パズル・パレス 上・下
ダン・ブラウン, 越前 敏弥, 熊谷 千寿 パズル・パレス (上)
ダン・ブラウン, 越前 敏弥, 熊谷 千寿 パズル・パレス (下)
ダン・ブラウンのデビュー作(1998年)である。
国家安全保障局(NSA)の話であるが、実はタイムリーにも私が好んでよく観ている海外テレビドラマ「エイリアス」の中に出てきていたから、何という巡り合わせかと思ったものだ。
生憎と引越を境に「エイリアス」が観ることができなくなり、この本のみで我慢と言うことになったわけだが。
物語はNSAの元暗号解読員が、NSAの暗号解読用のスーパーコンピューターの存在を世に示すよう要求し、そのために解読不能の暗号システムを構築し、それをインターネットで公開すると脅迫した。そしてその脅迫者が殺される場面から物語は始まる。
ダヴィンチ・コードから較べると、話の展開に粗削り感というか、場面の移り方が早かったりするのだが、これだけのことを調べつくして書くということはどれだけの根気が必要だろうかと思うと、圧巻である。
また、実際にNSA主導で構築されているとされる全世界的通信傍受システム「エシュロン」が公になったのは、この本が刊行されて10年も後のことだというから、ダン・ブラウンの先見の明には感心させられる。
コンピューターの用語などバシバシ出てくるので、コンピューター自体に嫌悪感を抱く世代には、読んでいてもピンとこない部分があるかもしれないが、やはり暗号にまつわるものを解くという読み物は面白くないわけがない。そんな名前ないぞというような日本人名とかの設定には流石に笑ってしまうが、それは抜きにしても劇的でスピード感があり、面白いといえる作品なのである。
「イエスの古文書」上・下
アーヴィング ウォーレス, Irving Wallace, 宇野 利泰 - イエスの古文書〈上〉
アーヴィング ウォーレス, Irving Wallace, 宇野 利泰 - イエスの古文書〈下〉
- 「ダヴィンチ・コード」が出てから、古文書やらキリストの真実みたいな内容の本が、2匹目のどじょうを得んと続々と出されているのだが、実はこの本は「ダヴィンチ・コード」が出される30年前に書かれた歴史ミステリーなのである。
- もとは『「新聖書」発行作戦』として新潮文庫から出版されたものを改題・再編集したものである。
ダヴィンチ・コードと違い、事実に基づいているというわけではないが、キリストの復活についての膨大な資料や知識を駆使した実に面白いサスペンスだ。
イエスが磔刑の後、復活を果たし、人間としての生涯を終えたという、イエスの実弟による福音書が新たに発見されたことから始まり、それ故キリスト教史始まって以来の新聖書の発行を計画する出版社。
その広告を手がける主人公・スティーブン・ランダルが、本当にキリストは復活を果たしたのか、真実を探っていくというもの。
上下巻あっても、長さがさほど気にならないが、30年前に書かれているからなのか、展開に少し間延びを感じるような。
でも、ここで裏切られるのか?また裏切られるのか?というハラハラ、ドキドキは非常に面白く、”世界的大ベストセラー作家の頂点”と言わしめる作品であると思う。
ダヴィンチ・コードにはまった方なら、これも読んでみてもかなりイケるはず。
「もの忘れの処方箋」
著者:宇野正威(うの まさたけ)
出版元:NHK出版
これは、アルツハイマー病についての内容である。
実際に、私の父がアルツハイマー病の診断をうけ、あれよという間に進行してしまい、介護の方法も、病気についても詳しく知らぬままに精神病院への入院となっってしまった。
そして、色々と情報を集めている時に、臨床美術というものを知ることとなった。
そこで私はこの本を知ったのだった。
著者である宇野先生は、国立精神・神経センター武蔵病院の院長を経て、現在は吉岡リハビリテーションクリニック院長である。
人間の脳はどうして老化するともの忘れをするようになるのか、もの忘れと呆けの違い、また例えアルツハイマーだと診断されても、恐れることなくそれに対処できる方法があることを、解りやすく解説している。
介護の悲惨さは言うまでもないが、その中でもうまく患者と介護者が生活していける方法があるのである。
薬はもちろん、美術療法や心理療法、また早期発見が大きな鍵になることもこれを読めばわかってしまうのである。
介護の根源にある人間の存在論に至るまで、もしも家族に認知症の人がいて、介護したことがるものなら、涙してしまうような、考え方を根本から変えてくれる導きの書なのである。
それは精神論で癒されるのでなく、知識や情報を知ることで得られる満足感とでも言おうか。
もしも、あなたが、また家族が認知症だと診断されても、この本があればしっかりとした心構えができることは保証する。
いよいよ始まる高齢社会の一番身近なのに知られていない認知症について、知っておくことは絶対に損にならないだろう。何よりも介護者には是非、読んでみて欲しい1冊。
「1リットルの涙」と「いのちのハードル」
木藤 亜也 1リットルの涙―難病と闘い続ける少女亜也の日記
木藤 潮香 いのちのハードル―「1リットルの涙」母の手記
フジ系のテレビドラマで今秋から放映されている同名の手記。
通常なら、こういう手記など読みたいと思わない方なのだが、実は私の娘も主人公の亜也ちゃんと同じ病気なので、つい手にとって読んでしまった。
亜也ちゃんの病気を受け入れて、それと闘っている最中の心のすべてが書かれている。
いや、全てなんかじゃない。ほんの一部なんだろう。
これを読んで可哀想だとか、そういう病気は大変だねと思うことはあるだろう。
でも、違う。
きっと、当事者になってみないときっと判らないものだろう。
この病気に限らず、障害と名のつくものを受けた者と、そういう身内を持った者が読んだ時、初めて同調できる類のものだ。
これを読んで私は1週間ほどは笑うことすらできなくなった。
テレビを見て毎回泣いた。娘もたまたま途中から見てしまったことがって、自分も同じ病気か?と訊いた。
余計に娘には見せたくなかった。
脊髄小脳変性症は型によっても個人差もあって、進行速度は本当に違う。
そして、それが大半が遺伝性のものであるということから、本人はもちろんその家族はどこにも持っていきようがない憤りを抱える。
今回の亜也ちゃんのケースは遺伝性のものでないようだが、それでも当時は有効な薬もなく、情報もなかった。それゆえに、つらいことが多かっただろう。
その気持ちの1つ1つ、それを見ることしかできなかった母親の潮香さんの手記は、どうしても読みたかった。
そう、私と同じ立場の人はどう考え、受け入れ、接していくのか、私は前からずっと知りたかったから。
亜也ちゃんの日記は痛く、切ない。
この先、何年先なのかわからないが、いずれ同じ道を辿ることになる娘を想像する時、私には痛すぎた。
そして母親の手記は、そんなつらさを語るのではなく、ただ淡々とありのままを綴るものだった。
それだけに、人間の在り様が見えてくるようだ。
この本を読んで、この主人公たちを憐れむのではなく、いつか普通に接し、当たり前のように無意識に手助けをしてあげられる人が増えてくれたらいいなと、私は思う。
同調するのではなく、感じてくれるだけでいい。
現実に存在した、これからも存在する人達の気持ちを知ることは、きっと自分の中の小さなターニングポイントになるだろう。
是非、手にとってみてほしい。
ラッシュライフ
- 伊坂 幸太郎
- ラッシュライフ
- 日常ではありえないような本が読みたくて、本屋の棚をぐるぐる回っている中で、帯の「一気読みまちがいなしの傑作」とあり、手にとる。
- 普段ならあとがきなどは読み終わってから読むことにしていたのだが、この本だけはあとがきをある程度読んでから購入した。
- そう、「進化する伊坂幸太郎」と同じく帯にあったからだ。
- この作品の前はどんなものを書いていたのかと興味がわいたからだ。
さて、読み始めたら、「最高時速240キロの場所から物語が始まる」と話が始まる前ページにある。
その通りに、仙台に向かう新幹線の中にあっという間に入り込み、つい物語のスピードに馴らされていく。
挿絵にエッシャーのだまし絵があることも、この物語の心臓部を暗示している。
どうどう巡りなのに、時間がない世界。
バラバラなはずが繋がっている。
まさしくエッシャーのだまし絵のように。
そこは時間も場所も、皆同時進行のようで、全然違う。人のつながりも無関係に見えて1つの線上にいる。
う~ん、この人は凄い!
これだけ練っていないようで、実は綿密に計算している作家もいないのではないか。
言葉が難しいわけでないのに、何だか伊坂ワールドへ迷わされたような。
それでいて変なモヤモヤ感がない。
ごく自然に存在する自分たちの世界の中の話だけれど、
ジェットコースターで一気に違う世界を見て楽しんで、ふとまた自分の日常へ降りてきたような、
そんな一冊。
亡国のイージス 上・下
久々にのめり込んだ作品。
基本的に戦争ものとか、軍隊ものは好きで、映画館で制服を展示してあったり、イージス艦がかっこよいなlぁと惹かれて、観るつもりでいたのだが、レディースデーでなおかつ子供が学校から帰ってくるのに支障の無い上映というのが中々合わずに、つい見逃してしまうことになって、古本屋でみかけて読んでみる気になったのがはじまり。
しかし、武器マニアとか自衛隊マニアなら垂涎ではないだろうかというほど、イージス艦や武器の詳細が書かれており、階級はもちろん専門用語などがまんま出てくるので、イメージできる人には面白いが、こと女性だとうんざりするのかもしれないなと思いながら読んでいった。
そう、私は実は防衛大に入りたいとさえ思ったことのある女なので、この手のお話はとっても好き!なのだ。だから武器の説明などはとてもわくわく。
まあ、そんな趣味の話はどうでもいいのだが、自衛隊という組織の日本における位置づけ、あり方などをこれを読んでみて考えてしまった。実際にありそうだからうなずけるというか、単なる公務員と化してしまっている自衛隊の本質を問う内容に、テンポある展開、悪者は誰だという疑惑の変遷が重なって、ついつい夜更かしをしてしまう作品だった。
仙石先任伍長は映画では真田広之とスリムで動きも機敏な俳優を起用しているが、原作ではかなり太目のいかつい親父だったりするところが面白い。その他登場人物が皆魅力的なところが、話を読み進めていく上では欠かせないものだ。こんなにいい男ばっかりの世界があるなら、マジで見てみたいほど。
読んでから映画を観るか、映画を観てから読むのか、ということになるが、これこそ読んでから観るべきだろう。だってイージス艦の細部など用語だけではわかりづらいのだから。
読めば実写を見たくなる。そんな作品。
霊の棺
-
高橋 克彦 霊の柩
- 「竜の柩」から何年経ってしまったのか、九鬼虹人たちのその後の話を、私はずっと積読したままでいたのだったが、京都では触手が動かなかったものが、埼玉に引越してからページを繰ることになった。
「竜の柩」では世界各地にある竜の痕跡をたどり、イシュタル神の導きで縄文時代へ飛び、ようやく現代へと戻るはずだった九鬼虹人とその仲間たち。タイムトラベルの船が到着した先は大正8年の津軽だった。
なぜここへ着いてしまったのか、どうしたら戻ることができるのか?若き日の宮沢賢治、江戸川乱歩と出会い、神と交信すべくオカルトブームに沸くロンドンへと旅立つ。霊魂との交信、タイムトラベルの逆説などを暴いていく。
確かに一度はタイムとラベルでもして過去へと戻ったら面白いと考えたことがあるだろう。過去に戻った自分がすることは歴史を変えていくかもしれない危険を孕むことを、これを読んでいて実感するに違いない。
オカルトや超常現象などを好きな人にはちょっと楽しめる1冊。
デセプション・ポイント 上・下
ダン・ブラウン, 訳:越前 敏弥 デセプション・ポイント 上
ダン・ブラウン, 訳:越前 敏弥 デセプション・ポイント 下
「ダ・ヴィンチ・コード」のダン・ブラウンの最新作。
帯のとおりに”読み始めたら止まらない”、”ロケットのような猛スピードの展開ですれっからしの読者さえも虜にする”と、ただならぬ書評を載せているのだが、まさしく、中々本を置くことができなかった。
ただし、私は義母と同居している身ゆえに、仕方なく置くことはあったが。
大統領選が激しさを撒く中、NASAによる科学的大発見がなされた。国家偵察局員のレイチェルはその確認をすべく南極へと向かう。その発見は現職に優位となるのか、はたまた対立候補である彼女の父に味方するのか、表題のごとくデセプション・ポイント(偽りと欺きの極地)である、ホワイトハウスで繰り広げられる駆け引きと陰謀とは何か。
またしても新たな魅力ある主人公(今回は女性)を引っさげて、知的スリルと興奮を煽る1冊。
この本を読んだあたりで、ちょうど海底探査とかNASAの発見だとかのニュースがあって、なんてタイミングがいいんだろうと、私のインスピレーションで読み勧める読書勘が当たったという印象を持ったのだが、またしてもダン・ブラウンは最高だ!と言わしめてしまう作品を送り出した。
きっとこいつも映画化間違いなしだ。
陰摩羅鬼の瑕
- 京極 夏彦
- 陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず)
- 久々の京極堂シリーズの作品である。やはり京極作品は長編にかぎる。
- 今回の事件の場所は長野県の白樺湖というだけに、長野出身の私は作品にのめりこみやすい。
- 実際には、登場する村や洋館など無いのだが、あの榎木津が宿泊していたのが諏訪の旅館とあっては、もういやがうえにも引き込まれて・・・。
- 白樺湖畔にそびえる洋館は夥しい数の鳥の剥製や装飾に囲まれた「鳥の城」である。そこの主である伯爵は5度目の婚礼を控えていた。4度にわたる婚姻は、すべて花嫁が初夜に命を奪われたために破綻していた。今度こそはと花嫁を守るべく差し向けられたるは探偵・榎木津礼二郎。熱のために一時的に視力を奪われた彼をサポートすべく使わされた小説家・関口巽。
- 二人が暴き出す洋館の謎と憂いと真実。京極堂の憑き物落としの行方は・・・。
- 「おお、そこに人殺しがいる!」榎木津の最初の言葉の裏にあるものとは?
- 百鬼シリーズなどの中篇が最近多かっただけに、 久々に京極堂の憑き物落しが見られるとあって、頁数は気にせずに、一気に読み進める。
- どうせ妖怪物でしょ、と毛嫌いするなかれ。 すべては人のなせる果て。
火の粉

著者: 雫井 脩介
タイトル: 火の粉
つい先日、土曜サスペンスで映画化されたこの作品。
久々に読み出したらとまらない作品だった。
自分が無罪にした男が突然隣家に引っ越してきた。
下した判決が果たして正しかったのか、それを身をもって考えさせられる羽目になった元裁判官とその家族。
疑えば疑うほど怖い、信じれば信じるほど嵌められていく。
次の展開を創造すればするほど、ページをくる速度は上がる。
565頁の厚みなどまったく気にならない、犯罪小説の醍醐味が味わえる。
