お蔭さまで、第43回盛岡芸術祭声楽部門演奏会では、準トリの責任を果たすことができました。今回は、私の声楽人生の中で一番良い出来だったように思います。
越谷達之助の「初恋」と、カッチーニの「アヴェ・マリア」を歌いました。「初恋」は恩師、奥田良三先生から直接教えていただいた思い出深い曲。カッチーニの「アヴェ・マリア」は、これまでの抑えた歌い方をやめて、フルボイスでの表現を試みました。むしろ全身のチャクラの開いた声を出した方が、癒しのオーラが会場に満たされると思ったからです。
今回、頑張れた原因に、大学部門のラストを飾った小野寺 光君の存在がありました。小野寺 光君は、昭和音楽大学声楽科を首席で卒業。第38回昭和音大「メサイヤ」講演にてバスソリストととして出演。現在、昭和音大大学院1年生なのですが、楽屋で私が、昭和音大の前身となる東京声専音楽大学で、「メサイヤ」を10回以上歌っている話から盛り上がり、オペラのアンサンブルでは、星出豊先生や、松山郁夫先生に教えてもらった話をしたところ、彼も同じ先生にしごかれていると言うことが判明。彼に大先輩と持ち上げられたことから、かなり頑張ったわけです。といっても、小野寺 光君には遠く及ばず、彼は、こんな小さなステージで歌うような人ではなく、世界に羽ばたく逸材だと感じられました。小野寺 光君は、今回のステージでは、ドニゼッティのオペラ「愛の妙薬」より、「お聞きください村人の皆さん」を素晴らしい声量で堂々と、そして魅力的に歌いました。
小野寺 光君の歌唱は、下記のYouTube動画で聴くことができます。6月7日の演奏は、これより出来が良かったと思います。
2012年昭和音大祭 オペラ・ガラ・コンサートより
これは、書道だけではなく声楽にも通じることですが、良い作品に仕上げるためには、部分練習がとても重要です。
通して書いていると、100回書いたとしても、100回おなじクセで書くわけなので、さほど上達しません。
上手く書けないところ、苦手な個所は、そこだけ取り出して、徹底的に練習するわけです。
苦手な個所を克服してこそ、練習が生きてくるわけです。あとは、自分の作品を客観視することも大切です。当塾では、高い位置にヒモを張り巡らし、洗濯ばさみで作品を見られるようにしています。これは、自分の書いた作品がどのように良くなっているかを見て欲しいからです。通して書いた場合は、字の大きさのバランスは良いだろうか。名前の大きさのバランスは良いだろうか。魅力的な線が描けているだろうか。などチェックしていきます。それで、まずい部分を見つかったなら、そこを徹底的に練習するわけです。
私は声楽の練習において、いまだアナログ機器ではありますがカセットレコーダーで自分の歌声を録音しています。デジタルの機械もないわけではありませんが、デジタルレコーダーを操作する方にエネルギーを奪われて練習に集中しにくいので、最も簡単に操作できるカセットレコーダーが良いと考えています。これで、自分の歌声をチェックしながら、練習を進めていくわけです。カセットレコーダーは、マイクの感度が音源に割と忠実であることはもちろんのこと、スピーカーが大きくて、大音量で録音した演奏をチェックできることが重要です。小さなスピーカーでは練習になりません。残念ながらそういうタイプのカセットレコーダーはほとんど姿を消してしまい、現在手に入るものは、Panasonicのラジオカセットレコーダー RX-M40A くらいしかないかもしれません。電池は単1で4個ですが、スタミナが40時間以上とかなり持つので持ち歩いての練習にも向いています。
それはとにかく、部分練習をするクセを付けないと書道も声楽も上達しないわけです。通して何度練習しても、慣れや暗記はできたとしても、目に見える上達は望めません。
声専時代、イタリアの名ピアニスト、セルジオ・ペルティカローリ先生が来日した際、本番のコンサートを前に、声専のピアノ練習室で練習をしました。私は、それを目の当たりにしたのですが、午前中に2時間以上練習していたのですが、何と同じフレーズばかり練習していたのでした。通して演奏を弾くことは一度もありませんでした。多分、氏は通して弾くことには問題がないのだけれど、理想通りに弾けないフレーズがとにかく気になり、そこを徹底的に練習していたのでしょう。午後の練習も、同じような感じでした。
また、何年か前のNHKのドキュメント番組で、カリスマ的ロック・ユニットB’sのギターリストの松本孝弘さんが、本番のステージを前に、バンドのメンバーとの通し稽古の合間に、来る日も来る日も、独りこもって同じフレーズの練習を鬼ようにしていたシーンがありました。素人目には、その違いがわからないのだけれど、ギターをやっている者にしかわからない高度なレベルでのニュアンスを完成させようとしていたわけです。彼も、通して弾くこと自体には問題がないらしく、むしろ部分練習に情熱を注いでいたわけです。できるアーティストほど、部分練習を鬼のようになって行うようです。
子供たちにぜひそのことを知ってもらい、自分から部分練習をする学習者になって欲しいと願っているわけです。
恵翠書院 盛岡教室
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