2019年8月。

ノーバイト続きの海シーバスに白旗を上げ、私は河川シーバスの釣りへと参入した。

幸運にも、


人生初の川釣り  (猪)
人生初の場所  (鹿)
人生初のシーバス  (蝶)


という快挙を達成してしまった。

勢いづいた私は近所の河川を模索する。

さんざん迷ったが地元のメジャーポイントである大河川をホームと定め、これから足繁く通うことに決めた。






しかし、実はいわゆるメジャーポイントは大の苦手である。


私は生粋の内気中年だ。

わいわいと賑いを見せるポジティブなサークルには呪詛の言葉を浮かべてしまう。
メラメラと殺気立ったストイックなサークルでは髪の毛が抜けてしまう。

メジャーポイントが好きなわけないだろう。


場末の小汚ないバーの片隅。
世界からつまはじきされることに毒づきながら、それをつまみに安酒を重ねる。
私はそんな偏屈な初老である。

メジャーポイントに行く資格すらないと思う。


また、釣りの醍醐味のひとつである開拓。
自分だけのポイントを探し歩くこと。
そこで出会える念願の魚。
苦労を重ねたのちに訪れる深い喜び。

それもぼんやりわかっている。







しかし私はあまりにも無知過ぎた。
シーバスを知らな過ぎた。

コアマンVJ16のポテンシャルのお陰で、運良くファーストフィッシュを飾らせて貰った。

涙でかすんだシーバスはいまも忘れられない。



しかし、私の人生における河川シーバス歴は1時間半である。

手持ちルアーは2個

こんな私にポイント開拓は無謀だと思う。









そんなわけで地元の大河川を目指す。
シーバスアングラーが集う地元随一のメジャーポイントだ。

残暑の厳しい8月下旬、目当ての河川敷に到着。

とうとう来てしまった。
これから私のホームとなろうポイントだ。
私は静かに心を燃やす。

しかし、迫力が違うな…

初めて見る雄大な景色に圧倒され、私の胸はこの上なく高鳴る。

ここはどうやら駐車場があるようだ。
これは儲けた、ひと手間省けた。



しかし、ひとつ気になる。
もう夕刻だと言うのに停まっている車がやけに多い。
河川敷には走っている人がちらほら程度。

おいおい、あれみんなシーバスかよ?
平日なのにこんないるの?

いきなり私の心は怖じ気づく。
どっと現実が押し寄せてきた感じだ。


でも、おかしい…
ロッドを持ってるアングラーなど何処にもいない。
駐車場から見渡す限りゼロだ。


ははあ、なるほどな…。
私は閃く。


私は釣りのことばかり考えていた。
シーバスのメジャーポイントと言うだけで必要以上に構えていた。

だがここは河川敷だ。
様々な用途でたくさんの人たちが集まる憩いの場でもある。
ここから見えないだけで、上流側だか何処かでスポーツをやっている人たちがいるのかもしれない。


この厳しい暑さだ。
夕方とはいえうだるような熱気は続く。
これには流石のシーバスアングラーたちもお手上げのようだ。


ふふ…みんな結構ぬるいんだな。


予想外の一番乗りに妙な自信が湧く。
混雑を予想していた私にとっては朗報である。







さてと。

駐車場のすぐ傍はもう水だ。
アスファルトで舗装され足場もよろしい。

私は迷うことなくエースルアーのコアマンVJ16を取り出す。



よしいこう。

この大河川でひとつ揉まれてみようか。




右も左も分からない唐変木のはずの私は、ここで経験豊富な熟練アングラーへ様変わりする。


ここはメジャーポイントだ。
舐められてはならぬ。
絶対に素人と悟られてはならぬ。

今日は幸い誰もいないが、いつなんどき猛者が現れるか分からない。
ひょっとしたら車の中からこっそり覗かれているかもしれない。
私のハートは硝子細工で出来ている。
気後れしたくない。
目の前の釣りに集中したいのだ。


だから私はエキスパートに成りすます。

素人なんでデヘヘ、と自分を卑下してフィールドに立つのは好みではない。


颯爽とキャップを被り、澄ました顔でライジャケを纏う。
口笛を吹きながら偏光グラスをウエスで丁寧に磨いていく。
ロッドをセッティングしながら、時間をかけて片目でガイド位置の微調整をしてみる。
ドラグ具合を調整しながらため息をつき、少し首を傾げてみる。


普段の私はせっかちだから誰もいなければ車を降りたら釣り場まで走っていく。
早く釣りしたいので。
事前準備に費やす時間はない。
ドラグ具合などは最高にどうでもよい。


しかし今回は勝手が違う。
初心者であることを隠さなければならないのだ。


無人の河川敷で私は黙々とエキスパートの演習を続ける。

ただシーバスエキスパートを肉眼で見たことはないので、あくまで私の想像に過ぎない。



遠い目をしながら水の流れを見つめてみる。
上流側、下流側とゆっくり目を移してゆく。

15秒、20秒…よしこんなものかな。

実際に水の流れを見ても正直何ひとつ感想はないのだが、まあエキスパートならそうするんじゃないのかな?

安全な遊歩道でしかも真夏のデイゲーム、ライジャケ姿は完全に浮いている気がするが、動画のエキスパートはこんな姿だったように思う。


事前のイメトレが功を奏したようで、とりあえずここまでは及第点であろう。


よし。


これなら小馬鹿にされなくて済みそうだ。







さて、そろそろ本番に入ろう。



根掛かりせぬよう気をつけながら慎重にキャストとリトリーブを繰り返す。

わずか4~5投目のキャストだったと思う。

着水同時に明確なアタリがあった。



うわ、またきた!

おうっほほ!

よーしよし!

VJ連チャンやんか!

あ?このルアー無双か?

おうっほほ!





残念ながらサイズは大したことはない。
だが、そんなことはどうでもいい。
魚が釣れたことがとにかく嬉しい。
先日からの連続ヒットで自分を見失いそうだ。


ぱしゃぱしゃ


…ふむ、30センチあるなしのセイゴか。
いいぞいいぞ。
私には全然いいぞ。

簡単に抜き上げ出来そうなサイズだが、周りに誰もいないことを再確認する。

せっかくの獲物だ。
格好つけて取り逃がす阿保もおるまいよ。

先日新調したシーバス用ネットで慎重に掬う。



よっしゃー、シーバス二匹目や!




…あ、あれ?

…ん、シーバスじゃない?

…なんだこりゃ?


身体の色合いは緑がかっており、なにより丸っこいとん平な体型をしている。

私には初めて見る魚だ。




…これってもしかしてブラックバス?




とりあえず魚のリリースを済ませ、早速スマホで確認する。

間違いない、ブラックバスのようだ。

私は河川の釣りはド素人だ。
天然ブラックバスを生で見たのは初めてだし、釣り上げたのも勿論初めてだった。

へぇ、河川ってシーバスとブラックバスが共存してるのか。
全く知らなかった。
コアマンチャンネルでも言ってなかった気がするが。

だけど釣りの幅が拡がるなあ。
シーバスもバスも狙えるなんて。

面白い。

川釣りって本当に面白い。


何よりコアマンVJ16の快進撃が止まらない。
ドン底の60時間ノーバイトがもはや懐かしい。


しかし流石にビギナーズラックもここまでのようで、この後はアタリもなく納竿となった。







メジャーポイントか…


人もいないし、案外悪くはないものだな。









本命ではないにしろ魚からの反応はあった。

ノーバイト続きの私には充分嬉しかったのだ。

満足を覚えた私は鼻歌混じりで帰路についた。

(ただし後で泣く)






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