新藤 悦子, 小松 良佳
またまた、「Ciel Bleu 」の四季さんところで気になった作家さんです。
著者、新藤悦子さんは、ノンフィクションライターでもあり、ファンタジー小説家でもあるそうな。この「青いチューリップ」はファンタジーではないけれども、ノンフィクションでもなく、この時代にあったかもしれない少年少女の物語。
ちょうど、これ、夢枕獏さんの「シナン 」と時代がかぶっているんですねー。その辺の予備知識がなく、このてんこ盛りの本を読むのはちょっと辛かったかも?
新藤さんの本のどれかを読むつもりで、最初にこの二冊に行ってみたのだけれど、うーむ、これは四季さんも書かれているけど、一冊目の「青いチューリップ」はちょっと詰め込み過ぎですね。
■四季さんの記事
・「青いチューリップ」「青いチューリップ、永遠に」新藤悦子
クルディスタンの山の民であり、羊飼いの息子、ネフィはある日、父、カワと共に、山の中で旅人、バロに出会い、彼を助ける。バロはオスマンの国の都イスタンブル、スルタンの街から来たのだという。バロが歌う「青いラーレ(チューリップ)」の歌に、父カワは顔色を変える。赤いラーレは数あれど、青いラーレは都にはない。また、その歌も父にとって特別なもののようで…。
父はその歌をバロに教えた人物に会いに、ネフィは山に咲く青いラーレを、有名な栽培家であるアーデム教授に見せるために、巡礼の旅と称し、山を下り、エユップまで旅する事になる。
ネフィは『春の使者』と名付けられた山のラーレを手渡してからも、アーデム教授の元を去らず、学校に通わせて貰い、チューリップの交配や薬草の知識もつけ、教授の庭仕事の右腕として育つ。絵師を夢見る教授の娘、ラーレと共に…。勿論、イスラムの国であるトルコでは、女が絵師になれる望みなど、あるはずもないのだが。
山のラーレが教授の庭で咲いてから七年、とうとう、二人は真っ青な色を持つラーレを咲かせることに成功する。
扉には、「こんな花、咲かせてはいけない。よからぬことが、かならず起こります」という不吉な言葉が記されているのだけれど、まさにここから青いラーレを巡って、アーデム教授の一家の元に不幸が訪れる。アーデム教授はスルタンの怒りを買い、牢に入れられ、家財一切は召し上げられてしまう。
一巻は、このアーデム教授を助けようという、ネフィとラーレ二人の冒険譚。いくら、宮廷の絵師頭、シャー・クルの孫娘だからとはいえ、こんなにうまくいくか??というところも多々あるんだけど、物語はガンガン進む。また、先ほどは「二人の」冒険譚と書いたけれど、ほんとはシャー・クルがお目付け役としてよこした、一番弟子のメフメットも、この旅のメンバーの一人。ネフィやラーレが生き生きと描かれる分、冷静沈着で彼らよりも少し大人のメフメットは少々分が悪い感じ。
二巻は、ラーレをめぐる恋の話と、成長して大人の入り口に立った、彼らそれぞれがどう生きていくか、というお話。一巻に比べると、だいぶすっきりしているけど、やはり、ここでもネフィの恋敵メフメットはどうも分が悪いなぁ。
もっともっと細かく丁寧に語る事が出来る部分も、展開を重視するタイプの児童書なのか、すごい勢いで飛ばしていきます。それでも印象に残ったのは、都が贅を尽くしている頃に、苦しんでいる東の辺境の人々の事や、スルタンの栄光がだんだんと翳って行くところ。ちょっとこの後の、オスマントルコの時代的な背景が自分には良く分らないのですが…(それでも、とりあえず、Wikipediaのスレイマン一世の項にリンク )。栄光のオスマントルコという大国と比較しても、ネフィやラーレの若さは眩しく力強い。一巻の旅の間、ネフィ、ラーレ、メフメットは、これまで自分たちが知らなかったような世界を見、それによって彼らの世界観は変わる。これまた、生き生きと伸びていくネフィ、ラーレに比べて、メフメットはマイナス面の影響しか受けていないようにも思うのだけれど…(というか、メフメットはどうやって立ち直ったんだ??)。
ペリ(妖精のようなもの)が出てくるところでは、「砂漠の宝―あるいはサイードの物語 」を思い出した。こちらは、実際の旅と物語が絡み合っていくお話なのだけれど、旅と言えば、これぐらいじっくり語れてしまうものなのにねえ。本筋ではないからか、「青いチューリップ」では、キャラバン・サライなどの話も出てくるけれど、あくまでさらり。でも、続きもありそうな終わり方なのです。次は、ネフィの砂漠への旅かな??
もくじ~青いチューリップ~
一 都へ
二 幻のチューリップ
三 アーデム捕らわれる
四 宮廷
五 流れ者バロ
六 キャラバン
七 山の長老団
八 洞窟に絵を
九 炎の祭り
もくじ~青いチューリップ、永遠に~
一 アーデム教授の秘薬
二 ユダヤ人医師モシェ
三 ラーレの結婚話
四 謎の招待状
五 シャー・クル倒れる
六 妖精ペリ
七 らくだとげの秘密
八 ハレムの女楽師
九 ペルシアへ