この記事は3484文字です。(読破予想時間:約8分17秒)
僕がまだ20代後半だった頃の話です。
当時の僕らのバンドは、そこそこ勢いがあってお客さんもある程度確保出来ていた。
そのお客さんの中で、熱心によく見に来てくれる大学生の若者と仲良くなった事がある。
その若者、と言っても、当時の僕達も普通に若者だったのだが、僕達よりは若い彼がある日、同じ大学の男友達を数人、ライブに連れて来てくれたのだ。
その数人の友達は、大学内の同じ音楽サークルのメンバーらしく、彼らも同じく僕達のバンドを気に入ってくれて、やたら懐かれたのを今でもよく覚えている。
ライブ後も、懐かれただけではなく、眩しい程の憧れや尊敬の眼差しを向けてくれているのが、見て取れる。
どういう訳だか、とにかく彼らにやたら気に入られてしまった様で、まるで、超有名バンドと話しているファンの様な態度で接してくるのだ。
それはそれで嫌な気はしないので、一向にかまわない事ではあるのだが、ちょっと、持ち上げられ過ぎと言う気がしないでもないのは確かだ。
彼らは、その後、追っかけの様に、毎回ライブに足を運んでくれる様になった。
そして、時には新しいメンバーを連れて来てくれたりで、少しずつ、その人数は拡大していく。
ある時、彼らの大学のバンドサークルのイベントを是非見に来て下さいと言う事で、チケットを人数分貰った事がある。
その時のメンバーであったギターリストが、ほんの些細なジョークのつもりで「何だったら、俺達も出ようか?」などと笑いながら言った時の事だ。
そのサークルメンバー達のハートに火がついてしまったのだ。
「え!?マジっすか!いいんですか!やったー!!!みんな喜びます!」
そんな感じでその場の全員が盛り上がっている。
そんな風に彼らのハートに火をつけたうちのギターリストと言うのが、過去数回このブログに登場している、ジミーくん(仮名)だ。
ジミーくんは慌ててその場を取り繕う。
「そんなの冗談に決まってるだろう!」と。
「他のサークルのメンバーもいるのに、この場の独断で決めていい筈がないだろう!それに俺達は、その大学の学生でもないし、完全な部外者だし」と必死になって止めているが、彼らはもう止まらない。
「いいんです。うちは緩いサークルなんで」
「それに、いつも僕達が皆見さんやジミーさんのバンドの話はしているんで、みんな見たいと言ってますから、是非出て下さい!」
そんな調子だ。
しかも、それを言ってる彼は、なんとそのサークルの部長なのだそうで、彼が一言「今度のイベントにゲストが来ます」と言うだけで何の問題もなく事は進むのだそうだ。
そんな感じで押し切られた僕達は、特に断る理由もなく、お客さんを増やせるいい機会だと言う事もあって、そのイベントのゲストとして出演する事を承諾する事になった。
そして当日、僕達の演奏は特に問題なく終える事が出来たと薄ら記憶しているが、どんな事をしたのかは全く覚えていないし、何県のなんて言う会場だったのかも全く覚えていない。
ただ、薄らした記憶では、そのサークルのバンドの子達の演奏は、お世辞にも上手いとか格好いいとか言うものではなく、一生懸命好きでやってるのが伝わる事だけが武器の、そんな演奏ばかりだったと言う印象だ。
そして、その日の打ち上げにも誘われて顔を出したのだが、何だか畳の広間で打ち上げだったのを覚えているが、その会場が何屋さんで、何を食べたのかは一切覚えていない。
いつもうちのライブに来てくれてたのは、男ばかりだが、そのサークルには、女の子も普通にいて、人数にして全部合わせて30人以上はいたのではないだろうか。
そして、僕達のバンドのメンバーのそれぞれの両脇には、いつもうちのおっかけをしてくれてた顔馴染みのメンバーがついて、それぞれの相手をしてくれている。
おそらく、彼ら以外に知り合いのいない僕達が、浮いてしまって、ポツンとなってしまう事を防ぐ為の配慮なのだろう。
そして、他にも酒を持って話を聞きに来たり、話相手になってくれたりと、ゲストとしてもてなされている感じが物凄くする、気分のいい打ち上げだと感じていた。
その時までは。
周りを見ると、ジミーくんも他のメンバーも上機嫌で物凄く盛り上がっている。
そして、僕がトイレに席を立った時だ。
トイレに行くと、ジミーくんもすぐに僕の後から入って来た。
トイレで僕はジミーくんに「退屈させない様に、物凄く皆、気を遣ってくれてるみたいだな」と正直な感想を漏らした。
するとジミーくんは、僕にこう言ったのだ。
「いや、それは違うぞ」と。
彼は、いつも追っかけをしてくれてた部長とその他の男子サークルメンバーのヒソヒソ話を聞いてしまったのだそうだ。
打ち上げが始まる前に、ジミーくんが近くにいる事を気付かずに4、5人で、僕らからサークルの女の子達をガードする為に、誰が誰につくか緻密に話し合ってるの聞いたと言うのだ。
それを聞いた僕は流石にショックを受けた。
僕達は当時、全員彼女持ちだ。
しかも、見た目は全員派手だが、見た目とは違って、全員、恋愛には真面目だし、女遊びをする奴もナンパな奴も一人もいない、そんなバンドのメンバー構成だったのだ。
一応、ジミーくんは盛り上がってる様な素振りで呑んではいるが、実は、最初にそれを皆に打ち明けて参加せずに帰ろうかとも思ってた程で、気分を相当害していると言っていた。
その気持ちは物凄く分かる。
何せ、僕が今その状態なのだから。
その飲み会が終わって、彼らから「2次会に行きませんか?」と誘われたが、断ったのを覚えている。
そして、その裏事情を知った今となっては、サークルの女の子をガードする様に、一人一人に送り役が張り付いているのも分かる。
女の子達は、おそらくその裏事情には全く気付いていない。
それにしても、本当に無礼な話だ。
その2次会の飲み会は断って、そのままその日は帰る事になった。
そして後日、メンバー全員がその事情を知る事になってメンバーで出した結論は、彼らに今後ライブの案内は送らないと言う結論だった。
今から思えば、別に来て貰っても構わなかったのだが、その時は、全員が怒り、傷付いていたのだろう。
もしかしたら、ブッキングを見て彼らが来る事もあるかもしれないとも思ったが、彼らとは結局それっきりだった。
実際に、こういう事は水面下ではよくある事だし、セクハラで有名な得意先の人から、女子従業員をガードするなんて話も聞いた事はある。
でも、僕らはそれをされる謂れのない人間だ。
まぁ、でも、気持ちは理解はしているし、よく考えたら、僕もタイプ的には彼らと同じで、自分の仲間内の親しい女の子から虫を払う努力はしたいと思う方だったのだ。
これはタイプによるが、男性の中には、こういうのを本能として持っている人は少なくない。
自分と同じサークルや部活の女子達と関係が良ければ、勝手に、変に守ろうとするし、それは好きな女の子だからとかそんな理由でもない。
外国で活躍する日本人女性が、外国人に口説かれてるなんて様を、テレビのドキュメンタリーで見ただけで、気が気じゃなかったりなんて覚えがある人もきっと多い筈だ。
日本人として何か、外国人から守らなければならない様な気がしてみたり、でも、その外国人が手痛くフラれて落ち込んでいるのを見ると、今度は、その外国人が可哀想になってきたりと、何とも、ややこしい心情である。
日本と外国。
自分の職場とよその職場。
自分の所属するサークルと部外者。
こんな感じで、これはきっと、外敵から仲間のメスを守るオスとしての本能とでも言うべきものなのだろう。
そんな気がしてならない。
おそらく女性にはない感覚なのではないかと思える。
今、あの時の事をどう思っているかと訊かれても、どうとも思っていないと言うのが答えだ。
怒っている訳でもないし、嫌な思い出って訳でもない。
今は、どっちの立場も冷静に理解出来るってだけの話だ。
かなり薄くなりつつあって、想い出にもなりそこなった、ほんの些細な記憶の断片だ。
昨日の記事と少し関係あるのだが、現地で雇ったガイドさんにアプローチされるヨシダナギさんを見て、ふと、そんな事を思い出したので、記事にしてみました。
◇フォトグラファー・ヨシダナギさんの世界観に触れて
読みながら「何のこっちゃ!?」と感じておられた方。
ただそれだけの事です。(´0ノ`*)
それでは、また。(≧∇≦)
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
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