無残に腕をもがれた梅の木を見て優の胸中に去来した思いは、ある種の虚しさだった。別にその姿に何かの象徴を見出した訳でもないが、あるべき姿を無理解によりむりやり奪われたような郷愁を感じた。いずれ切られるだろうなとは思いつつ、優は両手を広げたこの梅の木を気に入っていたのだった。
優は桜が好きだ。儚げで危ういその色が、わずか数日で散りゆく桜の花の運命を象徴しているようで、優の極めて大衆的な美意識に合っていた。またそれとは別に、美醜を抜きにしても優は桜の木の持つ包み込むような寛容さが好きだった。物心ついた頃から、そういった桜の懐の深さは感じていた気がする。
そんな優であったから、この梅の木も好きになった。梅の持つ固有の冷たさもありながら、どこか暖かさも兼ね備える雰囲気に惹かれていた。
早く散ってしまったことは残念ではあるが、それも美の要件であるので構わなかった。しかし、腕をもがれかつての威容を失った梅はもはや見るに堪えなかった。
「また育てよ」
優はそう短く言うと鞄から栞にしていた桜の押し花を取り出して、見る陰もなく短くなった梅の枝に結んでやった。
「なかなか似合うじゃない」
一人笑うと、優はゆったりと立ち去るのだ
優は桜が好きだ。儚げで危ういその色が、わずか数日で散りゆく桜の花の運命を象徴しているようで、優の極めて大衆的な美意識に合っていた。またそれとは別に、美醜を抜きにしても優は桜の木の持つ包み込むような寛容さが好きだった。物心ついた頃から、そういった桜の懐の深さは感じていた気がする。
そんな優であったから、この梅の木も好きになった。梅の持つ固有の冷たさもありながら、どこか暖かさも兼ね備える雰囲気に惹かれていた。
早く散ってしまったことは残念ではあるが、それも美の要件であるので構わなかった。しかし、腕をもがれかつての威容を失った梅はもはや見るに堪えなかった。
「また育てよ」
優はそう短く言うと鞄から栞にしていた桜の押し花を取り出して、見る陰もなく短くなった梅の枝に結んでやった。
「なかなか似合うじゃない」
一人笑うと、優はゆったりと立ち去るのだ