この記事は4645文字です。(読破予想時間:約11分3秒)
ベースと言う楽器を知らないバンドマンはいないと思います。
しかし、どのパートを担当してるバンドマンも、他のパートの事をとことん深く知ってると言う方は、稀なのではないでしょうか。
それと同じく、ベースと言う楽器について、ベーシストの視点・目線と言うものはベーシストにしか分からないものもたくさんあります。
今回は、ベースと言うパートにスポットをあてて、ギタリストの弾くベースと言うものについて、個人的な感覚を語りたいと思います。
あくまで僕個人の感覚であって正解も不正解もない話ではありますが、読んでくれた方の見識が広がる様な、何らかの糧になればと思います。
僕は、今でこそマルチに楽器を演奏しているが、ベーシストとして活動していた事もある。
弦楽器を触った事がない人には意外な話かもしれないが、ベースと言う楽器は、実は、ギターをある程度弾ける人間なら誰でも弾ける楽器である。
そんな風に言うと語弊があるのかもしれないが、ベーシストの出来る事全てこなせると言う意味ではなく、取り敢えず、バンドのアンサンブルを奏でる事くらいは出来ると言う意味である。
5弦ベースや6弦ベースなど、ベースにもいろんな種類があるが、ギターより一回り大きくて弦が4本張ってあるのが、基本的な形でオーソドックスなベースだ。
その4本のベースの弦は、ギターの低音弦、つまりギターの6弦~3弦までの弦と、音の並びが全く同じなのである。
要は、ギターの低音弦の1オクターブ下の音が、ベースと言う楽器が持つ音域なのだ。
なので、ベースを弾けるからギターも弾けるのかと言えば、それは無理な事なのだ。
ギターはベースにない弦が2本多いと言う事もあるし、ベースは基本単音での演奏だが、ギターは和音を奏でる役割もある楽器なので、ベーシストが何も知らずにギターを手にしてもすぐに弾けると言う訳ではない。
ただし、低音4本だけで何かフレーズを弾く事なら可能ではある。
しかしそれは、僕も昔何度もやってみた事があるが、あまりいいと思える音にはならないし、弾けると呼ぶにはちょっと苦しい幅の狭さだ。
余談ではあるが、僕がまだまだベースの初心者だった頃、バンドマンの先輩から「ベースはギターの2オクターブ下」と教わって、しばらく随分混乱した覚えがある。
ピアノと合わせてみても、どう聴いても1オクターブしか違わないのだが、何年もベースを弾いてる先輩が2オクターブだと言っている。
そこで音を更に下げてチューニングすると、弦がダルダルでほとんどテンションがかかっていない状態になる。
と言う事は、僕が1オクターブと認識しているテンションが正しくて、僕の耳がおかしいのか?
これは1オクターブではなく、実は2オクターブなのか???
などと、随分考え込まされたものだ。
こんな場合、初心者である人間はどうしても自分に自信が持てなくなり、自分の耳を疑う様になるものだ。
当時は、今の様にオクターブまで計測してくれるデジタルチューナーなどなく、音程に合わせて針が振れるアナログチューナーしかなかったので、尚更だ。
しばらく悩んだが、結局、その先輩が間違いだと言う事で自分の中で納得する事が出来たと言う、ちょっとした思い出話。
今は、オクターブも識別出来るデジタルチューナーの時代なので、そんな混乱をしている様な人はいないかもしれないが、アナログ時代を知るベーシストにとっては、もしかしたらベースあるあると呼べる様な話なのかもしれない。
念の為、明確に書いておく事にするが、正しいのはベースはギターの1オクターブ下である。
余談はここまでにして話を戻すと、スケールを理解して弾いているレベルのギタリストにとって、ただ、ベースを演奏してアンサンブルを奏でるだけなら、そんなに難しい話ではない。
僕がまだまだベースを思う様に弾けなかった頃、ベースも持ってなくて練習もした事のないギタリスト達が、アドリブでベースを難なく格好良く弾きこなす姿を見た時に、自分の存在って何なのだろうと考え込まされた記憶がある。
自分がベースを弾いているバンドのギタリストの方が自分よりベースを上手に格好良く弾くと言う現実。
これに打ちのめされた経験があるベーシストは多いのではないだろうか?
これもベーシストあるあるの一つかもしれない。
しかし、キャリアを重ねて技術を積み上げていくと、結局は、ギターリストの弾くベースはギタリストの弾くベース以外の何物でもないと気付く様になるのだ。
「ギタリストの弾くベース以外の何物でもない」と言う表現をしたが、今回の話の一番のポイントは、ここなのだ。
確かに、ベースを基礎から勉強して練習を積み重ねて弾ける様になると、ギタリストには真似出来ないテクニックも身に付くし、ベースラインの組み立て方も身に付くし、ベーシストの弾くベースからは、ギターリストの弾くベースとは全く違う音が出て来る様になる。
一番分かりやすい所で言うと、スラッピング(チョッパー)なんて、ギターリストが使うスラッピングとは大きく違うので、ギターリストが練習もせずにベーシスト並みに弾きこなす事はまず不可能だ。
そして、ギタリストとベーシストではネックを握るフォームも違えば指の開き方、弦の押さえ方など、様々な点で違う。
いろいろな違いが重なって出て来る音は、例え、両者が同じフレーズを弾いたとしても、出て来る音の味わいは全く異質だ。
ここで勘違いしないで欲しい。
僕は異質だと言ったのであって、ベーシストの出す音の方が上だなんて一言も言っていない。
ベーシストとしてトータルな力は、本職のベーシストに軍配が上がると言うのは確かな事だ。
でも、本職のベーシストだから、他のパートの人間が弾くベースに全てがまさっている筈だなんてものは、そうあって欲しいと言う願望であり、単なる理想にすぎない。
僕の感覚では、ギタリストが弾くベースの独特なドライブ感だとか味だとかは、本職のベーシストには出せないものだと思っている。
簡単な話が、ギタリストの弾くベースは凄く格好良くて、ギタリストにしか出せない音なのだ。
これが「ギタリストの弾くベースは、ギタリストの弾くベース以外の何物でもない」と言う言葉の真意である。
ギタリストがベースを弾けると言う意味においては、どのジャンルのギターリストでも同じだが、僕が感じている独特のドライブ感と言うのは、エレキでロックギターを弾きこなすギターリストの場合に限定されている。
と言うより、ジャズやクラシックやフラメンコなどの他ジャンルのギタリストが目の前でベースをブンブン弾く姿を見た事がないのだ。
もの凄く興味があるし、見てみたいとは思っているのだが。
「○○上がり」と「○○崩れ」と言う言葉は違う。
バンドの中で自分のバンドのギターリストの弾くベースを「ギター崩れのベース」として、このギター崩れのベースですら、ロックギターのギタリスト特有のドライブ感に溢れている。
まず、ギターリストは安定した指弾きを出来る訳もなく、当然ピックを使う。
このタッチがベーシストの使う指弾きと違う事は言うまでもなく、本職のベーシストが身につけたピックを使ったピッキングのタッチとも違う。
最初から太い弦で練習しているせいか、ピック弾きのベーシストのそのアタックはギタリストより深くしっかり当てている事が多く、曲の中で勿論いろんなタッチに変化もするのだが、ギターリストのタッチは、終始浅いタッチで、一定ラインより深いタッチは皆無だ。
次にベーシストは、ベースの役割をしっかり把握していて、バンドサウンドの低音部分を支えようとする意識が強いので、出来るだけ低音ポジションを基調にリフなどを組み立てていく。
その中で、高音を効果的に使う事を考えるのがオーソドックスなパターンだ。
そして、ルートから3度5度へと音を展開させたり基本通り安定感のあるサウンドを作り出す。
しかし、ギター崩れの弾くベースは、ルートを始めに弾いてしまえば、あとはリードギターを弾く様にどんどんスケールに従って、高音へ音が流れていく。
ギター崩れがノリノリになってしまうと、コードチェンジの度にルートへ帰ってくるなんて事は滅多にない。
しかし、これがダメなのかと言えばそうではなく、これがまた格好いいのだ。
これが、ベーシストとしては納得がいかない所ではあるが、認めざるを得ない程いい感じのサウンドとして出てくるのだ。
こう言うプレイを取り入れて近い感じで演奏している本職ベーシストもいるが、やっぱり、ちょっと違う。
これをものにするには、ベースを辞めて本職のギタリストになるしかないのかもしれない。
しかし、ベースの為にそこまでの年月を費やすには、得るものが少な過ぎると言うのは僕が感じる所だ。
何年も費やして、その間ベースも弾かずに得るものは、ギタリスト特有のドライブ感のみ。
そしてそれが出来る様になるという保証もない。
これは、リスクが高過ぎる。
それに、おそらくギターリスト特有のベースは、きっとベースをひとたび覚えてしまった人間にはもう絶対に弾く事の出来ないものなのではないかと言う気がしている。
この領域はもう、ギター上がりのベーシストに任せておけばいいと言う結論だ。
だがしかし、こういうギターリスト崩れでベースを弾いていた人間が、いつの間にかひょんな事でベーシストになりましたと言う事がある。
いわゆる「ギター上がりのベーシスト」ってやつがこれだ。
こういうプレイヤーが、ギターリストのドライブ感をそのままに、ベーシストとしてルートに帰る時は帰る、ノリノリに羽目を外す時は外すなどと言う事を覚えると、一つのジャンルとして成り立ってしまう。
確かに、ギター上がりのベーシストのプレイは、知る限り例外なく幅が狭い。
しかし、そのスタイルは、それでも余りあって十分だと言うくらい、スタイルとして確立していける程の破壊力なのだ。
有名なバンドでもこの手のベーシストが弾いているバンドはけっこうあると聞いている。
文章でどこまで伝わったか分からないが、僕が真似出来ないと思うプレイスタイルであり、出せないと思う音こそが、ギター上がりの弾くベースだ。
僕のブログをよく読んでくれている人のなかには、「アンタもギター上がりじゃん」って思う方もいるかもしれないが、アコギあがりはちょっとこのパターンにはハマらない。
このパターンは前述の様に、ロックギター出身者の話だ。
それと僕は、ベースに関しては何かの応用で弾いたのではなく、完全に初心者として独学だが、基礎からみっちり覚えて自分のスタイルを確立した人間だ。
僕が覚えた楽器の中には、基礎からしっかり学んだ楽器もあれば、他の楽器の応用で何となく弾いてるものや、他人の見よう見まねで適当にやってきたものまでいろいろある。
ま、その辺りの事は他の記事にも書いてるので、興味があれば読んで貰えると嬉しいです。
◇自分の経歴の全ては語れないけど、ちょっとだけよぉ〜。
さあ、どうでしょうか。
僕、個人が、バンド活動をしてきた中で、ずっと感じていた事で参考になるのかどうか分かりませんが、他にも同じ様に感じてたって人はいるんでしょうか。
僕は、ギター上がりのベーシストの弾くベース、けっこう好きです。
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
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