●キム・ギドク 監督映画 出演映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

キム・ギドク 監督映画 ベスト10

 

韓国の鬼才を取り上げます。

最近は出演の女優ともめているようで、

今後が気になります。

 

1 うつせみ

かなり奇妙な作品で、一種のSFファンタジー映画といってもいいほどです。現代の愛のお伽噺といいましょうか、現実離れした物語にも不思議な力を感じます。留守宅を狙って我が家のように一晩を過ごし、また別の家に移っていく主人公の青年が、ある家で出会った人妻と惹かれあい、恋愛関係に落ちていく前半、犯行がばれ警察に捕まるがそれをきっかけに特殊な技を身につけていく後半。どうしてそんなことを始めたのか?、生活費はどうしているのか?、家族や友人は?そんな現実的なことを問うのは野暮というもの。この映画にはかえって邪魔になる、そう納得させられるものがあります。さらに演出がまた鬼才ぶりを発揮しています。

 

 

2 春夏秋冬そして春

静かにゆったりと時間が流れる人里はなれた小さな寺で繰り返される物語。展開もゆっくりとしていて、セリフも極端に少ないのだが、その中でもいろんなことが伝わってきます。命の大事さ、恋、感情を沈めること、恩返し。静かな物語の中にも性交や自殺、殺人などけっこう俗物的な要素も含まれ、人の世とは何か、その中で生きていく大事さのようなものも込められています。和尚の柔らかな視線が前半印象的なのですが、後半にはいって罪を犯したことへの怒り、そして自殺という手段での自らへの戒めなど、情熱的なものも感じました。

春夏秋冬そして春 

 

3 サマリア

ドラマとしては韓国らしい濃密な家族愛が根底にあるのですが、ひとつの作品としてみた場合、前半の友情物語としての展開が、突如娘を思う父親の心情を主軸にしたものに変わってしまいます。前半の主役は娘、後半は父親と主人公が入れ替わってしまう気持ち悪さ。これがわざとであるならその意図が分からないし、無意識だとすると雑だという評価は免れない。しかしそれでも最後まで一気にひきつけて離さない力強さには敬服させられました。

 

 

4 絶対の愛

男を離したくないがために整形手術で別人になってしまった女性の映画を作り出しました。現実的な指摘は一切意味がありません。とにかくこの主人公である女性、そして彼女が整形したと知ってある行動をとる恋人だった男性、その特異な行動を理解できるかどうかに尽きます。で、自分は?と聞かれると、こういう愛の表現もあるかもしれないなとは思う反面、でも本当にそこまでするか?という疑いもあるわけです。ギドク監督の次から次へと作り出す特異な愛の世界には、いつもながら驚かされました。

 

 

5 The NET 網に囚われた男

なんとも皮肉な結末に声が出ませんでした。スパイ容疑としてでっち上げてまで逮捕しようとする係員、それよりも亡命させようと画策する上司、そんな勝手な彼らに対し、なんとか家族のもとに帰してあげたいと願う若い警護担当の職員。辛い拷問もしつこい説得にも、絶対に家族のもとに帰るのだという強い意思を持って、最後には北への帰還を手に入れた主人公でしたが、敵側よりも身内側にさらなる敵がいることを想像もできなかったのでしょう。生活の術である漁を禁じられると、間もなく耐えられなくなり、死を覚悟したうえでの玉砕ともいえる出漁へ。結局家族を残して死んでしまうのです。家族とともに生きるために戻ったはずの祖国で、家族とともにどころか、自らも生きることができなくなってしまったという皮肉。辛口で毒たっぷりのキム・ギドクが南北朝鮮問題を鋭く風刺したような作品でした。

 

 

6 嘆きのピエタ

友人も恋人もそして家族もいない孤独な男が、急に現れた女を母親と信じだし、その姿が見えなくなると心配して必死に探す姿には、いくら冷徹で乱暴な借金取りだとしても、胸にグッとくるものがありました。一方で時間をかけて復讐の計画を実行しようとする女でしたが、最後の最後で情が移ったのでしょう、復讐をようやく果たせる思いの一角に生まれたためらいに、この映画の中で唯一人間らしい救いを感じるのでもあります。冷静に見ると、「?」がつくような場面もいくつかあるのですが、それでもパワーで押し切ってしまうのが韓国映画であり、キム・ギドクなのでしょうね。

 

 

7 魚と寝る女

舞台は常に水上にあり、そこで露になる人間の欲望とエゴ。セリフも極力削って、映像と間合いだけで見せる時間を多く作り、静かに観ている者に訴えかけてきます。とにかく人間の汚いところが満載で、その見せ方がかなり独創的。でもある意味これが人間本来の姿なのかもしれません。よく考えると、そもそもこういうところで生活していること時代「?」で突っ込みどころは満載で、よく分からない状況でいろいろ進行していくのですが、そんなことも含めてキム・ギドクの術中にはまったということなのでしょうね。

 

8 弓

究極の愛情を描いた深い作品ともいえますし、とんでもなく馬鹿馬鹿しい作り物の世界とも捉えることができるでしょう。なんとも評価の難しい作品ですが、その中でハン・ヨルムが、ほとんど台詞のない中で、見事に表情だけでなんともいえない妖艶さを醸し出しているのが印象的です。幼い少女を両親から連れ出して海の上の船で10年間も囲い続け、17歳になるのを待って結婚を夢見る初老の男。その男の方の気持ちは分からないではないです。ある意味男の夢かもしれません。

 

 

9 メビウス

一見普通の家庭に見える一家ですが、実はとんでもない事情が隠されています。とにかくここに書くのもはばかれるような「珍事」のオンパレード。異様なギドグの世界にどんどんとと飲み込まれていく感じです。しかも言葉のセリフがなく、その部分だけでもかなり実験的な作品だと感じました。

 

 

10 殺されたミンジュ

かなり挑戦的な作品であることは確かですが、その分観ているものにとっては不親切で釈然としない部分が多すぎます。なぜ、どうして、どうやってという疑問のオンパレード。特にそもそもの起点となる女子高生の殺人事件が、上層部からの命令だということしか分からず、理由も背景も人物像もまったくもって情報がなし。そこの理由が分からず、とにかく命令だから殺した、(おそらく)娘が殺されたから復讐した、だけでは心情的にどう感じていいのかさえ分かりません。ただただ残忍なだけの拷問シーンが延々と続くだけの展開も単調ですし、拷問する側がそれぞれどういう気持ちや意図で集まったのかも、リーダー意外についてはまったくもって不明。見せるべきところは見せていかないと、中途半端では。