「百億の昼と千億の夜」/寄せてはかえす、波または波 | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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オンライン書店ビーケーワン:百億の昼と千億の夜   オンライン書店ビーケーワン:百億の昼と千億の夜

光瀬 龍   光瀬 龍, 萩尾 望都

百億の昼と千億の夜 」 「百億の昼と千億の夜
ハヤカワ文庫       秋田文庫


目次 ~小説~
序章
第一章 影絵の海
第二章 オリハルコン
第三章 弥勒
第四章 エルサレムより
第五章 喪える都市
第六章 新星雲紀
第七章 最後の人々
第八章 遠い道
 あとがき

目次 ~漫画~
序章 天地創造
第1章 アトランティス幻想
第2章 悉達多
第3章 梵天 帝釈天
第4章 阿修羅
第5章 弥勒
第6章 ユダとキリスト
第7章 ゴルゴダの奇跡
第8章 トーキョー・シティー
第9章 戦士たち
第10章 ”シ”を追う
第11章 ゼン・ゼン・シティー
第12章 コンパートメント
第13章 ユダの目覚め
第14章 トバツ市で待つもの
第15章 摩尼宝殿入り口
第16章 アスタータ50
第17章 幻の軍勢
第18章 遠い道
終章 百億の昼と千億の夜
 解説(山本真巳)


タイトルと、序章の文章の流れるような美しさに惹かれて古本屋でゲットしたものの、時空を自在に越え、神の存在を疑い、絶対者に迫っていくこの物語。なかなかついていけなくって難儀していた所、萩尾望都さんの手による漫画を借りる事が出来ました。

で、途中までは小説版を読んでいたのだけれど、これは駄目だ、と残りはざばざばと流し読んで(嗚呼、きっと、勿体無いんだろうなぁ)、さっさと漫画の方に移ってしまったのです。

私は小説の流れに着いていけなかったけれど、SF読みの方たちはすんなりと読めるのかしら。文章が美しいだけに、何とも勿体無いのだけれど・・・。

 
寄せてはかえし
 寄せてはかえし
 かえしては寄せる波また波の上を、いそぐことを知らない時の流れだけが、
 夜をむかえ、昼をむかえ、また夜をむかえ。
(p10より引用)

 
寄せてはかえし
 寄せてはかえし
 かえしては寄せる数千億日の昼と夜。その間も波はたゆみなく鳴りつづけ、さわぎつづけてきたのだった。
(p11より引用)

などと、「寄せてはかえす」という印象的なフレーズが、まさに寄せてはかえすように、効果的に使われている。このフレーズを読めただけでも、良かったなぁなどと思ってしまう。

さて、内容の方は、うーん、小説版にしても漫画にしても、なかなか厄介な問題を描いているように思います。正直、少々、ムズカシイ・・・。


人々は、形は違えど、神を、絶対者を信仰する。信仰とともに、そこに語られるのは、多くの場合、滅びとその後の救いの予言。キリスト教における最後の審判しかり、仏教における末法の世しかり・・・。

天上界へと上った悉達多王子が見たものは、地上と同じ荒廃だった。それは阿修羅王によるものだというのだが・・・。阿修羅王に出会った悉達多は、阿修羅王が神を信じられぬが故に、天上界での戦いを続けている事を知る。全てを救うといわれている弥勒は、なぜ現れ出でる前に、五十六億七千万年という長いときを必要とするのか。人々は約された未来の理想の社会のために、これまで何を捧げてきたのだろうか・・・。そして、これからも・・・。

次に語られるのはナザレのイエスの時代。彼はある大きな存在に操られた存在であった。十字架に磔にされたことすらも、計画の一部にしか過ぎず、イエスはその後、地球の管理委員となる。

そして、阿修羅王や、シッタータ、オリオナエまたはプラトン、イスカリオテのユダたちの戦いが始まる・・・。しかし、その戦いすらも、はじめから誰かに決められたものであったのか。宇宙は広く、外へ外へと広がり、長い時ですら、相対的には短い一瞬にしか過ぎない。人間が生きるこの地球、銀河系は狭く、人の一生などまさに一瞬。そうして、阿修羅王の前には、また新たな道が続いていたのだ・・・。

と、こんな風に、纏めてみても、やっぱりあまり理解したとは言えないかもー。何とも壮大な物語です。一緒にたゆたいながら、読むのがいいのかなぁ。長いときを経て、揺るぐ事のない阿修羅王(年若い少女の姿で描かれる)も素敵です。

あ、どうでもいい一言を言うと、小説の中では、「ほのお(炎)」が「ほのほ」と表記されているのですね。で、「ほのほの世界」と書いてあったのを、最初、そのまんま「ホノホノセカイ」と読んで、何だか楽しそうな世界だなぁ、と思ってしまいました。・・・そんなわけないよね。


*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡下さい。