倍賞千恵子 出演映画 ベスト10
ラインアップにはやはり山田洋次監督作がずらりとならんでいます。
1 男はつらいよ シリーズ
当然寅さんの妹さくらとして長年続けたこのシリーズを外すことはできません。全作ひっくるめて文句なしの1位でしょう。倍賞さんのイメージ=さくらといっても過言ではないですし、逆に言えば他の作品に出ても、どこかさくらの印象と重なってしまうところはあるかもしれません。
2 駅 STATION
高倉健主演、北海道を舞台にした男と女の哀愁漂うドラマです。特に増毛駅に降り立った高倉健が立ち寄った赤提灯で、倍賞千恵子演じる女将との出会いシーンは、年の暮れの寂しさと北のはずれの雪景色、そしてテレビから流れる八代亜紀の唄が重なり合って、実に雰囲気のある場面となっています。
3 キネマの天地
昭和初期における映画撮影所を舞台に有森也実演じる新人女優が一人立ちしていくまでを描いた作品で、映画に対する大きな愛が感じられるものになっています。特に渥美清演じる有森の父親の気持ちがとっても優しい! 戦前当時に娘を女優にするということは、たいへんな思いのはずなのですが、それを健気に一生懸命心配し応援している姿は、可愛らしいとさえ思えてきます。そのほか監督から裏方から映画館主から皆が皆映画が好きで仕方ないという愛に満ち溢れ、さすが当時の松竹が全力を注ぎ込んだだけのことはあります。倍賞千恵子は近所の奥さん役。
4 同胞 はらから
まさに昭和の農村の映画という感じで、ネットの発達していない当時は、都会の文化が直接こうした田舎に入ってくることもなく、それがどんなことかも知らないで多くの人々が過ごしていたはず。そんな田舎の村で、広い村の住民全部を集めて観劇会を行うというのは、当時の若者にとっては大きな冒険だったことでしょう。なにせ見たことすらないのですから。そんな若者たちが、なんとか公演を成功するために、何度も何度も話し合い、仕事の間に時間を見つけて一生懸命やる姿、そして初めて観る都会の演劇に喜ぶ村の人々の姿を見ると、やはり感激せずにはいられません。このあたりは山田洋次はさすがといったところです。村にやってきた東京の劇団員役で倍賞千恵子は出演しています。
5 遥かなる山の呼び声
いかにも山田洋次・高倉健・倍賞千恵子という組み合わせから想像できるような人間ドラマです。したがって、基本的に性善説に基づいて作られています。なにかわけありではあってもそれは仕方ない原因によってやむを得ず導かれた結果だったり、ちょっとした出来心かであり戒められれば人の良い本来の善の人間に戻ったり。その中で物語は凡そ予定調和的に進んでいきます。無口な男と身を削って亡き夫の残した物を守ろうとする女、ここにいるのは典型的な古い日本人ですので、繰り広げられるドラマもよくあるものでしょう。それでも次第に心を通わせていく男女の様子がごく自然に描かれていて、観ている側にも自然に思いが伝わってきます。北海道の厳しくも美しい自然を背景にした素朴な人間関係に、昔ながらの情と助け合い精神を見出せ、心が表れるような気持ちにさえなりました。
6 小さいおうち
戦中当時としては比較的裕福でモダンな家族の中の秘められた恋。その秘密を一生背負って生きた一人の女中。いわゆる山田洋次的な世界とはやや趣きの違う印象で、新鮮な印象を受けました。もちろんお得意のある「家族」を舞台に描いてはいるのですが、家族の繋がりとか絆とかよりもそことはずれた箇所が物語の軸になっているというところに因るものかもしれません。時子さんの行動は、当時としてはかなり「進んだ」女性だったのでしょう。彼女の葛藤のような部分の描写がいまひとつ伝わらなかったところはありますが、でもメインはやはりタキさんのとった行動。彼女の行動が違っていたら、また違う結末になっていたのでしょうか、それは分かりませんが、少なくとも彼女自身の人生は変わっていたかもしれないと、そんなことに思いを巡らしたくなるような最後でした。倍賞千恵子は一家で働いていた女中さんの老年時代を演じています。
7 霧の旗
見事なまでの復讐劇ではありますが、なんともいえない後味の悪さを残します。冤罪で死んだ兄の無念を晴らすべく、弁護の依頼を断った弁護士とその愛人を陥れていく執念。自らの体を怪我してまでも復讐を成し遂げようとする拠り所はなんだったのだろうか。ゾーッとする女性の怖さを知らしめされました。倍賞千恵子主演。
8 ダウンタウンヒーローズ
終戦直後で教育制度が変わったばかりの時代と言う背景がまずノスタルジーを誘います。木造校舎、舗装されていない道、不揃いの制服…それでも新しい時代を前に夢を膨らませながらも、不器用に道を探っていこうとする若者たちのエネルギーが溢れてくるようで、もはや今は亡き時代の熱さのようなものが伝わって好感を持てました。薬師丸ひろ子がマドンナ役ということで、清楚な感じが可愛かったです。当時中村橋之助演じる主人公の母親が倍賞千恵子。
9 母べえ
第二次世界大戦を背景に、夫が思想犯として逮捕された中、女手ひとつで家族を支える気丈な主人公を丁寧に描き、一本芯の通った力強い映画になっています。原作もノンフィクションということで、普通に生きていくのだけでも厳しい時代、家庭から大黒柱を失うという悲劇の中でも、弱音を吐かず気丈に振舞い、子供たちを守り抜く姿にも説得力があります。改めてこの時代の日本人の強さというものを感じさせられた思いです。倍賞千恵子は医師役で特別出演。
10 すべては君に逢えたから
クリスマスも色んなクリスマスがあるということで、ロマンチックで楽しいクリスマスもあれば、家族を思ってせつなく過ごすクリスマスもある。そんなそれぞれのクリスマスまでを描いた群像ドラマとして、いいバランスで構成されていたと思います。メインとなるエピソード、サブ的なエピソード、それぞれが長すぎず短すぎずで、その加減が難しい群像劇の中では、適当な配分だったと思います。そしていくつかのエピソードがありながらも、そのほとんどがどこかで鎖のように繋がってきて、その繋がり加減もわるくなかったです。倍賞さんはケーキやオーナー兼パティシエ役。
11 隠し剣 鬼の爪
12 家族
13 座頭市 THE LAST
14 下町の太陽
15 虹をつかむ男
16 ホノカア ボーイ
17 九ちゃんのでっかい夢
18 故郷
19 幸福の黄色いハンカチ
20 運が良けりゃ