●2017年鑑賞映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

2017年 鑑賞映画 ベスト10

 

恒例の年間ベスト10です。

昨年は断トツのベスト1が存在しましたが、

今年はこれといった作品がなくて、どんぐりの背比べ。

かなり迷った末でのランキングであるのが実情です。

 

1 ブランカとギター弾き

盗みをしながら路上で生活する気の強い女の子と、淡々とギターを毎日弾き続ける盲目の老人の交流にここらが温かくなる作品です。どこか気が合うところもあったのでしょう、老人だけに見せるブランカの優しさがとてもいとおしくても互いになくてはならない存在であることがよく分かります。老人はそれでも必要以上にブランカに対し干渉することはなく、ふらっと離れたまま何日もの間、違うところで過ごしていても、また戻ってくるという、つかず離れずの関係。ラストもまた素敵です。老人のいうことを聞いて孤児院に入ることを決めたものの、一人となった彼がまた心配で仕方ない。老人と別の少年とが楽しそうに過ごしているところを見て安心したラストシーンのブランカの笑顔が素敵でした。

 

 

2 gifted ギフテッド

とにかく子役のマッケナ・グレイスの演技が素晴らしく、数学に特殊な才能を持ちながらも、普段は育ててくれるおじになつき、無邪気に踊ったりする姿は意地らしいの一言です。英才教育を施したい祖母に対し、普通に子供らしい生活を望む息子である主人公。かつて主人公の姉に英才教育を施し、数学の才能を大いに伸ばしながらも、自殺で失っていた二人。懲りない母親に対し、金はなくても友達のいる環境で育てたいと願う息子の対立は、裁判所で争うこととなり、親子の争いとしてはかなり辛いもの。その中で自分の育て方に自信を無くし、取引に応じて里親に預けてしまうのも仕方ない話かもしれません。それでも結局姪っ子が大好きなのはおじさんであるわけで、里親に預けて別れるシーンは、本当に涙を誘う場面でした。そしてそれを演じたマッケナちゃんの演技が実に圧巻。けっして派手ではない作品ですが、心に染み入るように響いてくるのは、彼女の演技によるところも大きかったのではないでしょうか。良い作品でした。

 

 

3 君の膵臓をたべたい

とにかく浜辺美枝演じるヒロインが魅力的。死を前にしたこの女子高生の立ち振る舞いは、リアリティはないのかもしれません。人には悲しみも恐れも一切笑顔で隠しつつ、人のいないところでこっそりと涙を流すいじらしさ。一方で奥手な主人公を振り回すかのように突然旅行に誘い、同じ部屋で泊まったり、或いはこれも突然自宅に呼んで「いけないことをしたい」と冗談めかして言ってみたりと、小悪魔的な振る舞いにもまたチャーミングなのです。この主人公が変なことはしてこないということを見抜いての行動だとは思われますので、人を見る目はあったのでしょう。親友の事も大事にする優しさも持ちあわせ、こんな子がクラスに居たら、男子は誰もがノックアウトされるのではないでしょう。現実味というよりも、死を前にしたヒロインをいかに魅力的に魅せるかに徹して作られたのではと思うほどのつきぬけぶり。そこにあっけない最期でしたから、そのはかなさに思わず涙でした。

 

 

4 散歩する侵略者

黒沢清らしさとらしくなさの混在したような作品は、SFスリラーの体を取りながらも、観方によってはコメディとしても捉えられる、なんとも捉えところのない映画となりました。ストーリー展開としてはいつになくわかりやすく、人間に寄生して人間というものを学びながら、侵略に備えているという状況。3人の宇宙人と人間とのかかわりを中心に物語は進んでいきますが、途中からなにやら国が動いている様子が顕著になっていきます。そあたりから、本当は宇宙人ではなくてウイルス性の感染症なのかとも思ってくるのですが、そうするとまたつじつまが合わないことが出てきて謎が深まるばかり。女子高生がいとも簡単にマシンガンやピストルで人を殺したり、会社のお偉いさんがオフィスではしゃぎまわったりと、ブラックな笑いに通じるシーンも多く、メリハリのきいた展開もまた黒沢らしくないところだったかもしれません。結末のつけ方もまた人間にとっては皮肉なラストに。

 

 

5 お嬢さん

どぎついですが、めちゃくちゃ面白いです。パク・チャヌクの本領発揮といったところでしょう。日本語で話すシーンが沢山あるのですが、まずその日本語がたどたどしく、何を言っているのか分からないこともとしばしば。日本でいう春画のような挿絵がたくさん挿し込まれ、そしてなんといっても幼い女の子にわいせつな官能小説を朗読させるという異常ぶり。おやじたちのスケベぶりには呆れるばかり。そこに女性同士の濡れ場もたびたび設けるなど、ある意味悪趣味ともいえる展開の数々。それでも二転三転する展開に、目が離せなくなるのです。三部制をとり、一部と二部はスッキ、秀子それぞれの視点から見た同じ出来事やその裏事情を見せることで、あーそういうことだったのねと、その都度腑に落ちていくのも巧みなところ。映画の質とか道徳観とか言ったら最低なのですけれど、とにかく面白ければいいじゃんという点で素晴らしかったです。

 

 

6 幼な子われらに生まれ

思春期近くになった血の繋がらない娘が、母親の妊娠を機に、急に不機嫌になり、荒れだす。それととも家族の雰囲気が重苦しくなり、どんなに話そうとしても、ますます関係が悪くなるばかり。血のそんな繋がらない父親と二人の娘、そこにこれから誕生しようとする血の繋がる兄弟。そこに互いの前の配偶者の存在が絡み、終始抜け道のない重たさが漂う作品です。しかしそれがまたリアルで、自分がもしその立場になったら、果たしてどう解決していこうとするのか、そんなことに思いを巡らせるような作品でした。最後、新しい子の誕生で何か変わるのではないかと期待したところで、あっけなく物語は終了。この先をもう少し見てみたかったです。

 

 

7 少女ファニーと運命の旅

主人公のファニーを演じた少女の勝気な表情が素晴らしかったです。ユダヤ人を狙うドイツ軍の追っ手が迫り、あちらこちらで包囲網が敷かれる中、勇気と知恵で逃げ抜け、最後に安全なスイスへの国境を越えていくという、実話に基づくストーリー。面倒を見てくれた大人たちも途中で逮捕されたり、消えたりする中、必ずしも年長でない少女が、2人の妹の面倒を見ながら、他の子供たちも率いていく様子は、まさに天晴れ。実際に危険が迫る中、それらを潜り抜けて目的を達成したということは、恐れ入るといかししようがありません。最後に未だ健在のファニーの近影が移されると、これが歴史上に実際に起こったことだということをまざまざと実感させられました。

 

 

8 否定と肯定

実話に基づいた社会派の法廷劇ですが、テーマがホロコーストをめぐる歴史的な論議とあって、かなり重い空気が支配しています。否定論者は論外的な立場をとるレイチェル・ワイズ演じる主人公は、正義感が強く、しかも自分を強く信じる一方、周りをなかなか信用できないキャラクター。仕方なく受けて立った裁判での弁護団とも衝突ばかり、それでも弁護団は弁護のプロとして、不利になるような証言は頑として受け入れず、しかもデボラの気づかないところで入念な準備を進めていたことで、次第に信頼を得て、最後は被告の勝利に導くという流れで、法廷劇としても見応えのあるものになっていました。レイチェル・ワイズが歴史学者を好演していて、良くも悪くも自分をしっかり持っている姿がりりしく、またいつも以上に美しかったです。

 

 

9 娘よ

部族の平和の為に結婚を勝手に決められた10歳の少女。子供のでき方も友達から間違った知識を教え込まれて信じてしまうほどの幼い女の子に、とんでもないおじさんのところに嫁がせるなんて、母親としては当然認められるわけもなく、逃げだすのも当然のこと。しかも王子様に会えるとはしゃぐ娘に本当のことを言えず、その無邪気さが余計に、母親の苦悩を浮き立たせるのです。途中で巻き込まれたトラック運転手も合わせた逃亡劇は、サスペンス的な要素たっぷりで、二人の先行きを案じさせて、観ている者を引きつけて離しません。そこから先は二人の境遇を次第に理解した運転手がすっかりいい人になって、二人を手助け。もしかして恋に発展するのかともやんわりと漂わせながらも、母親の母親との久しぶりの再会という方向へ。もっともそうすんなりと行くわけもなく、最後は明確に結末を見せる前にエンディング。タイトルのDaughterは二重の意味があったことが最後になって分かるのですが、パキスタンの現状を訴えつつも、変化に富んだストーリーで、興味深い作品となっていました。

 

 

10 私の少女時代 Our Times

 台湾の青春映画は勢いに乗っています。コミカルな序盤を観ると、軽い感じのラブ・コメディになるかと思ったのですが、次第に彼、彼女の言葉に出来ないせつない思いがじわじわと伝わってきて、心に染み入る展開に。最初は別の相手を好きだった同士が、やがて好きなことに気づき始めるのですが、それを言い出せず、突然の別れがやってくるのです。観ていてもどかしさを感じますが、そのもどかしさこそが青春時代の本当の恋する気持ちだと思うと、ほんとうに切ない気持ちにさせられます。観ている方も、二人が今どんな気持ちの状態なのか、セリフはなくても、態度や表情から推し量る部分もあって、キュンキュンしました。