2007-02-08 23:06:36
「砂漠の宝―あるいはサイードの物語」/物語を織る。まるで絨毯のように
テーマ:福武書店
ジクリト ホイク, 酒寄 進一 - 「砂漠の宝―あるいはサイードの物語
」
トゥアレグ族の少年、アブリ。彼の父は、駱駝の隊商を率いる長のアフマド。アブリにとって、これが最初の長旅だった・・・。熱い日差しを浴びて砂が煌き、風に煽られた無数の砂粒がたなびいていく。アブリは自らの手で大切に育て上げた、駱駝のアールシャに乗り、砂漠を行く。
「ウルド!ウルド!進め!もっと速く!」
アブリたちの隊商は、砂漠の中に忽然と現れた旅人と一緒になる。スレイマンと名乗るその旅人は、藍色のガンドゥーラを纏い、腰にはアブリがこれまで見たこともない見事な銀の短剣を佩いていた。
男たちは砂漠の中でも、イスラムの聖地メッカに向かい、夕べの祈りを欠かさない。さて、旅人は名をスレイマン=エル=ハカヤティというのだという。「昔話の語り手(エル=ハカヤティ)」だという彼は、アブリにせがまれ、食事やお茶の休憩の度に、ある少年の物語を語るようになる。
「まわりの世界をよく観察するのは大切なことだ。そこにはたくさんの不思議な物語が隠されている。それを見いだしたら、あとはなりゆきにまかせればよい。物語の始め方さえわかっていれば、あとはひとりでに発展していくものだ。主人公たちは命を吹きこまれ、おまえが想像だにしてなかったでき事にあうことさえある」 (P160より引用)
物語の中の物語にあるこの言葉のように、昔語りの主人公とされたサイード<幸せなる者>は、スレイマンとアブリ、隊の他の者たちに命を吹き込まれる。水の妖精(ペリ)を名付け親に持つサイードは、幸福を求めて旅に出る。それは「砂漠の宝」を求める旅。現実のアブリたちの旅の途中で、彼らが見付けたものが話の接ぎ穂となり、サイードの物語は続いていく。それはまた、アブリたちの旅といつしか重なっていく・・・。
物語を作るのは、絨毯を織るのと同じ事。同じ色を使い過ぎるのも禁物だけれど、決まった繰り返しもなくてはならない。主人公は物語を一つに纏める縦糸であるけれど、色柄や模様は、織り手が繰り出す横糸で自由に変えることが出来るのだ。
児童書であり、勘のみで借りてきた本だったのだけれど、これが良かった! アブリたちの旅、サイードの冒険。初めての長旅に、見るもの全てが新しいアブリ。魔人や妖精(ペリ)が身近に思えるような砂漠の様。ニジェール河(イッサ=ベール河)から始まり、モロッコ(マグレブ=エル=アクサ)、カイロ(エル=カヒーラ)、イエメン、再びニジェール河と、様々な人(と動物)と出会いながら、サハラ砂漠の周りを旅するサイード。この二つの物語が如何にも巧い具合に絡み合う。まさに、語り手の決まり文句も、決まるというもの!
誉むべきかな、アッラーの神。われらに言葉を授け、昔語りする術を与えたまいしアッラーの神に感謝!
物語はやっぱりいいなぁ。
これ、福武書店の児童書、ベスト・チョイス(選びぬかれた子供の本)というシリーズなんだけど、他の本もなかなかに気になるラインナップ。気が向いたら、他の本も借りてこようと思います。
◆トゥアレグ族(Wikipediaにリンク )
◆トンブクトゥ(Wikipediaにリンク )
←ポール・オースターの『ティンブクトゥ』は関係あるの??
* 臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡下さい。











1 ■無題
つなさん、こんにちは~。
「砂漠の宝」、面白かったです!
サイードの物語が、単なる作中作に終わらなくてびっくり!
いやあ、いいですねえ。
それに語りの最後の決まり文句、私も好き好き♪私が特に好きなジャンルって、突き詰めると口承文学なので
こういうのはほんとソソります。
いやあ、物語ってやっぱりいいですね~。
素敵な本を教えて下さってありがとうございました。
トルコもペルシャもいいけど、アラビアも素敵。
今年はほんとこの辺りを集中して読みたいです。