戦時色が現れ始め、やがてはそれが激しく多くの人々の命を失うほどになった末、戦争は終り、それでも人々は生活を続けていかなければならないというように、戦争の前と後ろを順に描いていくことで、戦争が人々の日常にどのように入り込んでいったのかを丁寧に描くことに成功しました。西瓜を食べたり、絵を描いたり、おばあちゃんのうちに遊びに行ったり、普通に行っていたことがすべて奪われてしまう戦争。序盤は戦争前の庶民の生活を淡々と描いていて、そこにある楽しみや人との交流に、昭和初期の日本人の生活が描かれていて、郷愁を誘う映像が優しく流れ、その中でも親の決めた結婚に従わなければならない当時の女性の生き方も入れ込んだりと、本当に静かな展開。しかし戦争の色が次第に色濃くなっていくとともに、西瓜も作れない、絵も自由に描けない、外も安心して歩けないという状態に。ようやく終戦を迎えたかと思っても、すぐに元通りになるわけでもなし。日本に暮らす普通の人々から見た戦争というものを描き出すことで、そこに改めて戦争というものに対する思いを入れ込んだ反戦映画としては、非常に優れた作品になったのではないでしょう。

この世界の片隅に 

 

3 別離

20121位。完成度の高さに感服しました。とにかくスリリングで一時も目が離せない心理ドラマが展開され、最初から引き込まれっぱなし。会話を聞いているだけで観ている方までイライラとフラストレーションがたまっていくリアルさは、前作以上に磨きがかかっています。一方でミステリー映画としてもきちんと考えられて作られ、いくつかの嘘や隠し事が複雑に絡ませながら、徐々に真実を明らかにしていく手法も見事ですし、伏線もさりげなく貼られていたりするのですよね。さらにさらに、離婚に直面した親子関係、認知症の介護といった、国を問わず多くの人々が抱えている問題もきちんと浮き彫りにしていくあざとさ。もうお見事としかいいようがありません。改めて凄い映画監督です。

別離 

 

4 幕が上がる

20151位。正々堂々と直球勝負でアイドル映画を作りあげようとしたことで、それを大きく超えるキラキラして素敵な青春映画に仕上がったという感じです。人気アイドルにセリフを言わせて、とりあえずストーリーにはめてみましたというやっつけ仕事ではなく、きちんと準備をして、そして手を抜かずに撮り上げたということが十分に伝わってきます。彼女たちの演技も、本格的な映画が初めてということにしてはちゃんとしていて、これなら見せられるというレベルにまで高めて望んでいますし、その彼女らを支える黒木華の演技がまた素晴らしいので、アイドル映画にありがちな安っぽさを完全に払しょくしています。ストーリーも演劇部の活動一本に絞り、青春物語としては恋だの愛だのという要素をまったく排除している潔さも、結果的に奏功したのではないでしょうか。映像面でもいろいろ工夫が観られ、最初から最後まで惹きつけられっぱなし。

幕が上がる 

 

5 ゴーン・ガール

20141位。とんでもないこの上ない悪女の悪行をヒリヒリとするような緊張感の中で描き切ったデヴィッド・フィンチャーの巧みな演出と構成。得意の分野になるとは思いますが、最後まで目が離せずとにかくスクリーンに釘付けでした。面白かったです。マスコミに囲まれた中で上げられたり下げられたりする主人公、さらには警察にも被害者扱いから加害者扱い、そしてまた被害者になったりと、周りに翻弄つれ続けるのですが、それでも精神バランスを崩して狂気に走ったりしない、いい意味での鈍さはベン・アフレックがぴったりとはまります。そしてすべての元凶である妻を演じるロザムンド・パイクもまたはまり役。夫をはめるつもりの予定が思わぬ横槍に会い方向転換、さらにそこで頼った男がとても自分の支配下に置けるような人間でないと判断すると、さらに計画の練り直し。まだましな夫を使って身の安全を確保。そんな妻をとんでもない悪女と認識しながらも、これまた逃げられないように仕向けられる夫。さんざん振り回された挙句に、結局は妻の思うままに転がされ続けなければならない人生。最後はゾクッとしました。

 ゴーンガール

 

6 イエスタデイ

20191位。設定で興味をひくことに成功し、そのあともコメディとしてもラブ・ファンタジーとしても楽しめ、なおかつ有名なビートルズの曲が次から次へと流れ、お腹いっぱいまで楽しめるそんな作品でした。ビートルズに対して特に思い入れのある者でなくても、ついついひき込まれてしまいます。なんといっても主人公とそのマネージャーの、観ていてじれったくなるような関係性がとってもキュート。それはリリー・ジェームズがこのヒロインをとても魅力的に演じているということに大きく因る部分はあるのですが、お互いの相手を好きな気持ちは観ている側からはひしひしと伝わってくるにもかかわらず、当人はそれを上手に伝えられないうちに、すれ違っていくというもどかしさがたまらなかったです。その一方で、他人の作った曲でスターダムを上がっていこうとする主人公の罪悪感、そしていつばれるのかという恐怖も手に取るように伝わり、まさに主人公になりきった気持ちで映画を観ていました。またビートルズ以外にも、コカ・コーラだったり、たばこなんかもこの世から消えていて、そのあたりのくすぐりも上手で、それらを伏線に最後でオチをつけるあたりも面白かったです。

 

 

7 ももいろそらを

20131位。池田愛演じる主人公いづみが非常に魅力的ですし、周りの人物たちもキャラクターが経っていて、作品に引き込まれてしまいました。このいづみちゃん、言葉は汚いし、年上のおじさんに対しても高圧的、いつも一緒にいる友人たちにも常に不機嫌で喧嘩腰、学校はさぼる、お金は抜き取るで、およそ「いい子」とはかけ離れた存在。いまどきの女子高生は…なんてついつい言ってしまいたくなるような女の子なのです。でも逆にそれだからこそ、ここぞという時に見せる思いやりが心に響いてくるのですよね。友人にダブルのショックを与えないための一芝居もそうですし、ラストのシーンもそうです。それに怒ったり、笑ったり、困ったりといった表情の変化が素晴らしい!さらには、女子高生の日常の何の意味もない会話のやり取りがまたリアルで、今この時間に女子高生として過ごしている彼女たちの「生」が感じられました。話の展開としても、めぐりめぐって返ってくる運命的な連鎖に、おもわずニヤリ。モノクロの映像によって、どこかピーンと張りつめたような空気感が常に漂い、一味違う青春映画になっていたと思います。よく出来た作品でした。

 

 

8 世界でいちばん長い写真

20181位。クライマックスのシーン、パノラマ写真が13周も回りながら、全校生徒や関係者のパフォーマンスを撮影していく場面は圧巻です。その間に唐突なプロポーズがあったり、写真に写らない撮影者である主人公の姿も残そうと、鏡を取りに走る女性部長の姿といい、引っ込み思案だった主人公が大声で全校生徒に支持する姿だったり、とにかく高校生活のハイライトの一つである文化祭のそのなかでもハイライトとなる時間で一気に盛り上がる構成は見事です。そして宴の後の余韻を引っ張ったまま4年後のシーンに戻るという流れも素晴らしく、青春映画のキラキラも憂鬱もひっくるめて文化部高校生のリアルを感じることができました。引っ込み思案でやや暗い主人公の高校生男子を演じる高杉真宙、対照的に気が強くはっきりと意見を言う写真部の女性部長を演じる松本穂香、けっして恋愛関係にはない二人ですが、二人とも魅力手なキャラクターになっていて、ついつい引き込まれていきます。年上のいとこ役の武田梨奈も存在感を示し、それぞれが素晴らしい演技をしていました。そしてエンドロール中に撮影した写真がバックに流れるということで、最後の最後まで抜かりない仕掛けで、完全にこの青春映画にやられてしまいました。とても良かったです。

 

 

9 君が踊る、夏

20101位。メインキャストを支える周囲の絡め方のバランスが良く、非常に人どうしの繋がりを感じる作品になっていたと思います。地方を舞台にしていることが、そこに大きく生かされていたのではないでしょうか。またその脇役のキャラクター付けも良かったですね。そしてメインとなる二人ですが、溝端君は誰が見ても正統派のイケメン俳優なので、作品でのキャラクターもそれに沿ったもの。対してその相手役に抜擢された木南晴夏は、「20世紀少年」で気にはなっていましたが、これだけ出番の多い役はやはり「抜擢」といっていいでしょう。結果からすると、この役に合っていて正解だったと思います。自分のことよりもまず人のことを考え、さらに主人公のことを密かに思い続ける一途さ・健気さというものは、いかにも女優然とした女優さんでは無理でしょう。なんといっても表情の豊かさが魅力的で、香織役にはぴったり、観ていて思わずキュンとしてしまいました。演出的にはところどころ、やりすぎだろうと思う部分もありましたが、それ以上に人々の優しさが心地よく、非常に好感の持てる作品で気に入りました。

 君が踊る夏

 

10 あの頃、君を追いかけた

20132位。お互いに相手に気持ちがあるのにもかかわらず、すれ違っていく二人。ここぞというところで自信が持てない男、相手からの告白を待っているものの自分からは踏み込めない女。観ている側からすると、二人の気持ちはあちらこちらに明確に表れているのに、進んでいかない関係がもどかしくて仕方ありません。その不器用なゆえに生まれてくる切なさには、おもわずキュンキュンしてしまいました。最終盤でそんな恋する気持ちが現れたシーンを改めて切り取って編集していますが、そこだけ切り取って見せられると、あーそれなのにそれなのにと、自分がコーチンになった気持ちで後悔の念でいっぱいになってしまいます。まだ携帯電話もメールもないころに始まった恋、途中から携帯電話が登場し、そんなところにも月日の長さを感じさせられます。主演の二人も可愛らしく、魅力的な作品でした。のちに日本でも齋藤飛鳥主演でリメイクされています。

あの頃君を追いかけた