杉浦 日向子
「一日江戸人 (新潮文庫)
」
周期的に読みたくなるのが、杉浦日向子さんの江戸の本。また、そういう時って、図書館でぱっと目に入ってきたりもするのです。
杉浦さんが愛おしんで語り、時に図説する、江戸の生活の数々。今回もたっぷり楽しみました。
「宵越しの金は持たない」ではないけれど、江戸の町人はどうもかなり適当な感じでも生きていけたよう。お金が無くなったら働き(それも適当な大道芸だったり、近所の手伝いだったり)、お金が入ればのんびり。太平の世だから、こういうことも出来たのかなぁ。備えなくともこれだけ気楽に過ごせる楽天性は、現代人には失われたものだよね。その証拠に、江戸で名のある商人や職人は、ほとんどが地方出身者だったのだとか。
江戸の色男、美人の解説も面白い。
江戸人が選ぶ「男の中の男」、すなわち「江戸の三男」とは火消の頭、力士、与力の三職のことをいう。職業柄、男気があってかっこいいこれらの男たちとは別に、一般の町人の内では、ムキムキの肉体美ではなく、色白のやさ男が希少価値として持て囃されたのだとか。なんてったって、江戸の暮らしはほとんど人力。普通に暮らしていても、それなりに筋肉はついてしまうし、褌一つで働いている人も多いので、肉体美にはさほど関心がなかったみたい。
江戸の美人は、鈴木晴信が描く笠森お仙のような七頭身のあどけない様から、二十年後にはきりりとした濃い眉の十頭身美女、更にその三十年後にはちょっと凄みのある六頭身美女と、そんな風に移り変わったそう。「美人」は時代で変わるものとはいえ、時代が新しい方が、むしろプロポーションが悪いのが面白い。しかし、七頭身はともかく、十頭身なんて、現代でもほとんどいないよねえ。
町人の気楽さに対して、将軍の生活の窮屈なこと! 年中無休の将軍職は、かなり厳しいスケジュールに縛られていて、この規範的な将軍の日課を実践したと伝えられる十四代家茂は、即位の八年後、二十一歳で病没しているのだとか(原因は心身の過労だといわれている)。他の将軍はどうも適当にさぼっていたようだけれど、それにしても大変なスケジュール。お江戸に生きるのであれば、武家、将軍ではなく、町人として生きるのが幸せなようです…。
第一章 入門編
大道芸
生涯アルバイター
義賊列伝
江戸の奇人変人
How to ナンパ
江戸の色男
美女列伝
ザ・大奥
将軍の一日
第二章 初級編
長屋の生活
浮世風呂
夏の過ごし方
ホビー
お江戸動物物語
師走風景
結婚
正月縁起づくし
決定版マジナイ集
第三章 中級編
江戸見物(硬派編)
江戸見物(軟派編)
酒の話
食 PARTⅠ
食 PARTⅡ
食 PARTⅢ
江戸の屋台
相撲 PARTⅠ
相撲 PARTⅡ
ギョーカイ通信
おバケづくし
第四章 上級編
How to 旅 PARTⅠ
How to 旅 PARTⅡ
春画考 PARTⅠ
春画考 PARTⅡ
意匠(デザイン)
傾く
未来世紀EDO
シャレ
これが江戸ッ子だ!
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