スティーヴン・ソダーバーグ 監督映画 ベスト10
引退を表明したソダバーグを取り上げます。
作風の幅はわりと幅広く、
娯楽映画もメッセージ性の強い映画も
或いは実験的な映画も、芸術的「風」映画も
色んなタイプの作品をこなしていく印象があります。
時に「？」という作品もありますが、
私の好きな監督作品を10作選んでみました。
1 サイド・エフェクト
夫殺しをめぐる妻の言動と薬害の真偽を負ったサスペンス・ミステリーは謎が謎を生み出す展開は最後まで目が離せませんでした。精神的に追い詰められた悲劇の未亡人とみていたヒロインが、一転してその裏の顔が明らかになると、ルーニー・マーラの見え方も違ってくるから不思議なもので、彼女も病的で繊細、闇を持った女性のイメージがはまっています。緻密な心理推移描写も巧みで、こういう映画を撮れるのなら、まだまだ作品を出し続けて欲しいと思いました。
2 トラフィック
麻薬を巡る社会派群像ドラマは、まったく無関係で繋がっていないような複数の出来事が次第に絡み合っていくという巧みな構成が秀逸。麻薬の問題に真正面から取り組み、ソダーバーグの作品の中でもメッセージ性の強い作品です。キャストも豪華で見所もたくさん。マイケル・ダグラスとキャサリン・ゼタ＝ジョーンズの夫婦共演も話題に。
3 エリン・ブロコビッチ
ジュリア・ロバーツにオスカーを齎せた作品です。素人だった主人公が、大企業と住民たちとの訴訟問題にかかわっていく中で奮闘し、住民たちに勝利を運ぶという実話に基づいた爽快な映画。それでいて環境や企業のあり方に関するメッセージも痛烈に込められ、まとまった分かりやすいものに仕上がっています。
4アウト・オブ・サイト
ジョージ・クルーニーとジェニファー・ロペスによる艶っぽいアクション・ロマンス。犯罪を犯す側と捉える側の二人が恋に落ち…というありがちな展開ではありますが、上手に二人の個性を利用し、魅力的な作品になっています。主人公のポリシーにも好感が持てました。
5 ガールフレンド･エクスペリエンス
高級コールガールの日常を追った作品ですので、けっしてとっつきやすい作品ではありませんが、主人公の存在感を魅力的に撮り下ろし、不思議な面白さのある作品になっています。ドキュメンタリータッチということで、普段なじみのない高級娼婦の生活を覗き見しているような感覚で観られるからでしょうか。ソダーバーグらしい作品ではあります。
6 コンテイジョン
マリオン・コティヤール、マット・デイモン、ジュード・ロウ、グウィネス・バルトロウ、ローレンス・フィッシュバーン、ケイト・ウィンスレット…とにかく華やかなキャストを集めて作られたウィルス・パニック・ムービーです。ただキャストの名前からすると、作品はわりと平凡。いまひとつ個性を生かし切れなかった印象です。
7 エージェント・マロリー
ソダーバーグ的アクション映画。キャストは豪華ですし、さすがに体をはるのが本職なジーナ・カラーノのアクションはかっこいいし切れもあります。けっして大柄ではないのに、男どもを次々に倒していく様は、それだけで観る価値はあるかもしれません。ストーリー性は弱いので、あくまでもアクションを楽しむためと割り切るのがよさそう。
8 オージャンズ13
こちらもそれ以上に豪華なキャストが揃ったシリーズ3作目。犯罪の目的自体も分かりやすくなり、キャラクターの特技や性格の説明がいらない分、本筋に費やせる時間も増え、それなりに犯罪の手口を楽しむことはできました。ただやや説明不足気味で、不親切なところはありますね。
9 マジック・マイク
男性のストリップという独特の世界を舞台にしながらも、内容的にはドラッグ、セックス、ラブ、確執、夢と、オーソドックスな要素を散りばめたという印象。話の流れはよく分かるのですが、いまひとつこの設定を生かせず、どの要素も浅く広くまんべんなくストーリーに取り入れていったという感じで、設定の割に薄味です。
10 セックスと嘘とビデオテープ
このあたりはやや実験的でもあり気取った印象のある作品。万人受けする映画ではけっしてなく、室内での会話劇に終始するセックスをテーマにした心理的なやりとりは、山場がないだけに難解でもあります。その中でジェームズ・スペイダーのみずみずしい雰囲気は新鮮。
