これは2019年10月ごろのお話。
ちょうど2年前になる。
私は言葉で伝えるには少々難しい、一風変わった体験をした。
ふとしたきっかけで手を出したシーバス釣り。
最初に掲げた目標は「60cmオーバーのスズキクラスを釣り上げること」
しかし現実は厳しかった。
デビューから20を越える連続三振。
長打どころか、かすりもしない。
そのくせ失策続きでルアーロスト連発。
ハズレ助っ人外国人選手そのまんまの失態ぶりに、もはや自嘲する余裕すらなかった。
どこに行こうが何をしようが全くダメ。
とにかく、釣れない。
私にとってシーバスは果てしなく遠く、チョコボール金のエンゼルばりの稀有な存在であることは疑いようもなかった。
折れかけた心を何とか繋ぎとめてくれたのは、以前こちらのブログに書かせてもらったアイマのコスケ110F(レッドヘッド)である。
念願の魚を手中にし感激のあまり落涙したほどだったのだが、正直に言うと、
・コスケ110Fというルアー
・レッドヘッドというカラー
のどちらの要素で釣れたのか、当時はよく分からなかった。
なんせシーバスミノーも人生初、レッドヘッドカラーも人生初なのだ。
やること為すこと初めてだらけ。
初物揃いの園児アングラーには何が正解なのか皆目見当もつかない。
ただ、ひしひし感じたこと。
レッドヘッド(オレンジベリー)って噂に違わず凄いんだなぁ。
最高の魚を手にしたことで、私のシーバス熱は最大限に膨れ上がった。
長き不遇も輪をかける羽目となった。
寝ても覚めてもシーバスが頭から離れない。
仕事が手につかない。
家人の言葉が入ってこない。
シーバス、シーバス、シーバス…
早くフィールドに立ち、シーバスに逢いたい。
そして何と言ってもあのレッドヘッド。
なんと魅力溢れるカラーだろう…。
最初あれだけイヤだったのに。
あの安っぽいチープな塗装。
これで同じ値段?
寒けがした。
メーカーがせせら笑いをしてそうなクリアの次にイヤだった。
大切なお金を費やす気にはとてもなれない。
噂を信じて購入したまではいいけど、本当に大丈夫これ?
目一杯訝しみながら使用。
でも結局は…結局は…レッドヘッドがあの感動シーバスを連れてきてくれたのだ!
いや、レッドヘッドだからこそ釣れた。
間違いない。
レッドヘッドだからこそ食ってきたのだ。
このカラーには魚を寄せる何かがある。
これは究極のカラーだ。
レッドヘッド、レッドヘッド、レッドヘッド、レッドヘッド、レッドヘッド、レッドヘッド、レッドヘッド、レッドヘッド、レッドヘッド…
嗚呼、頭おかしくなりそう。
その頃より私は四六時中レッドヘッドのことを考えるようになった。
朝のトイレから夜の布団の中まで、至るところでレッドヘッドを思い浮かべた。
脳がレッドヘッドに支配される、という表現が的確なのかはわからない。
ただ当時の私にとって、レッドヘッドこそが一縷の望みであり全てだった。
気づけば私は、赤色と白色に極度に反応する体になっていた。
正確に言えば「赤と白のコントラストで成立されたモノ」へ異常なほどの興奮を覚えるようになった。
私たちの日常にはレッドヘッドがある。
レッドヘッドは生活の片隅に佇んでいる。
彼らは何の主張もしない。
驚くほど静かだ。
だが確かにそこにいる。
数十年生きてきたが私は気づきもしなかった。
なんと愚かな話だろう。
私たちは知らずのうちレッドヘッドと共存している。
