●2012年 鑑賞映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

2012年 鑑賞映画 ベスト10




恒例の年間ベスト10です。

基本的に今年劇場鑑賞した新規公開作と、

日本本年公開でDVD鑑賞できた映画からということにしています。

(結果として、10作は劇場鑑賞作となりましたが…)

地方ゆえ、全国公開が2011年でも、

2012年扱いになってくる作品があることをご了承ください。



①別離

イラン映画ということで、2007年以来5年ぶりに、洋画作品を1位に持ってきました。アスガー・ファルハディですが、20113位の『彼女が消えた浜辺』のときも驚きましたが、今回はそれ以上に完成度の高さに感服しました。とにかくスリリングで一時も目が離せない心理ドラマが展開され、最初から引き込まれっぱなし。会話を聞いているだけで観ている方までイライラとフラストレーションがたまっていくリアルさは、前作以上に磨きがかかっています。一方でミステリー映画としてもきちんと考えられて作られ、いくつかの嘘や隠し事が複雑に絡ませながら、徐々に真実を明らかにしていく手法も見事ですし、伏線もさりげなく貼られていたりするのですよね。さらにさらに、離婚に直面した親子関係、認知症の介護といった、国を問わず多くの人々が抱えている問題もきちんと浮き彫りにしていくあざとさ。もうお見事としかいいようがありません。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-別離



②ヘルプ 心がつなぐストーリー

人種差別という大きく重いテーマを根底に抱えながらも、勇気、ユーモア、そして人種を超えた心の交流といったものを作品全体に散りばめることで、心温まる、そして爽やかであと味の好い素敵なドラマに仕上がりました。人種差別が色濃く残る時代、その中で厳しく辛い体験を重ねながらも、希望と明るさを失わないメイドさんたち、そして新しい時代へと踏み出す一歩になる彼女たちの勇気に、自然と応援したい気持ちになってきます。そして結果的に彼女たちの背中を押すきっかけになった作家の卵のヒロインの、上流階級に染まり切っていない純粋さもまた好感が持てました。それと対照的なのがブライス・ダラス・ハワード演じる伝統的な人種札別主義者なのですが、悪役を一手に引き受けて熱演したハワードの熱演も、この作品にはなくてはならないものでした。人間やはり最後は思いやりなんですね。優しい気持ちになれる良い映画だったと思います。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-ヘルプ心がつなぐストーリー



③僕達急行 A列車で行こう

森田監督の新作がもう観られないのは非常に残念なのですが、不本意な作品で終わるより、最後にこの作品を残せたということは良かったのかなと思います。監督の得意とする力の抜けたほのぼのコメディは、非常に「らしい」映画でした。鉄道にあまり興味がない者にとっては、二人のオタク的知識についてはまったくついていけないマニアックな会話でありながら、二人が心から楽しんでいる様子が伝わってきましたし、同じ鉄道ファンといっても、その中でも興味の対象は人それぞれであるということもよく分かりました。そしてそんなオタクの彼らを見る周りの目がまた温かいのですよね。もちろんそれは、趣味は趣味として、仕事はきちんとやっているというベースがあってこそではあるのでしょうが、上司、同僚、家族、取引先、ガールフレンド、みんなが彼ら二人を「少し好き」という感じが、ほのぼのとして心地よかったです。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-僕達急行A列車で行こう



④ロボジー

矢口作品としてはここ数作物足りなさを感じていたのですが、久しぶりに「やっぱりうまいなぁ」と思わせるものになっています。物語はきちんと計算づくに組み立てられ、多少編集の妙で誤魔化しているところもありましたが、その先がどうなっているのか、ばれるのかばれないのか、観ている側でも結末までの組み立てをいろいろ想像しながらの鑑賞を楽しめました。こういう方向にいて欲しくないな、と思う方向にはいかず、かといって全く予想通りの展開というわけでもなく、そのあたりの加減が私としては好きでした。また主要なキャラクターも絞り、余計なエピソードなどサイドストーリーも極力避け、軸となるストーリーに集中して構成したことで、集中力を切らすことなく観られる脚本にもなっていたと思います。笑いました。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-ロボジー



⑤サラの鍵

全国的には2011年公開になるのでしょう。戦時にフランスで迫害を受けながらも逃げ出すことに成功したある一人ユダヤ人の少女、弟を守るためにしたことが裏目になり、そのことを一人重く抱えて生きた末の悲劇…。大戦中のユダヤ人の迫害を描く映画は数多いですが、その中でも一味違った味わいの作品になっています。現在と60年前、フランスと米国、それぞれを結びつける数奇な運命に隠されてきた謎を解いていく過程で、改めて観ている側もその重さに愕然とさせられるのです。と同時に、ミステリアスな人探し映画として観客を惹きつける力も持ち合わせ、クリスティン・スコット・トーマスの好演と相まって、観終わった後も余韻が残りました。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-サラの鍵


⑥桐島、部活やめるってよ

男女とも多くの生徒が登場しながらも、それぞれのキャラクターや個性がしっかり確立されているので、どの生徒と生徒が絡んでも、それぞれのシーンを面白く観ることができました。原作以上に、「桐島」の存在にこだわり、実験的でありながらも、さわやかな青春群像劇として成立させた吉田監督の手腕を改めて認識させられた思いでもあります。キャスティングも興味深く、名前よりも、キャラクターのイメージを重視していて、この手の青春映画にありがちな、今をときめく売出し過程の人気俳優が勢ぞろいというアイドル映画とも一線を画し、リアリティのある感じが良かったと思います。個人的にはバレー部の控え選手に憧れるバドミントン部の女性にちょっと肩入れして観てしまいました。原作の縛りがある中では、一本の映画としても手堅くさわやかにまとめられて好感が持てました。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-桐島部活やめるってよ



⑦シグナル 月曜日のルカ

雰囲気はとても素敵な映画でした。古い映画館を舞台にしているというだけでまず○ですし、屋上のちょっとした空間だったり、少しある二階席だったり、おしゃれな支配人の服装だったり、ちょっとした細かいところが映画好きの心をくすぐるようです。そしてなんといっても三根梓のちょっとぎこちないけれどキリっとした雰囲気が、このヒロインにぴったりで、とてもいい感じ。デジタルでない映写機が置かれた木造の古い閉じられた空間の中で過ごし続けるミステリアスな女性…それだけで随分引きつけられてしまいました。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-シグナル月曜日のルカ



⑧鍵泥棒のメソッド

正統派ながら細部にまで目が行き届いた完成度の高い作品でした。今までは練りに練った脚本を凝った構成やトリックで見せる、技巧面をクローズアップした作品といった印象が強かったのですが、今回は余裕が出来たのでしょうか、流れに沿って観られる、分かりやすいコメディで勝負してきましたね。しかしその中にも、小道具の移動や状態など、細かいところにもきちんと気を配られているのは感じましたし、配役についても、俳優がそもそも持ち合わせる個性を素直に使うことを意識しているようにも思いました。一見良くあるありきたりのコメディの体裁をとりながらも、実は練られた脚本で完成度の高いコメディ映画という、正攻法勝負でも力を見せてくれた内田けんじ。次回作への期待がすでにまた膨らんでしまいました。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-鍵泥棒のメソッド



⑨君への誓い

男性のキャラクター設定が巧みで、心優しく思いやりにあふれていながらも、善人になり過ぎず、人間的な感情も素直に露わにするほどよさが、作品にうまく作用したと思います。加えて、個人的にレイチェル・マクアダムスは好きな女優さんなので、自然に感情移入することができました。あんなに愛し合いそして結婚した妻の愛情を取り戻そうと一生懸命になる一途さ、そしてそれでも記憶と愛情を取り戻せずに、取り戻すことを断念する無念さ、いずれも痛いほど彼主人公の気持ちが伝わってきました。どうせなら、もう少し続きを観たかったですね。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-君への誓い


⑩のぼうの城

野村萬斎でなければこの映画はまったく別のものになっていたでしょうね。彼の飄々とした個性が十分に生かされた、華やかでスケール感があり、それでいてユーモアたっぷりの楽しい時代劇に仕上がりっています。特に田楽を演じるシーンは圧巻、素晴らしかったです。それにお殿様が実に魅力的なのですよね。結局最強の戦術は人々を惹きつけ、自分のためにならひと肌脱いでも構わないという人心掌握が一番とでもいうような、長親のリーダーぶりは、ある意味勉強にもなりました。作品としても 2時間半近い長さの映画にも関わらず、全く飽きることなく、最後まで集中して楽しく観られました。映像的にも力が入っていましたし、キャストも子役・若手・ベテランと幅広く揃い、かなりの豪華メンバー。掛け値なく面白かったです。



映画いろいろベスト10 + 似顔絵-のぼうの城