●2019年 鑑賞映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

2019年 鑑賞映画 ベスト10

 

年末年始の恒例、

2010年代最後の年のベスト10です。

 

1 イエスタデイ

設定で興味をひくことに成功し、そのあともコメディとしてもラブ・ファンタジーとしても楽しめ、なおかつ有名なビートルズの曲が次から次へと流れ、お腹いっぱいまで楽しめるそんな作品でした。ビートルズに対して特に思い入れのある者でなくても、ついついひき込まれてしまいます。なんといっても主人公とそのマネージャーの、観ていてじれったくなるような関係性がとってもキュート。それはリリー・ジェームズがこのヒロインをとても魅力的に演じているということに大きく因る部分はあるのですが、お互いの相手を好きな気持ちは観ている側からはひしひしと伝わってくるにもかかわらず、当人はそれを上手に伝えられないうちに、すれ違っていくというもどかしさがたまらなかったです。その一方で、他人の作った曲でスターダムを上がっていこうとする主人公の罪悪感、そしていつばれるのかという恐怖も手に取るように伝わり、まさに主人公になりきった気持ちで映画を観ていました。またビートルズ以外にも、コカ・コーラだったり、たばこなんかもこの世から消えていて、そのあたりのくすぐりも上手で、それらを伏線に最後にハリー・ポッターでオチをつけるあたりも面白かったです。

 

 

2 芳華 Youth

戦争という時代の中で、戦地に慰問などを行う文芸工作団に所属する若い男女の青春模様は、その戦争というものがよりドラマティックに演出しているようです。それぞれ抱えている背景も違う団員達、家庭内でいじめられ、逃げるようにやってきたものもいれば、裕福な家庭の出の者も、権力者の子供もいる中、いじめや秘めた恋愛、友情、嫉妬…当然こういったものが繰り広げられます。そして戦争の激化が彼ら彼女らを前線に送り込み、あるものは右腕を失くし、ある者は精神を病んでしまい、そして終戦とともに工作団は解散し、団員たちは散り散りに次の道へ進んでいくのです。純粋に人を好きになることも制限される中で、それを理解できないゆえの行動がまた人を傷つけることになったりと、観ていてせつなくやるせない気持ちにさせられることもしばしば。終盤にはその後の彼らを人生をも映し出し、もし戦争のない時代に彼らが出会っていたらと想像させるような形で、落ち着くところに落ち着いたという印象でした。戦争という束縛された時代背景が狂わせた青春模様、その中でも苦しみ悩みそして生きた若者たちの姿を映し出す、ノスタルジックな感傷を与える作品でした。

 

 

3 バジュランギおじさんと、小さな迷子

国同士は敵対し合っているインドとパキスタンの領国ですが、人の愛はどこも一緒。名誉も金も関係なく、ただただ親とはぐれて困っている口のきけない少女を家へ届けるためだけに、命の危険も顧みずに、国境を越えていくお人好しの主人公に、次第に周りが共感し、協力者を増やしながらも、目的を達成する様子が素敵です。そして女の子がまた可愛いこと。あまりに馬鹿正直に答えて損ばかりしている主人公に対し、一生懸命首を振って、嘘でうまく乗り切るように促すのですが、それが通じない主人公。それをみてその都度がっかりする表情がなんとも可愛いのです。そして婚約者や新聞記者、警官も結局彼の味方になって最後は応援してくれるのですよね。最後に女の子が声を発して、自分の存在に気づかせようとするシーンは感動もの。まったく長さを感じさせない愛らしい作品でした。

 

 

4 七つの会議

とにかく濃く熱い2時間でした。作品自体も企業の不正をテーマに、売上のために偽装を行い、そしてばれたら隠蔽しようとする組織に対し、独り立ち向かう主人公を描き、観ている側を引き込みやすい善悪の構図にすることで、ぐいぐいと引っ張っていきます。そしてその熱い内容に負けないのが、出演者たちの濃厚な演技。野村萬斎をはじめ、香川照之、鹿賀丈史、片岡愛之助、岡田浩暉、北王路欣也…と、とにかくお互いに濃厚同士がぶつかることで、誰かが浮くこともなく、同じ土俵で対峙しているのがいいです。顔芸ともいわれているようですが、とにかく感情むき出しの表情を、顔の筋肉を最大限に動かしてアップに応じているのが、とにかく印象的です。ストーリー的には池井戸潤らしい企業物語。出世争いという企業の中の男同士の確執もひとつの背景に織り込みながら、会社の中では紅一点朝倉あきと及川光博が、ややこの面々の中では色合いの番う役柄を演じることで、ひとつの緩衝材のような役割になっていて、ほっとさせてくれるようなところもきちんと押さえています。とにかく見どころ十分の作品でした。

 

 

5 ホテル・ムンバイ

冒頭にそのテロリストたちがタクシーに乗り込み、駅で銃を乱射するシーンから始まり、最後の最後まで一瞬たりとも息をつく暇さえなかった怒涛の展開ですが、これが実際の悲劇であるから、これ以上に恐ろしいものはそうはないでしょう。この場に居合わせた人の恐怖は、想像を絶するものだったでしょう。ホテルの客、ホテルの従業員、地元の警察官、そしてテロリスト。それだれの立場で集まってきたホテルの中で繰り広げられる凄惨な殺戮劇、フィクションであればメインキャストは困難の末なんとか生き延びるのでしょうが、事実は容赦がないです。ロシアのVIPであろうと、幼い赤ん坊をもつお父さんであっても、重傷を負った恋人と離れてしまった女性であっても、一瞬の間に命を奪われてしまうのです。その中で生まれたばかりの赤ちゃんの子守の女性が最後まで耐え抜き、母親と再会した場面は、この映画の中で最も心が救われたシーンでした。見せる映画としてはスリリングでスピード感は抜群、ホテルマンたちのプロ意識というものも十分に見せつけられ、あとはこのテーマですから、テロという行為に対する何らかの意思表示が示されていたら、作品に深みが加わったようには感じました。

 

 

6 あなたの名前を呼べたなら

インド特有の身分制度にも阻まれた秘めた恋心が繊細に描かれていた素敵な作品です。結婚が中止になったばかりの大会社の御曹司と田舎の村の出身の未亡人のメイド。最初は単なるご主人様とメイドの関係だったのが、少しずつ少しずつお互いの気持ちに別のものが芽生えていく様子が丁寧にリアルに描かれていました。出身の違い、職業の違い、未亡人であること、そういった現実を謙虚に受け止めながらも、人生に対しては卑屈にならず、デザイナーになる夢を持ち続けている家族思いのヒロインのキャラクターが素敵で、これなら男性が惹かれるのも無理がないでいしょう。祭りのあとに二人でエレベーターに乗って部屋に戻る間の沈黙がなんともいえず切ない気持ちにさせられます。一時の男側の積極的な行動に心が揺れるのを必死で抑えようとする姿もいじらしかったです。ヒロインが選んだ選択も彼女らしかったですし、そのあとの男側の行動もまた粋で、それを受けてのラストの言葉。邦題はやや説明過多で、原題の“SIR”だけの方が味わいのあるタイトルになったとも感じました。

 

 

7 さよならくちびる

3人の関係がぎこちなくなっているのはわかるのですが、その理由がわからないまま、解散に向けたライブハウスツアーが進んでいきます。ライブ以外の行動は3人バラバラ、笑顔も見せない。とにかく空気の悪さだけはピリピリと伝わってくるのです。二人が組んだ頃の回想シーンを観ると、どうしてこんなにこじれてしまっているのか、謎が深まります。しかし中盤以降、次第に3人の複雑な思いが少しずつ明らかになるに従い、それぞれのかかえる切ない思いも感じられるようになり、男女3人という難しさがクローズアップされるのですが、それでも彼女たちの音楽を好きで集まったファンたちの中でのラストライブのシーンは、なぜか観ている側も、彼女たちと音楽というものを通して過ごした日々が懐かしいような気持ちになってしまいました。そのように作品全体が青春時代の想い出を振り返っているようなそんな雰囲気を持っているようでした。

 

 

8 愛がなんだ

本当にダメダメな男女ばかりなのですが、そのダメさがほっとけなくて、なんとか応援したくなっちゃいました。特に岸井ゆきの演じる主人公は、男にとっては都合のいい女で、それに気づきながらも、好きさのあまりに自分の中で納得させてずるずると振り回され続けるのですが、それがいじらしいのです。そのいじらしさは、岸井ゆきのの演技によるところが大きいのでしょうが、だめだめであるほど彼女が可愛らしく見えてしまうのです。その好きな相手に振り回される構図が、この作品では他にもあって、計3組の男女が似たような状況にあるから、まあ結局人のことは客観的に見えても、自分のこととなると、みんなダメになってしまうのでしょうね。江口のりこ演じるたばこプカプカの、観ていていかにも痛そうな女性に振り回されるマモルくんを観ていると、特にそう思いました。そんなだめだめ恋愛にはまってしまう彼女たちですが、そこが人間らしくて、この映画を好きになりました。

 

 

9 青の帰り道

楽しかった青春時代も終わりを迎え、仲良しグループ男女七人も、それぞれがそれぞれの道を歩き始める中、理想と現実の狭間でもがき、悩み、さまよう姿を描いた青春群像ドラマです。早々と家庭を持つ者、夢に向かって進みだす者、どこにも進めずに立ち止まってしまう者、どれも別の人生のはずなのに、周りと比べてはまた焦ったり、迷ったり。いつもお世話になっております。いつまでも仲良しでいられるはずもなく、進んでいるものにとっては、毎日が自分のことで精いっぱい。一方で前に進めずに止まっている者にとっては、新しい世界がない分、いつまでも昔の仲良したちに寄りかかってしまう。そんな思いのすれ違いから悲劇は起こり、その悲劇を引きずることで、進んでいた者も後戻りを余儀なくされたり。残された若者たちがそんな中でもなんとか生きていこうという繊細な姿を丁寧に描く中で、改めて生きるということは簡単ではなく、みんなそれぞれの人生を一生懸命生きているんだ、そんなことを改めて認識させられたような作品でした。

 

 

10 あの日のオルガン

正しいことをしているのかとの葛藤を抱えながらも、保育所の子供たちを親元から話して、埼玉県の田舎で疎開保育園を始めた保母たち。逃げ出すもの、地元の男性とあらぬ噂を立てられて帰らざるを得なくなったもの、自信を無くして落ち込むもの…そんな中でも東京では戦火が激しくなり、子供たちや保母の中にも家族を失うものが現れ、それを子供に伝えるのも保母たちの辛い仕事になるわけです。終わらない戦争の中で、生活も厳しい中、未来を支える子供たちのために使命感をもって子供たちを預かる主人公の張り詰めた気持ちがひしひしと伝わってきます。一方で子供たちに好かれ愛されながらも、一方では日々先輩から怒られ続ける新米保母。仲良しの同僚を亡くしたショックを乗り越え、子供たちにみせる笑顔は、こんな時代だからこそ、癒しになったのでしょう。それぞれの立場で子供たちと向き合って、預かった命を守り切った彼女たちの姿には、心の中で拍手を送りたい気持ちになりました。