映画では人間の心理は会話やナレーション、独白などの言葉に加えて、顔の表情や動作、行動で表すことができます。騎士道物語がわれわれ日本人にも興味深いのは「髷物(まげもの)」のちゃんばらが面白いのはもちろんとして、主に対して臣従を誓う家臣たちの心理がよくわかるからだと思います。
アーサー王伝説でも若いアーサーがどのように王権を確立し諸侯の信頼と臣従を獲得しえたかが語られます。ひとつはエクスカリバーという聖なる剣によって。さらにメルランという魔術師に助けられながらではですが、アーサー自身が王に相応しい英知と深慮、部下と民衆への仁愛の持ち主だったことが強調されます。
出生と同時にアーサーは約束によりメルランの手に渡り、メルランは養父としてエクトールにアーサーを預けます。エクトールには実の息子のケイが居ます。アーサーは出生の秘密を知らぬまま成長します。
映画では村祭りに馬上試合をするため諸侯が集まり、エクトールとケイも試合に出場しにやってきます。アーサーは単にふたりのお付き、「お馬番」でしかありません。ところが、ケイの出場寸前に剣が盗まれてしまいます。早く探して来いと養父に言われアーサーはケイの剣を探して走りまわりますが盗人はどこかへ逃げ隠れて見つかりません。
その時、アーサーは一本の立派な剣が岩に突き立っているのを見つけます。手をかけてみたところなんなく抜けてしまうのでした。アーサーを探しに来たケイは父親に、自分が抜いたと嘘をつきますが、エクトールは事情を察し、もういちど剣を岩に戻してやってみろと命じます。
その頃になるとエクスカリバーを抜いた奴がいると噂がひろまり、大勢が岩の周りに集まってきます 。あんな若造が抜いたんなら俺だってと力に自信のある者が次々に試しますが誰も抜けません。アーサーがふたたび試みるとなんなく抜けてしまいます。「王様の誕生だ!!」人々は叫び交わします。
エクスカリバーには「この剣を抜くものが真の王位継承者」と明記されています。エクトールはアーサーに「おまえはイングランドの王ペンドラゴンとイグレーヌのあいだに生れた子だ」と出生の秘密を明かします。
(つづく)