パトリシア A.マキリップ, 脇 明子
第二巻 の終章において、モルゴンとレーデルルは、手に手をとって旅立つ事を約束した。争いは既に周辺各国へと飛び火し、農民の国であり、戦う事を知らないヘドの領民たちを心配したモルゴンは、まずはアンの国の死者たちを連れ、ヘドへと向う。死者たちにヘドの国を守って貰おうというのだ。
そんな彼らの元に、既に死に絶えたかと思われた、古の魔法使い達がランゴルドの都に集っているとの噂がもたらされる。第一巻にて 、エーレンスター山で一年間もの苦闘の日々を送っていたモルゴン。それは「偉大なる者」の玉座の空席を狙った、ギステスルウクルオームとの闘いに他ならなかった。彼が何とか、かの魔法使いギステスルウクルオームとの繋がりを断ち切った時、モルゴンからはヘドの領国支配者としての本能が奪われ、各地に留め置かれていた古の魔法使いたちは、ようやくその実体を取り戻せたのだ。そう、闘うべきは、大学におけるモルゴンの師匠であり、魔法使い学校の創立者であった、ギステスルウクルオーム。
ところで、「偉大なる者」の竪琴弾きとして、王国の皆に絶大な信頼を寄せられ、また第一巻においてはモルゴンを導き旅をしていたデス。彼は一巻におけるモルゴンのギステスルウクルオームとの一年間の苦闘の日々、モルゴンを助けることなく、ひたすらに竪琴を弾くのみであった。そのために、デスは王国中の人々から裏切り者の烙印を押されるのであるが・・・。
ギステスルウクルオームの企み、モルゴンとレーデルルを追うデス、三つの星が煌く竪琴を作った古の魔法使いイルス、「偉大なる者」の長きにわたる不在、レーデルルに近づく変身術者たち、またモルゴンとレーデルルに流れる血、運命・・・。この最終巻では全てが収束し、山ほどあった全ての謎に対し、答えが与えられる。
一巻では謎だらけの話に???となり、頑固者で石頭のモルゴンに苛苛し、三巻途中まではモルゴンとレーデルルの言い争いにもうんざりしていたのだけど、全ての物語が語られた後には、この頑固だけれど誠実なモルゴンが好きになっていた。謎に包まれていた「偉大なる者」の竪琴弾き、デスもね。
レーデルルに関しては、その登場からラストに至るまで天晴れ!の感に堪えないんだけど。この物語は、誇り高き女性陣の魅力も実に大きい。豚飼い女でもあった、魔法使いナンも好き♪
物語を紡ぐというのは、こういうことなのかと、ラスト、唸ったのでありました。