ダニー・ボイル 監督映画 ベスト10
話題作を世に送り続けているダニー・ボイル監督です。
ジャンルもいろいろで、
一筋縄でいかないのがまた魅力だったりします。
1 シャロウ・グレイブ
シニカルなサスペンス・スリラーで初監督作品です。二転三転する展開は目を離せないですし、緊張感ある脚本が秀逸。主役の三人の関係も最初から最後まであやふやなままで、それがはっきりしないでもあるのですが、スリラーの展開に当たってはかえって重要な要素となっています。一見仲良さそうなルームメイトが事件を機会に、その関係を壊していく過程がなんとも皮肉っぽい。
2 スラムドッグ$ミリオネア
アカデミー作品賞を獲得するなど、最も成功した作品です。クイズで次々に正解を重ねる青年と、彼の遭遇してきた出来事を重ねることで、貧しい環境で育ってきた主人公の半生を映し出し、観る者をストーリーに引き付けていきます。ダニー・ボイルの作品の中では、比較的素直で、多くの人に支持されやすい作品ではないかと感じています。
3 スティーヴ・ジョブズ
すでにジョブスの伝記映画は作られていただけに、どういう視点でまとめてくるかと思ったら、3回の製品発表会の開会直前の様子を描く形での構成となり、このあたりはかなり工夫したものになっていたと思います。そのわずかな時間の間に彼と関係の深い昔からの仕事仲間、部下、CEO、記者、かつての恋人、娘、仕事のパートナーを登場させ、3回の発表会の前後に何があったかを繋いでいく手法はなかなかスリリングでした。開始時間が迫り時間が限られている中で、次々にトラブルが起きていく様子は、サスペンス映画を観ているような緊張感がありました。この映画に映しだされるスティーヴ・ジョブスという人物は基本的には才能はあるけれど人の意見に耳を貸さない、非寛容で人格に問題がある変わり者ということになるのでしょうが、それでも時間の経過とともに、少しずつ人間らしさが芽生えていくようなところは感じられました。
4 28日後…
ダニー・ボイル的ゾンビ映画といったところ。そう難しくない設定で、独特のムードの未来の世界で、壮絶な闘いが繰広げられます。ちょっとえげつないと思わせるようなシーンがいくつかありましたが、それなりに怖さもあるし、何よりも2つのエンディングが用意されているという期待感もあって、単純なストーリーにも関わらず、最後まで飽きずに観られました。
5 トランス
ダニー・ボイルが一筋縄ではいかないだろうことは想像できていましたが、今まで以上に凝った映画を作ってきました。現実と非現実の間を行ったり来たりで、スタイリッシュな映像についていくのがなかなか大変ではありましたけれど、最後に二段階で明かされる秘密で納得できる部分も。逆に言えばオチがあってこその作品でもあり、全編の9割はそこにもっていくための前振り。観終わった時点での「なるほど感」はあったけれど、トータルでみると、やや凝り過ぎたかも。
6 普通じゃない
ダニー・ボイルとしては貴重なラブ・コメディです。しかも天使を登場させるなどファンタジックな要素も。当時売り出し中のキャメロン・ディアスとユアン・マクレガーを魅力的にとっていますが、それ以上に天使役のホリー・ハンターがいい味を出しています。ストーリー的には結構強引かつ安易なところもあるのですが、作品としてはしゃれていました。エンディングの映像も良かったです。
7 サンシャイン2057
こちらはSF映画です。SF映画ではよく使われる設定で、地球の危機を救おうと命を賭けて任務に臨む物語です。全世界の英知を結集しているということを強調するためか、特にアジアに気を使ったキャスティングになっています。その代表が真田広之であり、ミシェル・ヨーなのであります。機体の故障に始まり、火災、酸素不足、遭難船の発見、その遭難船の不可解な状況、そして一人一人と死んでいくサバイバル合戦(?)、そして思いもよらぬ者の登場…。ただ、材料は確かに揃ってはいるのですが、どうも観ていて期待しているものとは微妙にずれながら進んでいく感が惜しい。
8 ザ・ビーチ
南国のリゾート風のビーチを舞台にした、ちょっと変わったストーリー。前半の青春アドべンチャ-的な展開から、後半はこねくりまわした映像での社会派ドラマへと変化。三角関係、四角関係があっさりすぎて、とってつけたような感じ。最後の楽園崩壊の場面はちょっとひねってあって良かったです。
9 ミリオンズ
それまでのダニー・ボイルの作品とはまた違った温かみのあるファンタジックな作品でした。思わぬ大金を手に入れてしまった幼い兄弟ですが、貧しい人たちに寄付しようと主張し続ける弟がとても可愛く健気なのです。次第に大金のことが回周りに少しずつ分かっていくのですが、それぞれがそれぞれの価値観で大金を処理しようとする様子が微笑ましいです。大金の本来の持ち主である強奪犯が迫ってくるサスペンス的な味付けもあるのですが、その犯人も最後はあっけなく結局はおとぼけ役となり、ほのぼのとした味付けに一役買っています。改めてお金について考えさせられました。
10 127時間
ほぼ一人芝居、しかもまったく場所を動けない状況でこれだけの時間をもたせるのはちょっと辛かったです。妄想、回想で時間を結構費やしていますが、私にはやや退屈。これだけ評価が高いのにどうしてだろうと考えてみれば、そもそもダニー・ボイルの見せ方があまり好きでないことを思いだし、自分の中で妙に納得。切断シーンは観ていられなかったです。
次点 トレインスポッティング
一番人気といっていい出世作をランク外にして怒られそうですね。単に好き嫌いの問題なのですが、この手の作品ってあまり好きにはなれなくて…。続編についてもやっぱり同様で、生理的にどうも受け付けないようです。