●山崎貴 監督映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

山崎貴 監督映画 ベスト10

 

ここのところ大作を任せられることの多い山崎監督。

新作を出すたびにヒットといった感じですね。

 

1 ALWAYS 三丁目の夕日

説明やうんちくは要らない、純粋に映画の世界に入り込めて、今の時代では忘れ去られつつある人と人の気持ちの繋がり、情の通い愛を充分に感じることができる作品です。けっして裕福な生活をしているわけではなく、文化的生活にはまだ遠い次代でも、日々の生活の中に楽しみを見つけ、精一杯楽しく暮らそうとしている人々に共感を覚えずにいられない。昭和30年代という時代はもちろん生まれていないわけで、あとから見聞きしたものしか知らないわけですが、それでも充分にノスタルジーを感じさせてくれます。気は短いけれど情に厚いお父さん、どんなときも家族を優しく見守るお母さん、悪戯だけれど元気で明るい子供たち、そしてそんな子供たちを叱るときは叱り、困ったときは助ける近所の人たち、さらにはうだつが上がらないけれど純粋な小説家、父親の借金のために恋愛も我慢して働くダンサー崩れのおかみ、などそれぞれに気持ちを入れ込んでしまうのです。そして最後も「金」より「情」を選んだ子供、実に暖かい気持ちにさせてくれる良い映画でした。キャスティング・演技・演出・美術・脚本すべてがうまく調和。

ALWAYS三丁目の夕日 

 

2 ALWAYS 続・三丁目の夕日

前作よりコミカルな味付けにはなっていますが、いろんなエピソードを盛り込みながらの構成は前作どおり。前作で登場人物のキャラクターや人間関係がしっかり築かれていますので、その説明がいらない分、さらに色んな要素を詰め込むことが出来たのでしょう。小さなドラマの積み重ねをうまく交差させながら、最後にそれらが終結することで、ちょっと幸せな気持ちになれるような感動を生み出す巧妙な構成も見事です。前作で高いレベルのものを見せられて慣れてしまっているだけに、映像的にも演技的にも驚きとかインパクトとか、そういった部分で薄れてくるのはやむを得ないことで、その点で新鮮味は確かに落ちてはきます。しかし、それでもこの三丁目で起こる数々のドラマには引き込まれずにはいられませんでしたし、人情の通ったこの時代の生活を再び羨ましく思ったりするわけなのです。そして前作を観た時感じたキャスティングの素晴らしさを、改めて今回も感じました。今回は2回目ということで、観ている側の慣れもあるかもしれませんが、前作以上に、皆が三丁目の世界に溶け込んでいて、演技を演技と感じさせないほど自然に見えたのです。

ALWAYS続三丁目の夕日

 

3  ALWAYS 三丁目の夕日’64

多くの人がこの映画に求めるであろうものはきちんと押さえられ、3作目になっても質を落とすことなく、心温まる優しいドラマに仕上げてきましたね。ドラマ自体は奇を衒ったものでなく、ベタといってもいいストーリーですし、どうしても新鮮味という点では、作品を追うごとに低下していくことはやむを得ないところではありますが、それ以外の点については申し分ないでしょう。特に今回は、結婚、出産、親の死、進路の選択といった、人生のターニングポイントとなる出来事を中心に描いているため、展開としては今までよりさらにドラマティックになっています。キャラクターも確立され、余計な説明が要らない分、物語に時間を多く割けるのも3作目の利点。ところどころに挟まれる世相や流行の象徴がまたこの作品らしくていいですね。

 

 

4  STAND BY ME ドラえもん

最後の別れと再会のシーンは漫画でも有名な話ですが、それでもジーンときてしまうものが本作にはありました。ドラえもんとのび太の絆の深さを改めて感じるとともに、時代や国を超越したドラえもんの人気の理由も、こういうところにあるのだと思い知らされました。しずかちゃんが結婚式の前日にパパと話すシーン、たまりません。

 

 

5 寄生獣

奇妙奇天烈なこの生物を巧みに映像化していたのではないかと思います。完全に続編ありきの編集ではありますが、展開のテンポもよく、また寄生生物に乗っ取られた人を演じる俳優陣(特に東出昌大と深津絵里!)の演技もそれっぽくて、最後まで目を離せませんでした。橋本愛もなんか可愛かったですし。ラストのシーンに浅野忠信が登場し、新しい展開を期待させる終わり方。後半に導く役割の前半としては、うまく惹きこめたのではないでしょうか。

寄生獣 

 

6 アルキメデスの大戦

戦艦大和の作られた裏側にこんな二転三転のドラマがあったとしたら面白いなと思います。そんな空想を膨らませたような世界が繰り広げられ、特に菅田将暉演じる数学の天才の見事な瞬時の判断は、夢が膨らむような思いです。コンピュータのない時代にそんな天才が実在して、戦争を止められることができたのなら…。しかしながら一方で戦争へと突入していった当時の軍国主義の前では、どんなことも結局は無力で、大きな波は止められなかったのだという諦めのような思いもこの映画はもたらせます。国威発揚、戦意高揚の象徴として作られた巨大戦艦が、実は沈没することまで予め想定されて作られたもので、その沈没をきっかけに戦争を飽きられてもらえたら…裏にそんな思いが本当にあったとしたら、それはそれで興味深い事実にはなったでしょう。

 

 

7 寄生獣 完結編

後半も勢いが落ちることなく、最後まできちんと惹きつけて見せてくれました。そして人間同士の戦争、他の生物たちとの共存、ごみだらけの地球など、我々人間にとって耳の痛い教訓めいた話もところどころに盛り込んで、単なる異星物との戦いを描くだけではない、深さと広さを感じる作品でもありました。脇役たちもそれぞれ個性を発揮、ピエール瀧の楽しそうにやくざの事務所に入り込んでいく様子、國村隼の真顔で異星物を追う刑事振り、そしてなんといっても健気な橋本愛が可愛いこと。平和が訪れめでたしめでたしと思った瞬間の最後の一山もあり、見応えある2編でした。

 

 

8 永遠の0

あの時代に堂々とこのような言動を貫き通すことができたのか、彼の異様に丁寧な言葉づかいも含め、映像として見せられると、正直なところしっくりこない部分があったのも事実です。現代に生きる者からすると、自分のルーツを探す調査の中で、血の繋がる祖父がこのような生き方をしていたというのはある種の誇りを感じるのは当然でしょうし、育ての祖父の心意気にもまた感銘を覚えるでしょう。ただ戦争というものの生々しさを思うと、少々描写が美しすぎるような違和感を禁じ得ないのです。お話としては心を動かされるような素敵な逸話ですし、キャストもみんな心のこもった演技を見せてくれています。撮影にも力が入っていますし、作り手の思いというものも十分に伝わってきます。ただあまりに奇麗すぎて、リアルに響いてこないというのが、唯一で最大の難点であり、そこがこの作品を感じ取る上で、私にとっての壁になってしまいました。

永遠の0 

 

9 海賊とよばれた男

戦前、戦中、戦後と石油ビジネスの周囲の環境が目まぐるしく変わる中、その時々で危機に陥ってもなんとか勝機を見つけ出していく逞しさには圧倒されました。部下を大事にし、簡単にはあきらめない。仕事がなければ見つけ出す。一方で強い相手に対しても委縮することなく、メジャーにはないフットワークと、こうと決めたらまっすぐに突き進む意志の強さ。メジャーの参入の中でも決して身売りすることなく、頑なまでの姿勢は、もしかすると器用に立ち回って生き残る方が延命できたのかもしれません。とにかくこの主人公の生き様というものは、確かに魅力のあるものだったとは思います。作品としてはそんな人生について、時間を前後させながらも、堅実に真面目に描いたという印象でした。

 

 

10 Returner リターナー

「レオン」のような少女と男のペア、「ET」のような子供エイリアンとの別れ、そして悪巧みの大人との攻防、香港ギャング映画のような抗争の構図、マトリックスのような弾除け、使い古された時空移動、などなどあちこちで使われたようなネタをつぎはぎしているようなものではありますが、それなりにまとまっていました。それには、鈴木杏の好演が光ります。未来から現代にやってきたという難しい役所を、現代人とは少し異なる雰囲気を上手に出しています。一方金城の日本語は相変わらず棒読み。恋愛に発展するにはやや歳の差がありますが、友情と愛情の狭間のような二人、特にミリの感情を、はっきりみせないあたりが上手ですね。そして最後のオチもちょっと工夫がみられるので、その点もプラス評価。

リターナー