エロスとアガペー アーサー王伝説その⑮ | 雷神トールのブログ

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トリウム発電について考える

アーサー王が異父姉のモルガンと同褥するのはモルガン(もしくはモーブ)がアーサーに懸けた催眠術によるのですが、同じ伝説中のエピソード、円卓の騎士の一人トリスタンがイゾルデと恋に陥るのは媚薬を飲んだためでした。

 

 

 

 

 

詩人のドニ・ド・ルージュモンが「愛」にはエロスとアガペーの二種類があると書いたことは先にふれましたが、騎士道恋愛は極めて人格的愛、プラトニックな恋愛関係を示すことが多いです。しかし、伝説の中の恋、なかでもトリスタンとイゾルデの恋は媚薬のせいだとして甚だ唯物的な解釈を示しています。

近年英国の心理学者たちが、恋愛感情をもつに至った男性数十人と、その対象となった女性を調査した結果、いずれも女性から発せられたエストラゲン(女性ホルモン)を男性が吸収し、それが脳下垂体まで昇り恋愛感情を喚起したという研究発表をしました。これはテレビで放映されたこともあり、かなり一般的なやはり唯物的な解釈の例といえます。

ともあれ、媚薬とか催淫剤とかは昔から存在したようだし、現代では、若者がデ
スコテックで初対面の相手に催淫剤入りドリンクを飲まされ、そのままベッドインという話など良く聞くし、精神分析医に催眠術を掛けられ淫行に及ばされた女性数人が裁判に訴え出た例さえあります。

現代ではランスロのようにアガペーの対象として女性に命を捧げ忠義を尽くす男性を見出すのは至難の技に違いありませんが、すべての女性の深層にはランスロ希求が眠っていることもまた否めないのではないでしょうか。

 

(エロスとアガペーについてはブログ友達の牛山馬男さんが造詣が深く、めのおにもドニ・ド・ルージュモンの「愛について」を読めと奨めてくださったのですが、正直めのおはこの本を拾い読みしかしていなくて通読したいとは思うものの、ただいま、引っ越し準備中で、段ボール箱に入れてあり、どの箱だったか見分けがつかず、読むことが出来ません。いずれ落ち着いたら、再度このテーマに取り組みたいと思います。)

 

 

アーサーは、臣従する騎士たちの協力を得て団結して外敵を追い払い国土に平和が齎された時、 自らの発案で「円卓の騎士団」を作りました。円卓は上座下座が無く全員が平等の位置につき国事を審議します。アーサーの家臣を重んじそれぞれが対等で議論を尽くして欲しいという意思の表れでした。

 騎士たちが丸く座った「円卓」が実在します。英国のウインチェスター城の大広間の壁に掛けられています。直径5.5m の大きなテーブルで、樫材で作られ13世紀(1250〜1280年の間)に作られたと鑑定されています。次回はこの実在の円卓について書きますのでお楽しみを。

 

  (つづく)