●阪本順治 監督映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

阪本順治 監督映画 ベスト10




久しぶりに日本の映画監督をとりあげます。

ということで阪本順治監督のベスト10です。

大阪出身らしい独特の人間臭さをどの映画からも感じる監督で、

とにかく熱い!男臭い!といったイメージではありますが、

実は繊細に人間を描いていたりもするのですよね。




①闇の子供たち

タイにおける人身売買・臓器売買を描いた阪本順治渾身の意欲作であり、大きな問題を提起してくれる社会派映画として、見ごたえのある作品です。かなり阪本色が強く現れた作品でもあり、ぐいぐい引き込んでいく力強さに引き込まれていきました。特に衝撃的なラストを観てしまうと、重い気分・辛い気分が後々にまで残る後味の悪い作品ではあるのですが、倫理観、宗教観、道徳観だけで語り切れない奥深い問題として、とにかく印象的に強く残りました。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-闇の子供たち



②トカレフ

阪本監督らしい「熱さ」を感じる復讐映画。息子を殺され、妻を奪われ、職をなくし、そんな主人公に見ている側としても必然的に感情移入し、復讐の鬼と化す彼に肩入れしたくなるのも自然な流れでしょう。最後には復讐を遂げた道夫に完全に同化した気持ちで観ていました。佐藤浩市演じる男の憎々しさの演出も冴え、魅力的な作品でした。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-トカレフ



③どついたるねん

阪本順治を映画監督として世に送り出した作品でもあり、元ボクサー赤井英和を俳優に導いた作品でもあります。ボクサーである主人公を演じるのが赤井ということで、まさにはまり役。監督、俳優とも粗削りさが作品にマッチして、魅力的な作品になっています。元ボクサーと現役ボクサーの試合シーンだけに映像的なリアリティも抜群。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-どついたるねん



④行きずりの街

そもそも原作自体がちょっと古臭い匂いのするハードボイルド。ミステリーはほんのとっかかり程度で、サスペンスとアクションに男女の愛憎劇と金や権力を巡る汚い大人の世界を絡めて描いたのがこの作品。70年代から80年代半ばぐらいによく見かけた無茶・無理の積み重ねによるメロドラマティックなハードボイルド映画を、2010年に蘇らせたといった感じですね。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-行きずりの街



⑤亡国のイージス

訓練航海中のイージス艦に迫る危機を描いたポリティカル・サスペンス。それぞれ別の立場に立った人間たちが任務を全うするために、ぎりぎりの選択を緊張感の中で何をどうしていくべきか、戦っている様子が熱く伝わってきます。キャストにも名優が揃い、見応えのある娯楽大作として楽しめました。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-亡国のイージス


⑥ぼくんち

観月ありさ演じる「お姉ちゃん」と二人の兄弟を中心に、最下層の暮らしの中でも必死に生きていこうとする姿、そしてそんな中でも思いやりを失わない子供たちの健気さを描いた人情ドラマです。苦しい生活ではありますが、兄弟の成長を見ていると、特に子供のうちから自立した精神を育んでいるこうした環境は、それほど悪いものでもないのかもしれない、なんて思ったりもしてしまいました。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-ぼくんち



⑦座頭市 THE LAST

阪本監督が観るに耐えられない映画を作るはずもなく、作品としてはごくごく普通の娯楽時代劇にまとめ上げていたと思います。キャストも脇役まで豪華ですし、見所はそれなりにあったでしょう。香取慎吾の座頭市に対しては、色んな意見があるとは思いますが、勝さんと比べてはちょっと気の毒。新しい座頭市像を作り出そうとした意欲は買いたいです。ただ、そのわりに、いまひとつ香取の市に魅力を感じなかったのも事実であり、そのあたりは俳優の責任というよりは、演出にやや問題があったのではないでしょうか。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-座頭市 THE LAST



⑧顔

殺人事件を犯し、整形をしながら日本じゅうを逃げ回った実在の女性(有名な事件ですね)をモデルに作られた作品は、主演の藤山直美が熱演。必死に逃亡を続ける主人公の姿が哀れでもあり、逆に力強くもあり、また憎くもあり、応援したくもなり。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-顔



⑨王手

赤井英和主演で、賭け将棋で生きる真剣師の世界を描いた阪本の初期の作品。『どついたるねん』に通じる勝負の世界の熱さを感じる作品ではありましたが、せっかくここまで将棋どっぷりの映画にしたのなら、将棋を知っている者としては、もう少し将棋盤の攻防も見せて欲しかったです。盤の様子が分からない、外から見た対戦者だけの描写では、いまひとつ緊迫感が伝わってこなかったかな。惜しい。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-王手



⑩大鹿村騒動記

原田芳雄の遺作となった人情コメディ。伝統の村歌舞伎が行われる山間の村で、逃げた女房と一緒に逃げた幼なじみの帰郷に戸惑う主人公の悲哀がおかしみを持って描かれています。


映画いろいろベスト10 + 似顔絵-大鹿村騒動記



そのほか『どいつたるねん』に続くボクシング映画の『鉄拳』、藤原竜也・水川あさみといったちょっと毛色の違うキャスティングが新鮮だった『カメレオン』、金大中事件を描いた社会派映画『KT』、おばさん応援歌『魂萌え!』、ノスタルジックな『この世の外へ クラブ進駐軍』といずれも紙一重です。