ガス・ヴァン・サント 監督映画 ベスト10
作家性の強い問題作を送り出し続ける監督を取り上げます。
万人受けというよりは、わりと人を選ぶタイプの作品が多いです。
1 誘う女
キャリアアップのためには何でもするとんでもない上昇志向の強い女の役をニコール・キッドマンが熱演しているサスペンス映画です。目的達成のためにはなんと夫までも殺してしまうという凄まじさ。しかし結局それは自分に降りかかってくるわけで、結末がまたなんともいえない気分にさせます。
2 ミルク
実在の同性愛議員を描いた社会派ドラマ。ガス・ヴァン・サントらしい社会派の真面目な作品、テーマもきちんと見えていますし、訴えてくるものも十分に感じ取れます。ハーヴィー・ミルクの残した功績というものを知ることができましたし、改めてマイノリティが社会で生きていくことの厳しさ、そして彼らを理解するための社会体制のあり方、そんなことを考えさせてくれる意義深い作品でした。
3 永遠の僕たち
単に、若い女性が余命を告げられ、残された余生をどう過ごすかという映画でしたら単純なのですが、そこに幽霊が絡んでくるだけでなんとも不可思議な関係性になってしまうものです。その幽霊の説明がほとんどされない分、いろいろ想像は掻き立てられますが、観る者に任せられている部分が多いです。
4 追憶の森
死に場所を探して樹海の中で出会った男二人。景色に変化のない森の中での二人の会話、そして回想シーンでの夫婦の会話、そのふたつの場面を交互に重ねるだけながらも、心理的に息がつまるような緊張感を生み出しているガス・ヴァン・サントの繊細な組立てが見事です。
5 小説家を見つけたら
ショーン・コネリー演じるかつての小説家と文才豊かな黒人学生との交流を描いた静かなドラマです。地味な作品ではありますが、老境を迎えた主人公の思いというものを、人種差別と言ったテーマに踏み込みながら描いています。
6 プロミスト・ランド
環境問題とそれに対する企業の姿勢、或いは地元活性化と自然環境維持のどちらが優先なのか、そんな社会問題をそこで生活をする現実的な視点から描いた意欲作ではあります。企業人として、或いは自然をと共存して生きる者として、さらには現代人として何を優先させていくのか、立場や事情、思想や環境によっても変わってくるであろう問題なので、なかなか一筋縄でいかないところも伝わってきました。
7 サイコ
あまりに有名なオリジナルを、まさに映像までも同じにしてリメイクした作品です。なぜ敢えてリメイクする必要があったのかはさんざん議論されてきましたが、とにかくガス・ヴァン・サントにとっては大きな挑戦であったことはいえるでしょう。
8 グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち
大学を舞台に師弟愛を描いています。静かに進行する青春ドラマで、これをきっかけにマット・デイモンがブレイクしたともいえるでしょう。
9 パラノイドパーク
思春期の若者たち、殺人事件という大まかなプロットからは、「エレファント」を思い起こすような尖った感じの作品になるかと思いきや、ゲイブ・ネヴァンス演じる少年の事件後の日常を淡々と描く繊細な映画。殺人事件というよりは、事故に近い形のその出来事、警察が周囲で捜査に当たる中、彼の心の微妙な移ろいを描いたナイーヴな心理ドラマであり、刺激的な描写は控えめです。
10 マイ・プライベート・アイダホ
友情というか、愛情というか,不思議な濃密な関係を主役の二人が演じている。悪仲間,それぞれの親、ローマであった恋人など,どうも登場人物の存在やつながりがちぐはぐな印象。