「一日江戸人」/お江戸の町で、暮らしてみれば | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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杉浦 日向子

一日江戸人 (新潮文庫)

周期的に読みたくなるのが、杉浦日向子さんの江戸の本。また、そういう時って、図書館でぱっと目に入ってきたりもするのです。

杉浦さんが愛おしんで語り、時に図説する、江戸の生活の数々。今回もたっぷり楽しみました。

「宵越しの金は持たない」ではないけれど、江戸の町人はどうもかなり適当な感じでも生きていけたよう。お金が無くなったら働き(それも適当な大道芸だったり、近所の手伝いだったり)、お金が入ればのんびり。太平の世だから、こういうことも出来たのかなぁ。備えなくともこれだけ気楽に過ごせる楽天性は、現代人には失われたものだよね。その証拠に、江戸で名のある商人や職人は、ほとんどが地方出身者だったのだとか。

江戸の色男、美人の解説も面白い。
江戸人が選ぶ「男の中の男」、すなわち「江戸の三男」とは火消の頭、力士、与力の三職のことをいう。職業柄、男気があってかっこいいこれらの男たちとは別に、一般の町人の内では、ムキムキの肉体美ではなく、色白のやさ男が希少価値として持て囃されたのだとか。なんてったって、江戸の暮らしはほとんど人力。普通に暮らしていても、それなりに筋肉はついてしまうし、褌一つで働いている人も多いので、肉体美にはさほど関心がなかったみたい。

江戸の美人は、鈴木晴信が描く笠森お仙のような七頭身のあどけない様から、二十年後にはきりりとした濃い眉の十頭身美女、更にその三十年後にはちょっと凄みのある六頭身美女と、そんな風に移り変わったそう。「美人」は時代で変わるものとはいえ、時代が新しい方が、むしろプロポーションが悪いのが面白い。しかし、七頭身はともかく、十頭身なんて、現代でもほとんどいないよねえ。 

町人の気楽さに対して、将軍の生活の窮屈なこと! 年中無休の将軍職は、かなり厳しいスケジュールに縛られていて、この規範的な将軍の日課を実践したと伝えられる十四代家茂は、即位の八年後、二十一歳で病没しているのだとか(原因は心身の過労だといわれている)。他の将軍はどうも適当にさぼっていたようだけれど、それにしても大変なスケジュール。お江戸に生きるのであれば、武家、将軍ではなく、町人として生きるのが幸せなようです…。

目次
第一章 入門編
 大道芸
 生涯アルバイター
 義賊列伝
 江戸の奇人変人
 How to ナンパ
 江戸の色男
 美女列伝
 ザ・大奥
 将軍の一日
第二章 初級編
 長屋の生活
 浮世風呂
 夏の過ごし方
 ホビー
 お江戸動物物語
 師走風景
 結婚
 正月縁起づくし
 決定版マジナイ集
第三章 中級編
 江戸見物(硬派編)
 江戸見物(軟派編)
 酒の話
 食 PARTⅠ
 食 PARTⅡ
 食 PARTⅢ
 江戸の屋台
 相撲 PARTⅠ
 相撲 PARTⅡ
 ギョーカイ通信
 おバケづくし
第四章 上級編
 How to 旅 PARTⅠ
 How to 旅 PARTⅡ
 春画考 PARTⅠ
 春画考 PARTⅡ
 意匠(デザイン)
 傾く
 未来世紀EDO
 シャレ
 これが江戸ッ子だ!


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