●2018年 鑑賞映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

2018年 鑑賞映画 ベスト10

 

年末年始恒例の年間ベスト10.

2018年は私にとってはやや低調。

これといった作品がなく、結構悩んでのベスト10

特に欧米映画にピンとくる作品があまりなくて、

日本映画6本、韓国映画2本、インド映画2本という異例の結果に。

 

 

1 世界でいちばん長い写真

クライマックスのシーン、パノラマ写真が13周も回りながら、全校生徒や関係者のパフォーマンスを撮影していく場面は圧巻です。その間に唐突なプロポーズがあったり、写真に写らない撮影者である主人公の姿も残そうと、鏡を取りに走る女性部長の姿といい、引っ込み思案だった主人公が大声で全校生徒に支持する姿だったり、とにかく高校生活のハイライトの一つである文化祭のそのなかでもハイライトとなる時間で一気に盛り上がる構成は見事です。そして宴の後の余韻を引っ張ったまま4年後のシーンに戻るという流れも素晴らしく、青春映画のキラキラも憂鬱もひっくるめて文化部高校生のリアルを感じることができました。引っ込み思案でやや暗い主人公の高校生男子を演じる高杉真宙、対照的に気が強くはっきりと意見を言う写真部の女性部長を演じる松本穂香、けっして恋愛関係にはない二人ですが、二人とも魅力手なキャラクターになっていて、ついつい引き込まれていきます。年上のいとこ役の武田梨奈も存在感を示し、それぞれが素晴らしい演技をしていました。そしてエンドロール中に撮影した写真がバックに流れるということで、最後の最後まで抜かりない仕掛けで、完全にこの青春映画にやられてしまいました。とても良かったです。

 

 

2 カメラを止めるな!

なるほど話題になっている理由もよく分かる面白い映画でした。有名俳優が一切出ていなくても、脚本と編集でいかにも魅力的な作品を作り上げることができるということを証明してくれました。3部構成のような形で、まずは出来上がった作品を通しで見せ、その次にこの作品を作るに至るまでの経緯を説明し、最後にメイキングのような形で、作品の撮影の裏側を見せることで、なるほどとうならせるわけです。言われてみれば、最初のドラマの中でなんか変な空気になったり、おかしな映像だったりがあったわけですが、一見ではこれも演出かと思わせられて、それほど気にも留めませんでした。ところがこんな裏側があったわけなのですね。普通は作品が出来上がるまでのドタバタや障壁を次から次へと見せておいて、そんな困難な中でもなんとか作品を仕上げましたよと、最後に成果を見せるのが常套なのでしょうが、成果を見せておいてからその説明をするというひねった切り口に、一本とられたなという思いでした。

 

 

3 恋は雨上がりのように

さわやかで素敵な作品です。高校生の恋の相手が40代半ばのバツイチおじさんということで、おじさん目線でも共感できる点で、近年多い高校生の恋愛映画群とは一線を画した味わいが良いです。アキレスけん断裂というけがをきっかけに、陸上部から離れ、アルバイトに励む中で、そこの28歳も上の店長に恋をしてしまう主人公。17歳と45歳という差が現実的かどうかはさておいて、いろいろなことを諦めかけていた45歳にも勇気と希望を与えたことには違いなく、そういった意味でも若さはやはり強いと思わざるをえないのです。45歳の店長が戸惑いながらも、理性をなくすことなく、大人らしい方法で女子高生によい道へ進めるよう促す姿には好感も持てました。ただ陸上部の女子生徒があまりにも可愛い子が揃いすぎていて、その点はやはり映画だなとは思いました。

 

 

4 孤狼の血

警察やくざの間の微妙なバランスの中での綱渡りの攻防。命を削り、法的に一線を超えながらも、堅気の人間が巻き込まれないようにということを第一に、無用な抗争を阻止しようとするベテラン刑事。その刑事の常軌を逸した行動に、スパイとして送り込まれた大卒の若手刑事の正義感との間での葛藤。やくざ同士の抗争だけでなく、警察内部での護身のための駆け引きや、警察とやくざの間でのギリギリの交渉。緊張感のある中でさまざまなドラマが織り込まれ、見どころの多い作品となっています。そこに作品の中で一つのオアシス的な役割を果たした果たす阿部純子の存在に、安らぎを覚えるのですが、これもラストシーンで裏切られるわけで、そういう意味では仕掛けにも凝った作品になっています。ただ乱暴な抗争が繰り広げられるだけでなく、そこに係る内面も描き出したという意味で、他のやくざ映画と死はまた一味違った作品になっていました。

 

 

5 沈黙、愛

娘を思うゆえの父親の愛。けっして正義といえることではないのですが、何のよりも親の子を思う気持ちは優先されるほど深く厚いということなのでしょう。父親の婚約者の死から始まる殺人事件の裁判は、意外な方向へ進んでいき、緊張感が増していきます。熱烈なファンや父親の側近など、関係者も広がりを見せていく中、何が真実なのか次第に見えなくなっていく展開。そこから真犯人が映像によって明かされ、事件は落着したかと思われましたが、さらにそこからもうひとひねりあったのです。展開も早く、ひと時も目が離せません。ひとつのミステリーとしても面白かったですし、さらに理屈を超えた親の愛情を描いたドラマとしても見応えのある作品でした。チェ・ミンシクが重厚感ある演技で、作品全体が重みを感じられるものになっていたと思います。

 

 

6 1987、ある闘いの真実

実話の力は思いですし、それを作品としても力強い作品にしたのはさすがです。登場人物が多く、新しい人物が登場するたびに字幕で人物の肩書と名前が表示されますが、その泥臭い感じがまた実直な印象を与えて、より社会派っぽい雰囲気を強くしていました。権力側の人間、権力に仕えながら裏切られた人間、権力側にいながらも疑問を抱いて影で行動に移す人間、権力に反発的な人間、無関心のはずがその中に巻き込まれていく人間…それぞれの人物がそれぞれの立場でとる行動や発する言動が、後になってより重く響いてくるその出来事の成り行きが、ずしんときます。権力の中にいると見えなくなってくることもあるのでしょう。光州事件も合わせ、こうした大きな出来事の積み重ねが、韓国を近代的な国家に成長させていったのでしょう、そんな思いに駆られながらの鑑賞となりました。作品としても目が離せず、社会派サスペンスとしても一級の作品でした。

 

 

7 バーフバリ 王の凱旋

とにかくスケール感の大きさには圧倒されました。インド版時代絵巻的な大いなる復讐劇、敵討ちが繰り広げられ、観ているだけでお腹がいっぱいといった感覚でした。ある王国における王位継承に関係したまさに骨肉の争い。血の繋がった弟であったり、息子でうるバーフバリを惜しげもなく殺してしまおうとする一家。それだけでも恐ろしいことなのですが、生まれたばかりの赤ちゃんまでも殺めようとする残酷さ。しかしこの手の親の復讐ものでは、必ず子供はひっそりと離れたところで成長して大人にならなければならないもので、この作品もそんな定跡どおりの物語を進めていくわけです。最後の両軍の闘いの場面は、アクロバット的なアクションも多く、CGなしには考えられないシーンとなり、やや興ざめの部分もありましたが、やはり最後は正義の英雄が勝利を収めるということで、スカッと留飲を下げたところで完。見ごたえのある作品は天晴れでした。

 

 

8 パッドマン 5億人の女性を救った男

実話をベースにした話だけに説得力があります。妻が病気になることが心配で始めた清潔で安価なナプキンづくり。男がナプキンなんてという批判や抽象により、妻にも妹にも逃げられながらも、とにかく人のためになりたいと研究をつづけ、そこに協力者が現れたことで、ついに目的を成し遂げます。金儲けでなく、そもそもは妻のためにという一途な主人公の思い、熱意が伝わってきて、観ていてとても応援したくなるような作品でした。そこに協力してくれた女性とのほのかな恋心も絡め、最後はちょっとせつない別れがあったりと、2時間超の時間を飽きることがありませんでした。圧巻は国連でのスピーチシーン。かなりの尺をとっての、英語でのスピーチシーンはウィットに富んで、彼の人柄が十分に表れたものでした。

 

 

9 空飛ぶタイヤ

さすが池井戸潤だけに、骨太で見ごたえのある作品になっていました。登場人物が多く、キャストもなかなかの豪華メンバーにもかかわらず、きっちりと分かりやすい構成で、すんなりついていくことができます。架空の話ではありながらも、実際に起きた事件でないかと思われるリアリティもあり、ぐいぐいと引き込まれていきました。遺族、銀行、従業員、家族と責められる中、一瞬お金に揺らぎながらも、結局は最後まで信念を通し続け、巨大な力に抗い続けた主人公の姿は実にかっこいい。社長に最後までついていくと言って転職を断った若者たちの姿もまた感動もの。そこに内部から告発しようと左遷されたり不当な扱いをされながらも尽力した少数の社員、安易に融資を行わなかったグループ銀行の担当職員の意思も加わって、リコール隠しを続けたきた巨大な力が倒れ始めたことは、観ていてそう快感さえ持ちました。それを盛り上げたのが、いかにも悪そうな常務を演じた岸部一徳。面白かったです。

 

 

10 検察側の罪人

確かにラストにはもやもや感は残るものの、作品全体としては見ごたえがあり、ぐいぐいと最初から最後まで引き付けられっぱなしでした。理想や正義も長く同じ組織にいるうちに、自分の中で形を変えてしまうということが、警察・検察の犯罪に繋がっているということを、若手や潜入記者の目を通して、いったい何が正義なのか、改めて問うています。法の下において犯罪を罰すという正義が、いつの間にか別の事件で罰しきれなかった犯人への無念さを晴らすための手段にすり替えられていくことに、長く組織に属してきた本人にはもう気づかなくなっている怖さ。木村拓哉と二宮和也との会話のやりとりには緊張感があり、その正義とは何かという応酬も、作品を大いに盛り立てていました。松倉を演じた酒向芳がまた本当に気味悪い容貌・言動で存在感が抜群。面白かったです。ただ最後だけは、やはり犯した罪の償いも何も明確にならずじまいということで、敢えての後味の悪さがなんともいえなかったです。