- 川端 裕人
- 「川の名前
」
川に夏に少年。この三つが揃ったら、他に何が必要なのだろう。
必要なものは、もう全て揃っているではないか!
とはいえ、舞台は多摩川の支流、桜川。現代の少年たちの物語であるからして、少年たちが川にじゃぼーんと飛び込み、カワガキとなって川と戯れる、なんていう形の川と少年の物語ではない。
主人公は、菊野脩、小学校五年生。自然写真家の父さんと、これまで一緒に行ったのは、アマゾンやユーコンなどのスケールの大きな川。今までは長期の休みは、この父と共に撮影旅行に出ていたし、学校だって何度も変わった。父と離婚した母は既に新しい家庭を築いている。この夏だって、本当は父さんは脩と一緒にユーコン川に行きたかったみたいだけれど、何が特別というわけでもない、この場所、この桜川北小の五年二組。この夏、脩はここを離れたくないと思ったのだ。
脩と共にこの夏をすごすのは、一緒に自由研究をする事になった、ゴム丸こと亀丸。そして、物静かな態度だけれど、川について誰よりも深い知識を持ち、脩とゴム丸を助ける、河童こと河邑。
出て来るのは、勿論、脩の仲間たちだけではなく、何かとゴム丸に突っかかる、ジャイアンを思わせる海野や、すかした優等生、手嶋たち。
そして、彼らを巡るこの夏の出来事。
何かと脩を敵視するすかした優等生、手嶋との関係は、年齢は違うけれど、まるで『河よりも長くゆるやかに 』のトシと深雪のようでもある。互いに認め合った彼らはきっと、これからは親友になるのだろう。
夏が終わって、少年達は少し大人になる。
周りを固める大人もいい。圧巻は、チャルメラの音楽と共に現れ、「カワガキ~」と叫ぶ喇叭爺だけど、教師のデビルもなかなかだし、水族館の獣医、鈴木先生だっていい。あ、父さんの妹で、脩を預かってくれている、看護士の恵美もね。
タイトルにもなっている「川の名前」。この意味は、是非、自分で確かめて欲しいなぁ。「川の名前」に自分の居場所。うーん、深いです。結構前に、この本をいい!と書いておられるブログを幾つかお見かけして、そんなにいいなら、読んでみようと思っていたのだけれど、さすが評判の本。面白かったです~。
メモ1
ホトケドジョウ (=オババ)
:神奈川県水産技術センター内水面試験場のページにリンク
オギ
:浜島書店のページにリンク
ススキと、混同していましたよ・・・。違うのね。
メモ2
以下、ネタバレになってしまうので、これから読まれる方は、どうぞお読みになりませんよう(リンクも飛ばないでくださいねー)。全てを忘れ去ってしまう、自分のためのメモであります。
しかし、この作者は、ほんとにペンギンが好きなのだなぁ、と。笑
以前読んだ、同作者による本の記事はこちら → ☆
こっちは思いっきり、ノンフィクションなんだけど。いやぁ、この方、とっても多才だなぁ。