●2011年鑑賞映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

2011年鑑賞映画 ベスト10



恒例の年間ベスト10です。

今年劇場で観た236本に、

今年全国公開された作品のうちDVD等で鑑賞した作品をプラスした中から選定。

ただし、今年については、私にとって近年にはない低調な年でした。

そんな中でも好きな作品10本選んで形にしました。



①八日目の蝉

1位は迷うことなく、これしかないでしょ、と思って選びました。親子の繋がりとは、母性とはいったい何なのだろうか、そんなことを改めて考えさせられる作品でした。血の繋がりがあっても母親らしいことを何もしてあげられない女、自分の産んだ子供でなくてもそれ以上に深い愛情を全力で注いだ女、そしてそんな二人の母親の想いを売れながらいざ自分が母親として何をしてあげられるのか分からない女。しかしその背景にある不幸な出来事がより構図を複雑化しているわけで、いったい誰が加害者で誰が被害者なのか、それぞれの胸の内を思うとせつなくてとてもやりきれなくなり、観ている者の心を揺さぶる力の強さを感じました。女優陣の熱演が光る中、特に小池栄子が秀逸。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-八日目の蝉


②キック・アス

東京などでは2010年公開になると思いますが、当地では1月公開ということで、2011年に組み入れます。この映画については、全く期待外の面白さでした。一見いかにもありがちなアメリカ的なお気楽なアクションコメディかと思いきや、実は無慈悲で残酷な殺戮が繰り広げられるヘビーな部分もあり、そのアンバランスさが独特の魅力を生み出していたように思います。いい意味で裏切られることが多く、観ていて飽きることがなかったですね。主人公の男の子も、変身すればきっとヒーローらしくなるのだろうと当たり前に思って観ていると、スパイダーマンなんかのように超人ぶりを発揮することもなく、キャストで唯一のスターであるニコラス・ケイジもいつものように一人だけで目立って活躍するのかと想像すると、今作ではあくまでも脇役に徹し、そんな意外性が気に入りました。そしてなんといっても「ヒット・ガール」でしょうか。出し惜しみした素顔が最後にようやく観られる演出も心憎く、十分に楽しませていただきました。

映画いろいろベスト10 + 似顔絵-キックアス


③彼女が消えた浜辺

こちらも全国的には2010年公開ですが、当地では2011年からの公開。近年のイラン映画の進化ぶりには驚かされるばかりですが、ついにここまで来たかという驚きでいっぱいでした。終始緊張感を緩めることのない見事な集団心理ドラマを、ミステリー調の味付けで、娯楽作品としての要素も十分に備えたものに仕上げています。一人の女性が行方不明になったことをきっかけに、様々な事実が少しずつ明かされていく中、ストレスがピークにたまった人々の思惑が交錯し、実にスリリングともいえる心理戦が繰り広げられるのです。怒りを感情のままにぶつけるもの、なんとか嘘で乗り切ろうと策を講じるもの、自分のしたことに対する責任で押しつぶされそうになっている者、まさに他人事でなんとかその場を逃げたいと思っている者、とにかく自分には責任はないと人を責めてばかりいる者…。刻々と状況が変わっていく中でのこの描写は、観ている者をひきつけて離さないには十分でした。そしてエリを演じた女優さん、これが恐ろしく奇麗なのですよね。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-彼女が消えた浜辺


④モテキ

予想外の大ヒットとなり話題を呼んだラブ・コメディ。テレビとは女優陣を一新させたところが、これまでの単なる人気ドラマの映画化作品とは違うところ。素直に楽しかったです。音楽の使い方も、途中で挟まれるミュージカルシーンも、バラエティ豊かなゲスト出演者も、そしてエンドロールのセンスも、すべて賑やかさとごちゃ混ぜ感を演出していて、これはこれで一つの統一性とみてもいいのではとさえ感じさせられました。ストーリーの成り行きだけでなく、次はどういう手法で見せてくれるのか、誰を使ってくるのか、何の音楽をどんな形で使ってくるのか、そういった部分にもワクワクさせてもらい、逆にどうせテレビドラマの映画化作品だからと、肩ひじ張らない姿勢が、いい方に向かったのではないでしょうか。そして長澤まさみの使い方が大成功。小悪魔ともピッチともいえる男を惑わす奔放ぶり、それを覆い隠す満点の笑顔、でも実はさらに隠された別の一面があるというこの役。これで彼女の引き出しも広がったのでは?


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-モテキ


⑤台北の朝、僕は恋をする

ヒロインのアンバー・クォがとにかくキュートで、彼女の魅力につきます。台湾の国民的スターというのも納得!その彼女の魅力を引き出すべく、可愛くて優しいラブ・コメディに仕上げたという感じです。男の子がみんなどこかのんびりした雰囲気ですし、悪役であるはずの4人組は間が抜けていて、どこか憎めないのです。罪を犯そうというのに、常にオレンジのジャケットを着ていて、すぐに誰だかばれてしまうのに!と突っ込みたくなる馬鹿さ加減。でもそのおかげで、観ている方としては、安心して観られるというのもありましたしね。それにコンビニの女の子も可愛いですし、色使いもなかなか素敵。展開自体はたわいのないボーイ・ミーツ・ガールの話なのですが、とにもかくにも、この作品の持つとびっきりの可愛さ、それだけでも十分に惹きつけられてしまいました。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-台北の朝僕は恋を要る


⑥リアル・スティール

ハリウッド映画に期待するのはこういうものなんだよね、と改めて認識させられるような王道映画です。設定さえ聞けば結末までが見えてしまうような定番の弱者が強者に立ち向かうストーリー展開、主人公に襲う様々な障害、いかにも作られたような適役のキャラクター等々、ベタベタに塗り固められたおなじみのプロット。でもいいのです、これで。生活感漂う狭い場所から、全米が注目するきらびやかで華やかな舞台に上り詰め、大勢の観衆の目の前で大注目とそして喝采を浴びるまでのその盛り上げ方は、やはりハリウッドならではのスケール感が成し得る技。スカッとした気分で劇場を後に出来る痛快SF映画でした。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-リアルスティール


⑦アントキノイノチ

決して派手な作品ではないけれど、生きること、命のあることについて深く考えさせてくれる素敵な作品。主演の二人、特に榮倉奈々が、心に傷を負った繊細な役を好演し、同じような経験をしていない者でも、その痛みがきちんと伝わってくるような演技でした。設定の割にドラマティックな展開があるわけではなく、映画自体は淡々と進みますが、その静けさゆえに、心を揺さぶるということもあるのでしょう。ただラストのありがちな処理は好みではありません。もう少し必然性と説得力ある結末でしたら、もっといい余韻を持って観終えることができただろうにと思うと、その点が惜しい気はしました。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-アントキノイノチ


⑧幸せの始まりは

ラブ・コメディとしては久しぶりに引き込まれてしまい、どっぷりと雰囲気に浸かってしまいました。確かに脚本的には粗が多く、事業に絡めた父と息子の関係の下りはかなり雑ですし、オーウェン・ウィルソン演じる恋敵の野球選手の描写も表面的ではあります。それにこの「やる気の感じられない」邦題の付け方もいただけません。しかしそれらを補うのは主役2人の演技。リース・ウィザスプーンはもともと上手い人ですし、ジャンル的にも得意分野でしょう、非常に生き生きして見えました。そして意外にもポール・ラッドが素晴らしく、もっとオーバーアクションで無理やり笑いをとろうとするのかと思いきや、真摯に恋する男を演じていたところに共感を覚えました。加えてその演技をさらに魅力的なものとして引き出したのが、カメラの使い方、カット割りです。特にアップの使い方が巧みで、例えば歯磨きのシーン、口を手で押さえられるシーン、エレベーターのシーン等々、決して美人女優ではないウィザスプーン、同じくイケメン俳優ではないラッドをどうチャーミングに見せるか、とても冴えていたように思います。さらには出産後の面会シーンでの会話における現代のアメリカ社会(いや、失業者の多い日本にもかなり通じるものがありましたね)の状況をチクリといじってみたところも、にやりとする場面でした。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-幸せの始まりは


⑨白夜行

非常に見やすく分かりやすくまとめていたと思います。原作を読んでいないと全然理解できないということもないですし、時間的な制約を考慮すると頑張っていたのではないでしょうか。ここのところハイペースで作品を作り続けている深川監督ですが、無難にまとめた手腕は評価してもいいかもしれません。メインの3人以外は、使い慣れた俳優さんを優先的に配役したような印象ですが、その分地に足をつけて臨めたということもありそうです。1本の映画としても面白く観られました。堀北真希も健闘していたと思います。テレビでの番宣出演などを観ている限り、素を出して無邪気にはしゃぐこともなく、お行儀よく体裁を保っているようなクールさ(そこが好きなのですが)を常に感じる女優さんですが、そのあたりの個性はこの作品では生かされていたのではないでしょうか。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-白夜行


⑩洋菓子店コアンドル

オーソドックスですが、最近乗っている深川監督らしく、丁寧に作られた好感の持てる作品になりました。奇を衒わずに、登場人物たちのお互いの関係を順に追って丹念に描いたことで、観ている側としても自然に作品の中に入り込むことができました。抜群の腕を持ちながらトラウマを抱えて本来の仕事をできなくなってしまった男、井戸の中から出て自分を知ることですべきことを見つけた若い女性、それぞれありがちな人物設定かもしれませんが、個性あるキャラクターとうまく交じらせることで、ドラマも魅力的なものになってきます。キャストもそれぞれ安定した演技で、安心して観られる作品でした。

映画いろいろベスト10 + 似顔絵-洋菓子店コアンドル