「劇画 新潮45 ブラックアウト」 | 月灯りの舞

月灯りの舞

自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

「劇画 新潮45 ブラックアウト」
 愛憎事件&泣けるニュースの真相
   宙出版/2009.2.1/700円



月灯りの舞-劇画45

「新潮45」の劇画版。

ノンフィクション事件コミック誌。


巻頭で大きく掲載されているのは
中村うさぎが原案の「和歌山マリオネット殺人事件」。


強烈な個性で強気の虚言癖の女。


そんな女に操られて、
女の言うがままに強盗や窃盗をしては、
女に貢ぐ男。

女のせいで職も失い、自己破産しているのに、
「別れるわよ」という脅しにまけて、
まだ借金をする男。

そして、あげくには女の虚言のままに、
何の関係もない女性までも殺してしまった男。


本当に女のマリオネットのような男。


こんな嘘をどうして信じるのかと思うが、
男にしてみたら、その女と別れることより、
言いなりになってでも、そばにいるのが
いいのだろうか。


ショッキングだったのは
「性同一障害」で“男”として生きる女性が、
多重人格の女性と暮らすのだが、二人して
“男”の実の母親を殺してしまうという事件。


これはすごく考えさせられる事件だ。

性同一障害で悩んでいた女性は、
幼少時から母親に虐待され、存在そのものを
否定され続けていた。


一方の多重人格の女性も幼少時から、
母親の男や親類から、性的虐待を受け、
気づいたら多重人格になっていたという。


そんな傷ついた二人が出逢うのだが、
二人の愛の形はいびつだった。
“男”は女に母親を重ねるのだが、
虐待してしまう。


虐待されても女の一つの人格は、
“男”を愛し続けた。

お金に困った二人が、“男”の実家で暮らすことで
悲劇は起き、“男”は母親を殺し、女は手伝う。


虐待され否定され続けても母親を
求め続けていた“男”は、
最後まで母親に受け入れてもらえなかったのだ。

どんなにつらかったのだろう。


そんな“男”を必死で愛した女も
虐待されつつも離れなかったのは
多重人格の自分を受け入れて欲しかったのだろう。


法廷では、女性の別人格が現れたということだ。


「日野OL不倫放火殺人」では、子どもを焼き殺された
被害者夫婦の10年後の告白が描かれている。


センセーショナルな事件として、
マスコミでいろいろ書かれていたが、
今回は、被害者の妻側の視点で描かれている。


マスコミの嘘や身勝手さもわかる。


あんな事件を起こすことになってしまった夫と
なぜ妻は別れなかったのか、
そんな夫の子どもをなぜ産んだのか、
そんな心境が描かれている。


実際の事件であり。

重く悲惨な事件が多くやりきれない気持ちになるが、
愛するがゆえに、憎しみも大きくなるということは
ものすごくわかるだけに、痛ましくせつなくなる。


愛の前では人は愚かになってしまうものだ。