維新の会「100議席」はあるか? | 辻雅之のだいたい日刊オピニオン
今年、衆議院の解散・総選挙はあるのか、あるとしたら、今度はどの政党が勝利するのか……その「答え」として急浮上しているのが、そう、「大阪維新の会」です。橋下徹大阪市長率いる「維新の会」は、来るべき国政選挙でどこまで勢力を伸ばしていけるのでしょうか。そして、その後の日本政治はどうなっていくのでしょうか。



小選挙区制が維新の会に味方する

維新の会には所属国会議員はおらず、立候補者そのものも決まっていないので、今のところ、大手新聞・通信社は維新の会の「支持率」というものを公表してはいません。

しかし参考になる記事がいくつかありました。2月20日付の共同通信配信の記事では、世論調査の結果「橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会の国政進出に61.2%が期待」を示している、としています。

産経新聞は2月13日付の記事で、FNN(フジニュースネットワーク)との合同世論調査の結果として、「橋下氏の国政進出に「期待する」が64.5%で、「期待しない」の27.5%を大きく上回った」と報じています。

これらがそのまま得票率に結びつくわけではないと思われますが、仮に結びついたとしたら、維新の会過半数、維新の会政権の発足、ということになりますね。

現在の衆議院の選挙制度は勢いのある政党に有利です。民主政権誕生となった前回の2009年総選挙では、民主党の小選挙区での得票は47.4%でしたが小選挙区の議席の7割以上を獲得しました。郵政選挙と言われた2005年総選挙でも、自民党の小選挙区での得票は47.8%ですが、やはり7割の議席を獲得しています。

ほんのわずかな差が当選・落選を決めるのが小選挙区制。維新の会の持つ「勢い」が固定支持層を持つ民主・自民を圧倒すれば、「100議席以上」というのはむしろ遠慮がちな予想ということも言えなくはないでしょう。

大阪府議選の結果から見えてくること

維新の会は、昨年4月の統一地方選挙で初めて大阪市議会・大阪府議会の議席を獲得し、橋下徹氏とともに注目されてきました。

このとき、大阪府議会では維新の会は単独で過半数の議席を獲得(109議席中57議席)しましたが、大阪市議会の方では、第一党にはなったものの、86議席中33議席のみの獲得にとどまり、過半数確保はできませんでした。

しかし、市議会選挙は他の市町村同様、1選挙区から2~6人が当選する「大選挙区制」。維新の会以外の政党も当選しやすくなっていますし、維新の会の候補が複数立候補した選挙区では票が割れて苦しい選挙戦を余儀なくされた候補も見受けられました。

その点、府議会選挙は62選挙区のうち33選挙区が一人しか当選できない「小選挙区」。この33選挙区で維新の会は実に28選挙区で勝利しています(うち無投票当選が2)。また、33選挙区中、維新の会候補が落選した選挙区はわずかに3つのみです。

衆議院は議員定数480のうち300名を小選挙区で選挙します。今の勢いのままだと、大阪を中心とした近畿はもとより、他の地域でも多くの議席を獲得してしまいそうです。そういった意味からも、「100議席以上」でも慎重な予想という言い方をすることができるでしょう。

ちなみに、大阪府議会も大阪市議会も、「第2党」は公明党となっています。民主・自民の勢力が縮小する一方の中で、強固な組織票の力を改めて見せつけた形となっています。2選挙区では公明党の得票が維新の会の得票を上回っていました。

自民党は62選挙区中5選挙区のみで、得票数で維新の会の選挙区を上回っています。各メディアによる出口調査から、自民支持者の多くが維新の会候補に投票したということが指摘されています。

もっと深刻な民主の場合、維新の会の得票数を上回って当選した選挙区は1つしかなく、そのうえ、その選挙区での維新の会候補との差はわずかに642票でした。

維新の会躍進後の政局は?

とはいえ、衆議院選挙は小選挙区だけでなく議員手数は少ないですが比例代表制もあり、傾向としてこちらでは小選挙区ほど得票率も議席率も偏らないような選挙結果が出るようになっています。

また、中国・四国・九州地区は前回総選挙でも自民党が比較的強かったことなども考えると、維新の会が勢いだけで衆議院でも過半数、というわけにはいかない気もします。とはいえそれでも、自民あるいは民主と同じくらいの議席を持つ、という可能性は十分にあります。480議席中400議席を維新・民主・自民で分け合うと考えても維新100議席以上の可能性は現実的です。

そしてそうなってしまうと、来るべき衆議院総選挙ではどの政党も過半数をとれず、連立政権ができることが予想されます。それは、今までのような「民主(自民)中心の~」というものではなく、ドイツやイタリアなどのように、大きな力を持つ政党どうしが集まって組織されることになるでしょう。

それは、1つの政党でも連立政権から離脱すれば、首相だけでなく、連立の枠組み自体が大きく入れ替わるような政治体制です。

では、「維新の会中心の連立政権」はできるのでしょうか。これは、橋下徹氏が国会議員になるかならないかでかなり変わってくる話かもしれません(国会議員にならなければ憲法の規定で首相にはなれない)。民主・自民それぞれが維新の会を取り込もうとするのか、はたまたあっと驚く「大連立」となるのか、これもわかりません。

ただ、現状で維新の会と最も親密な政党が「みんなの党」であることは確かなことです。

みんなの党の代表・渡辺喜美氏に対しては、民主・自民ともに感情的なといえるほどに拒否反応が強いことがいわれています。維新の会にもれなく渡辺喜美氏がついてくる、ということになると、話はややこしくなりそうです。

そして、来年夏には何もなくても参議院通常選挙が実施されます。せっかく生まれた新政権がここでまた大きくダメージを受けてしまうようなら、日本政治の混乱はさらに続いてしまうでしょう。